自治体発行「多様な性・LGBT対応 職員向けハンドブック」調査報告①

全国の都道府県、または市町村といった自治体には「性の多様性、LGBTに対応する職員向けハンドブック」(名前はそれぞれ異なる)といったものが公開されている。
自治体職員はこれに準じて公共施設・自治体施設・職場・災害時避難所・市民からの問い合わせ対応などを行なっていくガイドラインとなっている。

今回、ネット検索で見つけることのできたハンドブックをすべてダウンロードして、内容を分類してみた。
(めっちゃしんどかったので労ってください)
調査できた自治体数は都道府県および市をあわせて37件である。

以下に、特に重要であると思えるポイントを整理していく。

★性自認の定義

おおむねの定義が「自己の性別への認識」系である。

(この時点ですでによく意味がわからない。
自己の性別への認識って「自分はA型」といった知識でしかないため、事実とズレようがない。ので、あくまで「嫌だ」と拒否する止まりのはずなのだが、今はそれはさておき)

特筆すべきはこの2県だ。
●大分県

「自分が自分の性をどう思っているか」ということです。「自分は男性である」、「女性である」と感じる人や、「男性女性両方である」、「どちらでもない」と考える人もいます。医学的治療でこの自己認識を変えることはできません。
※原則として、性別はこの「こころの性」を基準に考えます

●愛媛県

人間が本来もつ多様性の一つ

性自認とは「自分自身が自分の性をどう捉えているか」ということを示す概念で、“性同一性”とも言います。“性同一性障害”という言葉が知られるようになってきましたが、生物学的な性(身体の性別)と自認する性が一致せず性別違和を感じる人がいます。その人たちが、戸籍上や身体の性別と異なる服装や髪型、化粧や仕草等をした場合、その人自身としては自分らしくしているにも関わらず、周囲の人が違和感を感じ、それを態度に表わされることで、当事者は精神的な苦痛を感じています。
どのような性自認であってもその人を形作る大切な個性の一つであり、十分尊重されなければなりません。それを否定することは、その人の人格を否定することになります。

ガンギマリと言いたくなる内容である。

大分県など本当に驚く。「※原則として、性別はこころの性を基準に考える」とまでのたまっている。
性自認の定義ではなくて性別を定義してしまっているのだ。
職員向けとは言え県が公的に出しているわけだから、性別に関するあらゆる場面に適用されると考えていい。
「男性が女子トイレや女湯に突入したり、女子大に入れろと主張する」ことを後押しはすれど、抑制する効果は全くない。
性別の定義なので、スポーツも就学就労枠も医療データや犯罪データ、すべて「こころの性を基準に考えるのが原則」とする、ということになるだろう。

愛媛県は、性自認は個性であって、否定することは「人格の否定」とまで言っている。否定、とは何を指すのか?「男性なので女子トイレに入らないで」は性自認の否定である、差別である、という主張がありすでに侵入もされているなかで、これもまた彼らを後押しはすれど抑止する方向にはたらくことはあり得ない。
※後日書くアウティングの項にしてもそうだが、ほぼすべての自治体がこうして「否定することは非常に重大な侵害で相手の命すらおびやかし……」といった言葉を駆使し、たんに他人に対して親切善良であろうとする前提をもつごく普通の市民たちに対して、一方的でおそろしい脅しをかけてきがちなことにも着目してほしい。

★同性愛の定義

同性愛の定義を、性自認にもとづくと定めている自治体は、
7件/37
愛知県、高知県高知市、佐賀県、埼玉県、大分県、東京都墨田区、福岡県

レズビアンとは?の説明が下記

・性自認が女性で、女性を好きになる人(埼玉県)

・こころの性が女性で、好きになる性も女性(高知県高知市)

といったように、同性愛の定義を、性自認にもとづいて定めると明言している自治体は7件もあった。

これは同性愛者のアイデンティティ抹消、定義の解体という同性愛差別であり、また特にレズビアンはイベントや個人間で男性から「私を恋愛対象から弾くのは差別だ」とされた場合に、男女の力関係から言って非常に不利で危険である。
実際すでに、レズビアンイベントに入店拒否された男性が差別だと騒ぎ、主催が謝罪に追い込まれ、事実上もはや女性だけで集まることができなくなった、という件も国内で起きている。
LGBTのアルファベットで先頭に来るのがレズビアンであるが、実際は人数も少なく、そしてもちろん女性たちであるので腕力でも経済力でも社会的地位でも、男性たちに敵わないため、とても声を挙げづらい立場だと聞く。
「性的マイノリティ」とひとことで言ってももちろんその中にも「男女(自認にあらず)」があり、よって格差・勾配があるなかで
こうして定義を壊され、危険にさらす7つの自治体はいったいこのハンドブックをなんのために活用するつもりでいるのだろうか。答えは言わずもがなだ。

