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尊敬するテンプル・グランディンさんのお話

をさせてください。

いくつも本を書かれ邦訳出版されているのでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。彼女が書いた初期の本。1994年の出版。

『自閉症の本人がこんなふうに本を書けるものだろうか?』

当時はすごく感動したものの、半信半疑で。世の中の反応もそんな感じだったようにうっすらと記憶しています。

もう絶版になっているんですかね?

中古本が78円…?!

いまや畜産関連業界で彼女の実績は高く評価され、その努力の成果はマヤカシではないことが証明されているので、本の価格ももうちょっと上がってもよいと思いますが…出版と同時にささやかれたニセモノ説で値崩れしているんでしょうか?残念…そして、この本を今は手元に持っていないことも残念。

天才の評価は、時に遅れてやって来るのが世の常。そこも残念。

20数年前に彼女の本を読み、それっきり彼女のことは忘れていました。

で、3年前に再び彼女の才能と研究成果に出会うことになりました。

それは、パブロフをわが家の家族に迎えて犬について勉強を始めたことがきっかけでした。

3年前のその頃から今でも、私には、犬を学ぶためのメンターがいます。犬について学ぶなら、こんな本を読んだり、こんな方向性が良いですよと、正しい学びに導いてくれる人です。というのも、(ちょっと脱線しますが)実は犬に関する本や、特にインターネット上にある情報って、すご~~く古臭いものがまだまだあって。もう20年以上前に否定されているような、アルファ理論とか、権勢症候群とかいった間違った見方で犬を解説していたりします(この辺は、語り出すと長くなるので今夜はほどほどに…^^;;;)。間違った知識に立って、犬のしつけ方云々を書いていたりするので、当然そこも間違いだらけ…だったりします。間違った知識でそのとばっちりを受けるのは結局は犬たち。犬好きとしては由々しき事態に悲しくなるのですが、なかなかこの惨状から抜け出せない犬の世界です…。(ま、犬の世界だけに限ったことじゃないかもですが-ω-)。
っと…話を戻して、このメンターから紹介されたのが、奇しくも彼女の書いた本2冊でした。

彼女は、自身が自閉症であることによってほかの人とは違ったものの見方ができること、それが動物の知覚を理解することにとても役に立つことに気がついたのですね。そして、その能力を活かして畜産動物のQOLが高まるように、独自の観察眼で動物たちを誘導する方法やQOL向上の障壁になる原因を見つけ出し、それをスムーズに改善できる装置や設備を開発しました。

私が彼女を尊敬してやまないのは、彼女の特異的な能力を単に一人称で語るだけでなく、膨大な先行研究をレビューしてエビデンスをひとつひとつ明示しているところ。

自分の体験している世界を語るだけでも大変だけど、その裏をとるという作業はその何十倍、何百倍も地道な作業の積み上げだと思うんですね。その努力を惜しまずに、コツコツやりぬいていること。それもある意味彼女が持つとてつもないスーパーパワーなのかもしれないですが。

先日、いつも行く農業学校直売所の構内をパブロフと一緒に散歩していたら、遠くから屋外運動場に放されていた牛が4頭走って近づいてきました。

少し小ぶりな牛だったので冬の間に牛舎で生まれた子牛なのかもしれません。

牛とテルモ

柵があるので安心しているのか、4頭みんな興味深げにパブロフをじっと見つめていました(^^)。パブロフがこちら側を柵に沿って歩くと、牛たちも柵の向こう側でうしろからついて歩いてきてて…。

さすが、人がすぐそばでお世話をする乳牛だけあって、怖さよりも好奇心のほうがまさっているような動きでした。

テンプル・グランディンさんの「動物が幸せを感じるとき」の牛についての章の中で、肉牛は放牧されて人との距離は遠いのでわりと人が近づくと怖がる。でも、乳牛は毎日のように人の手によって搾乳されるために人を怖がることはあまりないと書かれていたのを思い出しました。

先日、馬を見たときも、今回、牛を見たときも、『そういえばテンプル・グランディンさん、こんなふうに言っていたな。』と思い出すことが多いのです。そして、うちに帰ってまた、それが書いてある章を読み直して『ああ、そうそう。』と確かめる。こんなことがとっても楽しいんですよね。

種の違う動物たちがどんなことを考えているのか?知りたいって思いませんか?動物たちの話していることがわかったらいいなって思いませんか?

ドリトル先生にはさして憧れはなかったんですけど、テンプルさんの本に出会ってからは、科学の力でそれを成し遂げられる日は近づいているかもと実感します。だから、彼女の本は何度でも何度でも読み直しています。

ただ、「動物感覚」は絶版で、古本で値段が5000円ほどに跳ね上がっていて(≧▽≦)。また、せっせとマイナス貯金ですヨ~。

とりあえず、今は読みたいときに図書館から借り出しています。でも、最寄図書館には蔵書してないんですよね~。予約を入れて、蔵書館から巡回便で廻してもらって到着連絡をもらったらとりに行く…という。それでも読めるだけマシ。表紙がまた美しいんですねえ、この本。

「動物感覚」は2006年、「動物が幸せを感じるとき」は2011年の邦訳出版なので、前者のときより後者のほうが彼女自身の研究が進化しています。

それに応じて内容もブラッシュアップされている。特に犬のトレーニング方法などについては、2006年のときは、まだ彼女自身が支配性理論の影響下にあった記載が見られます。が、2011年にはそれはエビデンスをもって否定されたことを明記していて、ものすごく勉強されているなというのと、研究成果に沿って過ちを訂正する学術的な真摯さに敬意を抱きます。

そういうところも、彼女を尊敬してやまない理由です。

有名になればなるほど、自分の過ちは隠したりごまかしたりしたくなるものですが、そこは謙虚で素敵。もちろん、科学は日進月歩なので、否定された理論がまた新たな研究結果によって再燃したり見直されたりすることもあり得るわけですけどね。ただ、現時点の最新の到達点は常にフォローしていきたい。そう思います。犬の世界がそうなってほしいと切望しています。

最後に、もし興味を持っていただけたら、彼女のTEDでのスピーチをご覧になってみてください。
ちょっと皮肉混じりのユーモアでフロアを沸かせる彼女…信念に忠実な彼女の勇姿に『私も信じる道を進もう』って静かに勇気が湧いてくるんです。


今日も読んでくださってありがとう。

好きなものや人のことは、つい長くなってしまいます。まだまだ語り足りないけど、今夜はこのへんで(^^)!

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