自治体発行「多様な性・LGBT対応 職員向けハンドブック」調査報告②


今回は災害時避難所等の運営・対応について見ていく。
前回記事はこちら

※長くなったので、予定していた「アウティング」の項は次回にまわします。

★災害時避難所で性別詐称を認める?

避難所では「避難者名簿」を書くが、そこでの性別記述に「配慮」を求める記述が
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見られる。

・避難者名簿の性別欄を男女で分けず自由記載欄にする。(福島県)

・避難者名簿の性別欄への記載を強制しない等(愛媛県)

しかし避難者の男女人数は、
支援物資や、プライバシースペースの確保など、必要数や内容や範囲を把握し采配するために、とても重要な情報
である。
また、男女割合および性別起因のデータは、今後の災害時に、より安全で快適な避難環境を作ることに活用される。

危険な避難所を避け、半壊した家にとどまって亡くなる女性や子供も居るという。
性別という重要な情報を自由記述や廃止にしてしまうことは、大げさでなく人の生死に関わるのだ。


★性別詐称が認められた場合、性別区分の場は……?

ほとんどの自治体が、避難所でのトイレ・風呂・更衣室において、「異性として取り扱ってほしい自認者」への配慮を求めている。

避難所のトイレ(だれでもトイレの設置等)、更衣室、共同浴場等の使用における配慮(個別利用できる時間設定、性別に関係なく使えるスペース設置等)
(大阪府豊中市)

といったように、自認者に対して別途のスペースや時間を設ける対応を推奨している自治体が多い。
しかし、そもそも名簿で性別詐称や無記載が公認されており、「生理用品」まで配布を受けるほどの待遇(後述)で、性別区分の場だけ侵入不可とする、など可能だろうか?
大分県のように「※原則として、性別はこころの性を基準に考える」なんて県なら避難所もこの原則に従って取り決めを推奨するだろうし。

結局、本人が「誰でもトイレなんて嫌だ、私は女だ!場・時間ともに女と一緒で当然だ!分けるのはアウティングで、重大な人権侵害だぞ!」と言えば「尊重」するべし、という結論があるのだ。
前回記事の「公共施設運用」の件から言ってもあきらかである。
「苦情を出された方に理解を求めましょう」など、日常の平生時であっても男が女子トイレに入ることを当然の権利として是認しているのだから、
災害時など更に「男が居たくらいで騒ぐな、わがままだ」
「おまえが怖いってw気にすんなってwしばくぞ」と嘲笑されて終わるだろう。

避難所ではトイレ、着替え、授乳スペースなど、プライバシーを確保しづらいことが女性や子供を性被害にさらすと問題視されているとおり、
見ず知らずの極限状態にある他人と寝食をともにすることは女性子供にとって「災害」同様に生命の危機であることを、これらの自治体は軽視・無視している。
弱者迫害思想だ。

★性自認に応じて生理用品を配布する、とは

「性自認に応じた必要物資の配布」を勧奨している自治体が多かった。
なかでも全く意味がわからないのが「性自認に応じて生理用品を配布する」という内容。

性自認に応じて生理用品を配布する自治体は
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・性自認に応じた必要物資の配付(生理用品、衣類、下着、髭剃り、化粧品等)
(愛媛県)

・性自認に応じた必要物資の配布(生理用品、衣類、下着、髭剃り、化粧品等)
(岩手県)

・性自認または表現する性別に応じた救援物資の配付(衣類、化粧品、生理用品等)
(大阪府豊中市)

性自認や、性表現……たとえばスカートを穿くことで、男性に生理が来るということなのか?
「性自認にかかわらず”生物学的性別に応じて”生理用品を配布する」ならわかるが。女性が男性扱いを求めたりズボンを穿いたところで、生理は来るのだから。

避難所での生理用品不足、入手困難は深刻な問題である。
運営が男性だと
・必要数を理解していない(1日に1個で足りる、2日くらいで終わると思っている、など)
・不要だと思っている(「こんなときに生理するな」など……)
・必要だとうったえても怒鳴られる
・もらいに行くのに抵抗がある
などの問題が起きている。
「性自認に応じた生理用品」というマニュアルに疑問を持たない自治体担当者が居ることからしても、生理を理解したつもりの バカ 権力男性が牛耳っているのが透けて見える。

そんな環境で更に、限られた備蓄ややっと届いた生理用品を、
女性扱いしてほしい男性と分け合え……ということなのだろうか?
なぜ?
まさか、当該人物だけが生理用品を配られていなかったら、「女性ではないことをバラすアウティング」になりうるから……ということなのだろうか。
そのために女性の必須の衛生用品を分け与えると???

たとえば、男性器整形手術をして腸液等が垂れ流しになるのでパッドをあてる必要がある、といったことは考えられるかもしれないが、それだと
「性自認に応じて」には当たらない。
また、これは「痔の男性にもパッドが必要」と同じジャンルであり、決して「女性の月経のための生理用品」と同じではない。
必要なら、きちんと、別途、男性の中での必要な衛生用品としてカウントすべきだ。

「心の性別」思想のすべてに言えるが、本当になにか問題があるならばこそ独立した属性としてカウントし、真っ向から対峙すべきなのに
「男のままでは問題があるから、女ということにして女に受入れさせる」で解決したフリをするのは自他をさらなる問題に晒すだけだ。
真っ向からの対峙によって、「非常時に衛生を保てないほどの手術を、健康な臓器を摘出してまで行うこと」の是非、などそもそもの原点も見えてくる。
まあ、それが不都合だということなんだろうね。

(同じように「性自認に応じた髭剃り」もおかしいが……
不足すれば感染症を引き起こし命の危険もある生理用品は特に切迫した問題である)


★ホルモン投与問題

そのほか、「ホルモン投与できず心身に重大な不調をきたす」に配慮を求めている自治体が
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刑務所でも取りざたされるが、こういった観点からもさきほどの「パッド問題」のように
「本人が望んでいるので、心身の維持にかかわるホルモンを分泌する、健康な臓器を摘出する」是非から問われるべき段階だと思う。
他の疾患だとありえない処置なのだから。
本人が望めば、健康な腎臓を摘出して、人工透析が必要な状態をわざわざ作り出すだろうか?

このような手術によって
女性に必要な薬も生理用品のように分け合わなければならない危険性が出てくる。

また、災害時に限ったことではなく、薬の供給不足は社会情勢や製薬会社の不祥事などによっていつでも起こりうるし、ここ数年がまさにその渦中であることも念頭に置かれたい。
https://www.pref.tokushima.lg.jp/ippannokata/kenko/iryo/7210402

次回こそ、アウティングの項!

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