そしてこの7件にかぎらず、「女性の同性愛者」とだけ書かれている他の自治体も「もはや、その”女性”って何なの?」ということになる。
”性には4つの性があって「からだの性」「性自認」「性表現」「性的指向」”云々、と表記された上での
「女性の同性愛者」は「からだの性」にかぎらず、「性自認」「性表現」などが含まれていると見ていいと思う。


★トイレの利用は性自認尊重が大前提

公共施設のトイレ利用について見ていく。

特に下記2件の自治体が突出している。

岩手県

当事者が性自認に合ったトイレを利用することで、他の利用者から苦情が出る場合もあり得ます。様々な方が利用する施設であることを説明し、苦情を出された方に理解を求めましょう

愛媛県

利用者が性自認に合った男性用又は女性用トイレを利用することで、他の利用者から苦情などがあった場合、様々な方が利用するみんなの施設であることを説明し、苦情を出された方に理解を求めましょう

ほぼ同じ文章であるため、同じ団体が介入して作らせたハンドブックなのではないかと推察する。

もはや女性女児に対して攻撃性を表出しているとすら感じられるひどい内容だ。
要するに「女子トイレにおじさんが居た!たすけてください!警察を呼んでください!」
と女性が泣きながら訴えようと、

「そういった”苦情”は受け付けません。あなただけの価値観で利用する施設じゃなく、みんなの施設なんだから理解しなさいね」
と言いましょう、と職員へ求めているのである。

私はもう岩手県と愛媛県には二度と行きたくないが、今もこれからもこの2県に住んだり通勤通学しないとならない人々、特に女の子や女性が居ることを思うと暗澹とする。
そして、この流れは決して対岸の火事ではない。

性自認が女性であれば、女性トイレを利用することは自然な流れ(兵庫県西宮市)

と前提をおいてみたり、
またほとんどの自治体が「本人の意思を尊重」を前提としたうえで、他の利用者との調整もしていこう、という旨である。
また、「多目的トイレを強要するのは不信や不快を与えたりアウティングにもなるから避けましょう」の旨もほとんどの自治体で見られた。
この2点からいって、
結局本人が強く「いや、私は心が女性だから女子トイレを使うんだ!」と貫けば、自治体側がそれを止める意思は希薄であると解釈される。

・少なくとも、性別の取扱いを変更した人については、変更後の性別での施設利用が認められなくてはなりません(石川県金沢市)

・性別の取扱いを変更した人については、変更後の性別での施設利用が基本となります(大分県)

また、この2県は、いわゆる特例法によって戸籍性別記載を変更した者についてわざわざ明言している。
この2県の「性別区分施設(トイレに限らない)」は生物学的男女を混在させる、とこれで確定したことになる。
つまり、具体的に言うと
「女湯はマシュマロぱいぱい、桃々天国でした~」
「女も、騒いで恥かきたくないからほぼほぼ通報なんてしない。気軽に女装して女子トイレに挑んで」
「関空で 金髪幼女を 視姦する」
といった言動で有名な面々も含めて、公的に女性専用の場へ招く!という明示・啓発を、大分県と石川県金沢市は行っている、ということである。

こちらyoutuberゆなさんの問い合わせ先の銭湯によると、


生殖器手術済で豊胸してても男とわかる人物が女湯に入ってきて、女性に恐怖を与えて大騒ぎになったことがある、とのことだったが
そんな場合でも当該人物が個性記載を変更していたら「少なくとも、性別の取扱いを変更した人については、変更後の性別での施設利用が認められなくてはなりません(石川県金沢市)」ので、女性たちにできることはその場を立ち去ることだけだ。
そして、二度と公共の入浴施設には行けないし、外でやむを得ずトイレを使うときも怯えと緊張を強いられなければならない、ということになる。
まあ、そもそも特例法が、そうした女性に対して「もう一生おうちでじっとしといてください♪♪♪」と強いる法律なのであるが、
石川県金沢市と大分県はそんな法律に対する賛同を、つよく公的に明示した、ということになるだろう。

次回は災害時対応と、アウティングの件などをまとめる予定です。

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