洗濯機が入らない

先日、洗濯機を買い換えた。

ドラム式洗濯機を新たに導入するために、防水パネルを入れ替えたり、蛇口の位置を上にずらしたり、床の工事などをした。標準のもので、これならどんな洗濯機も入ると、施工工事の担当者、水道の担当者、家電量販店の担当者も、言っていた。もちろん、自分でもサイズを確認していて入るはずだった。

ところが、洗濯機が入らないと言われた。防水パネルの内寸がギリギリで微妙、蛇口もギリギリ。

施工したのは、身内だったので、連絡。洗濯機を入れる業者と話し合い、とりあえず入れてみて、もし少し調整が必要なら、施工の人が対応するからということで落ち着く。

入れてみた結果、本当にギリギリで入った。多少、蛇口の位置を変えたほうがいいかもしれないが、ギリギリOKとのこと。

それぞれ業者には、言い分がある。というよりも構造の問題がある。

洗濯機を入れる会社が、一番損をしやすい構造になっている。まず、家電量販店からの下請けで施工する場合、かなり安いらしい。次に、洗濯機を開封してしまうと、家電量販店への返品ができず、洗濯機の負担は下請け施工会社にくる。そして、洗濯機、特にドラム式洗濯機は、防水パネルの設計的には入るには入るがギリギリの寸法、水道の位置の問題などで、現場にいかないと本当に入るかどうかが微妙なところなのである。

販売、配送、工事と様々な分業が行われた弊害ともいえるかもしれない。現場は、一筋縄ではいかない。

業種によっては、こういうことをよくわかっていて、一貫して何かをやりますよみたいな人がいる場合もある。そして、なぜか彼らが一番儲かる。直接「もの」を扱うわけではなく、「サービス」を扱うためである。

皮肉なことだが、ITの特にwebやスマホアプリの新規開発して「サービス」を作りたがる。何か現状の不満を解決するスマートなサービスをみんなが求めていると錯覚しているためだろう。

ただ、このようなサービスをみると、いつも思うのが、現場の一番弱い立場の人を救うサービスを考え抜かれていないのだ。それは当たり前で、現状に、「サービス」をプラスしたら、それだけ、「サービス」を作った人たちにお金を流す分、お金が大きくかかる。

こういう事例は、自分の精通する業種で考えれば、ほとんど全員が思い当たると思う。少なくとも、自動車業界と旅行業界については、このような事例を知っている。

ここまで、「サービス」に対する批判をしてきたわけだが、だからといって、「構造を変化させて、抜本的な解決ができる」とも考えていない。やはり、どこかしらに負荷はかかると思う。今回、目に見えた負荷は「開封後の返品不可」のために設置業者がその負担を背負う可能性が非常に高い点にあると思う。試しに置いてみるということができないので、ユーザー側としても本当に置けないのか多少疑心暗鬼になる。これを解決するために、全体を見渡せる人を雇うのは論外だ。余計お金がかかる。ではどうするか。返品時の負担を分散するのが目に見えてわかりやすい。家電量販店も設置業者もユーザーも負担する。こうすれば、負担が分散する。設置業者も試しに設置しやすくなるし、ユーザーだって疑心暗鬼が消えるメリットがあるだろう。でも、本当にこんなことが実現するのだろうか。ユーザーも嫌がるし、家電量販店だって、こんな契約をOKにはしないだろう。会社を跨いだ、こういう全体を改善させるのは、ほとんど不可能に感じるだろう。たぶん、一生かかっても正攻法では厳しいと思う。

これは、非常に難しい話である。世の中のお金持ち企業は、付加価値を提供するとともに、負荷価値も提供しているのである。それに目をつぶったからこそ今の社会的に信頼のある会社になっているという点は、忘れてはならない。

余談だが、最後に、忘れてはならないのが、これは、ただ「冷蔵庫を入れる」までの話だということである。

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