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TODAYS MUSIC : 中村佳穂

歌声で魂を揺さぶってくる人がいる。歌に救われるどころかぶっ刺してくる。

数々のイベント、フェスの出演を経て、その歌声、音楽そのものの様な彼女の存在がウワサを呼ぶ京都出身のミュージシャン、中村佳穂。
ソロ、デュオ、バンド、様々な形態で、その音楽性を拡張させ続けている。
ーオフィシャルサイトより https://nakamurakaho.com/me/

2019年のFujiRockにおける中村佳穂をみた人が、ファンもそうでない人も、口を揃える誇大過ぎるくらいの絶賛を聴いていて、ほんまかいなと思っていた。「泣ける」という言葉の比喩の薄っぺらさをなんとなく感じていた。あんまり中村佳穂、知らなくて。でも…自粛期間にこの歌を聴いて、あ、これちゃうな、比喩ちゃうな、と思いました。すんません。

明るくて優しい声で「みんなおんなじ辛いのよ」と歌う『忘れっぽい天使』、「苦しいくらいがちょうどいい」と秘密を前向きに諭す『きっとね!』、「知らない方が近いんだよ」と絶妙な距離感を歌う『AINOU』。

もっと陽気に救いの曲を歌ってくれる音楽は沢山あるのに、中村佳穂の音楽は、ありのままの言葉で傷を鮮明に映す。それでも、どうしようもないながらに寄り添ってくれるような暖かな感触がある。辛い時に、解決策を話すのではなくて、ただそばにいることを選んでくれる最高の友達かよ。


この大勢が合唱している動画をみていると、ぐっとお腹の底が締め付けられた。「みんなで歌う」ことの力強さを感じる。循環するメロディが、螺旋階段のように上にぐーっと気持ちを引き上げてくれる。

彼女について、もうちょっとだけ詳しく知りたくて、この記事をのぞいた。

ただ聴いているだけでスッと馴染んでくる音楽。しっとり洗練されているのに魂が躍動するようなポップなメロディ。曖昧な言葉を織り交ぜながらも、合間に鋭い言葉を残す歌詞。それは、想像より緻密に作られていた。

音楽の力、なんて軽々しく言うと坂本龍一に怒られてしまうけど彼女の音楽には明らかに人の心を揺さぶる力が潜んでる…。言葉にするのって簡単だけど、レトリックを気にしてしまったり、うまく伝えようとして頑張って削いでしまったり、難しい。そのもどかしさを、メロディに合わせてうまく消化させている。修辞が素晴らしい…。歌を聴いているだけでも力強いのに、これみんなで歌ったらどうなっちゃうんだ。力をもらえると同時に、膝から崩れ落ちたくなるような衝撃。もはや仕事どころではない。

あーライブ行きたい。

<在宅BGMとしてのまとめ>
始めは仕事に手がつかなくなるくらい心を揺さぶられてたものの、慣れてきたら、ポップな音楽にご機嫌な感じで仕事も捗ってた。『AINOU』を聴いていたら、窓から入ってくる風の匂いとか、気づけば些細な自然にも敏感になってた。純度高めなアルバムでした。

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