絵の描けない字書きが同人誌の表紙でギャンブルしてみた②メリット・デメリット

 こちらの記事の続きです。


 どんなに優れたものでも、必ずメリットとデメリットはあります。
 そして、1年間使ってみた結果、このわくわくドキドキデザインセットはそのメリットとデメリットがかなり極端なものに感じました。

 一年間わくわくドキドキデザインセットを使用した私が考えるメリット、デメリットは次の通りです。

メリット

①表紙を考えなくてよい
 とにもかくにもまずはこれ。もうこれだけで選ぶ価値がある。
 なんなら周りで表紙がなくて本が出せないと悩んでいる人が居たら是非教えてあげてください。それだけで増える本がある。
 表紙のハードルは字書きにとって思っている以上に高いです。
 同人誌表紙メーカーさんなどを使うこともありますが、どうせ初めての同人誌なら、思い切って特別な一冊にするのはありだと思います。
(余談ですが、私は表紙メーカーさんの文字入れにすら大苦戦するタイプの字書きです。なんか……なんか私がやるとダサい!文字の大きさが悪いのか?タイトルの文字数が悪い?字体が決まらない!をいまでも一日がかりで頭を抱えています。あれだけお膳立てされた状況からダサく出来るセンスはいっそ才能じゃないかと思います)
 
②自分では挑戦しない装丁になる
 本を出したことがない=加工と言われても何もわからない。
 そんな悩みはこのセットには不要です。なぜなら装丁もすべてプロにお任せできるから。
 せっかくの特殊紙が加工をかけたら台無しになってしまった……なんてことは起こりません。名前だけで気後れしていたあの加工も、それどころか存在すら知らなかった特別な遊び紙が挟まれる可能性すらあります。
 私はおそらくこのセットを使わなければ一生角丸加工に手を出す勇気はなかったでしょう。
 プリントオンさんには装丁だけお任せセットもあるようなので、スタンダードな本に飽きたという方にもお勧めです!

③人に表紙を作って貰う体験が出来る
 地味に私が嬉しかったのがこれです。
 テーマカラーやイメージ小物などを伝えて作って貰うにせよ、自分の作品に対してイメージイラストが届くのはやっぱり嬉しいです。
 担当のデザイナーさんにもよると思うので確実ではありませんが、おそらく本文にすべて目を通してから作ってくれているのでは? と思える仕上がりで表紙をいただけることもありました。
 この世で最初の読者(推定)から表紙を贈られる体験をしてみませんか?


④入稿が楽 
 これも結構効いてくると思います。
 作った提出原稿をドラッグアンドドロップでポチッと入稿できてしまう簡単さ。ファイル名にページ番号を振っておけば複数ファイルに分けることも可能で、奥付や目次を別ページで作ったものを一緒に送信することも可能です。結構完成原稿を一本化して入稿しなければならない印刷所さんも多いのでかなり優しい仕様だと思います。
 そもそも、小口染や枠縁をつけない場合、本文がモノクロなら、カラー(RGBやCMYK等)を気にする必要もありませんし、モアレや裁ち切りなどの専門用語を覚える必要もほぼありません。
 Wordで作成した原稿をPDFに変換するだけで提出原稿にできる。
 このセットなら表紙のことを考えなくて良いので通常の自分で表紙を作成して入稿する場合に比べるとかなり楽だな、と感じています。

⑤できあがるまで完成形がわからない
 
これは賛否あると思うのですが、個人的にはメリットに入れたいです。  
 リテイクが効かない一発勝負な所も一世一代の大博打という感じでとにかく楽しい。届いた箱を開ける瞬間までドキドキわくわくしながら待つ時間を楽しめる人にはお勧めです。
 特殊加工が使われている場合(使われない可能性もあります)、かなり筒底に対して割安になる場合もありますので、そのあたりも楽しみどころかなと思います。
 一応大まかなイメージは入稿の際に伝えることが出来るので、まったくイメージと違う表紙になって返ってくると言うことはありませんのでご安心ください。


デメリット

①高額
 いきなりお金の話になりますが、表紙を依頼する分通常の印刷のみのコースよりは金額が高めに設定されています。
 特に少部数のみを印刷する場合はかなり単価が上がります。早割やフェアを使わずにA5の50Pの本を10冊作ろうとした場合、令和5年12月5日現在で22,200円の見積もりとなりました。一冊あたり2,220円です。部数で金額は変動しますが、初めての同人誌で頒布できるか未知数という方には手を出しづらいかもしれません。
 そんなときは、早割制度の活用をお勧めします。
 プリントオンさんは早割制度(フェア)を採用していて、早く原稿を提出することで最大25%の割引が受けられます。同様に早く入稿することで受けられるオプションにはポスター作成や、納品本+5部など、魅力的な特典がたくさんありますので是非活用したいところです。
 しかし、ここでデメリット②の納期の話が出てきます

②納期が早い
 
本文ができあがって入稿してから表紙の作成が始まりますので、当然その分納期は早くなります。具体的には9営業日(土日祝除く)前が締め切りとの案内がありますので、約半月ほどかかります。
 デメリット①で説明した早割を最大割引で受けようと思うと、さらにそこから10営業日が加算されますので、ざっくりイベント1ヶ月前が締め切りとなります。
 突発本などの表紙を作成することは出来ませんのでご注意ください。

③部数の調整が難しい
 こちらのわくわくドキドキデザインセットですが、最低部数が10冊となっています。たとえば自分用に1冊記念に作ってみたいという場合にはかなり不向きです。(一応作成可能のようですが、値段は10冊の時と同じになるそうなので極端に部数を絞る意味はないかと思います)
 逆に上限も設定されていて、注文時に選択できる部数は300冊が限度です。※上限を超える場合要相談
 単位が10冊単位(200冊以上は50冊単位)ということもあり、部数調整はあまり細やかではないなと感じます。

④再刷しにくい
 作成された表紙データが貰えるわけではないので、再刷する場合は印刷所を変えることは出来ず、プリントオンさんに依頼する必要があります。
 また、同じ本にしたい場合、最初に刷った時期を伝えれば表紙はプリントオンさんが残してくれているものを使用してくれますが、装丁は自分で前回と同じものを選ぶ必要があります。家に届いたときにその本に使用した装丁を一緒に知らせてくれますが、自分一人でやるのはかなり難易度が高かったです。
 特殊加工が使われている場合、金額的な問題や締め切りの変動がある場合もありますので、まったく同じ本にするのが難しい場合もあると思います。


所感

 ざっくりとメリット、デメリットを述べましたが、私にとってこのセットを使う一番の理由は【楽しいから】です。
 自分の書いた本が、どんな形になって戻ってくるか楽しみにしながら送り出し、手元に届く瞬間。自分にとって特別な本に変わるまでを楽しむセットだと思っています。
 次の記事では表紙イメージを伝える仕様書の記載方法や、私が実際に作ってきた仕様書と完成した表紙を公開していますのでもしよければそちらもご覧ください。


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