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⑥それでも生きていく

 母との確執は解消されたものの、それでもまだぎこちないものだった。テレビでは最近のロボット研究の進化などが報道されていた。居間のテーブルの前に座っていると、家事が一段落した母が後ろのソファに座った。
「最近のロボットはすごいね。」
母は感心したように言った。テレビには犬型の愛らしいロボットが映っていた。
「これならアパートでも飼えるね。」
母は「そうだね。」と笑って返した。
 しばらくテレビの話題で二人の会話に花を咲かせたが、突然、母の表情が真剣なものになった。
「菖蒲、自分の出生について知る覚悟はある?」
私はあまりも急な発言に戸惑った。だが、母の真剣な表情を見て、覚悟を決めた。
「覚悟はいつでもあるよ。知りたいって言い出したのは私だしね。」
 それから私がこの家に来た日のこと、私と話した日に父から私が何者なのか全部聞いたことを話してくれた。私は自分が人造人間で、親が居ないという事実をうまく咀嚼できなかった。ひどく困惑し頭が真っ白になった私はただ茫然とその場に居尽くした。私の様子を見かねた母が口を開いた。
「血は繋がっていなくても、私もお父さんも菖蒲の親だってことには変わりないよ。もしルーツが知りたいなら、お父さんの先輩と、その子供について探偵に調査依頼すればわかるはずよ。だって、DNAはその子から遺伝しているはずだから。」
私はこんな存在でもちゃんと親としていてくれる母と父に感謝して涙が出てきた。しかし、やはり人間とは自分のルーツが知りたくなるものなのだと実感した。
「お母さん、私やっぱりルーツが知りたい。」
私は溢れる涙を堪え、決心して告げた。

#小説
#写真
#写真は本編とは無関係です
#自分が撮った写真を誰かに見て貰いたかっただけ
#花の命

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