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きっかけを作り続けたアジカンの25周年

自分にとってアジカンは「きっかけ」のアーティストである。
自分が音楽好きになったきっかけは、今回のライブでゴッチが「俺たちを世界に連れてってくれた曲」と言って始まった『遥か彼方』が流れたアニメのNARUTOのオープニングだ。
初めてプロのバンドのライブに行ったのもアジカン。
その時の映像の切れ端は自分の頭にアーカイブされ時折思いだしてはその時の空気を思い出す。
初めてのフェスもアジカン主催のNANO-MUGEN FES.だった。
アジカンきっかけでストレイテナーもELLEGARDENも知った。
OasisやRadiohead知ったきっかけもアジカン。
アジカンきっかけで出来た友人もいる。

そんな自分のきっかけになったバンドの結成25周年のツアーの追加公演“More Than a Quarter-Century”に二日間参加した。
会場は彼らの拠点でもある横浜にあるパシフィコ横浜。
キャパは約5000。
それに加え今回はステージ上にも特別席が100席以上設けられていた。
この座席に座る方は白Tシャツ着用が求められていたようで、学生時代の合唱コンクールのように見えた。笑

少し話は逸れたが、アジカンの長い活動期間の中で何かをきっかけにアジカンを好きになった幅広い世代の方々がここに集まった人たちが5000人以上もいてライブが始まる前から気分はすごく良かった。

暗転してサーチライトのような照明が何かを探すようにステージを照らす中ゆっくり出てくるメンバー4人。
それぞれの楽器の音を確かめながら重なるバンドアンサンブル。
アジカンが影響を色濃く受けているoasisの『The Hindu Times』のイントロのようなメロディーが披露されそのまま『センスレス』に繋がった。
自分の頭の中には何度もDVDで見た彼らの初アリーナツアーのオープニングが再生されてしまう。
その時はステージ後ろの映像に全部カタカナで「キミガココニツク ハイタタメイキ ナニゲナイ ダレカノコキュウ」というフレーズがものすごく早いスピードで流れていく中『The Hindu Times』のイントロから『センスレス』が披露されていた。
今回は派手な演出はない。
演出に頼る必要もないくらいこの日のアジカン、そしてオーディエンスのバイブスは最高なことが1曲目から確信できた。
そこからライブ定番曲でもある『Re:Re:』が続き大盛り上がり。
そして『アフターダーク』という人気曲だがなかなかライブでやらない曲も挟み、『荒野を歩け』『ループ&ループ』『リライト』『ソラニン』『君という花』とフェスのようなセットリストで進んでいく。
ステージ後方にもお客さんがいるので『リライト』披露された際は2016年に再録された『ソルファ』のリライトのMVを彷彿させ見ていて面白かった。コロナ禍で誰も「消してリライトして」や『君という花』で「ラッセーラッセー」などと大声で叫ぶことは出来ないが音楽を各々楽しんでいて会場には充実感で溢れていた。

『君という花』のアウトロで披露される『大洋航路』の一節「向こう岸が見えない海でも / 言う 大声で言う / 引用"To be, or not to be" / 大丈夫(オールライト)」も毎度のことながら最高だなと思う。
フェスのような怒涛のセットリストを終え後藤(Vo/Gt)は「育った環境も違う、考え方も違う人達がアジカンの曲良いなと思ってここに集まっていることはすごい」というようなことを言っていたが、2日間とも幅広い年代の方々が集まっているように見え、交わることのない人たちが共通したものをただただ純粋に楽しんでいるこの空間って当たり前のものではなく特別なものだと改めて感じさせてくれた。
フェスのセットリストのような前半が終わり、披露されたのが喜多さん(Gt/Vo)がボーカルを務める『シーサイドスリーピング』が披露された(おそらくライブ初披露)。
喜多さんの歌声が年々出しづらそうになってきているのは少し気になるがご愛嬌ということで。笑

ここからゲストが続々出てくる。
まずはアルバム『マジックディスク』のツアーにサポートメンバーとして参加したフジファブリックの金澤ダイスケを迎え、こちらもレア曲『夕暮れの紅』『ケモノノケモノ』が披露された。
自分はアジカンの好きな曲を10曲挙げてくれと言われれば確実に選ぶのが『夕暮れの紅』。
シングル『リライト』を購入してカップリング曲になっていたこの曲に心を奪われこの曲ばかり聞いていた当時のことを思い出し沁みながら聴いていた。
漠然とした未来への焦りと不安をビートが走る曲では無くゆったりとしたテンポで、隙間を作った音楽で、情景が浮かぶサウンドで、シンプルな言葉で構成されたこの曲は大名曲だと個人的に思う。
金澤ダイスケのピアノが入ることでキラリと光る希望のようなものも見えるがバンドメンバーのサウンドとゴッチの歌声が描く焦燥感のバランスも絶妙だった。

金澤ダイスケと2曲披露し、また4人に戻り『夜を越えて』を披露。
この日は2011年の東北大震災の日の翌日だったこともあったからかなとか思わざるを得ないがアジカンの震災を絶対忘れない、風化させないという強い想いと現在起きている地球規模の問題についても少しづつ前に進んでいきたいという想いも同時に感じた。

ここから本編閉幕までの9曲は5人目のメンバーと言っても過言でないthe chef cooks meのシモリョーこと下村亮介が参加。
シモリョーがいなければここまでカラフルな曲に仕上がることがなかっただろう『迷子犬と雨のビート』。
そして個人的にアジカンがアジカンをリファレンスにして更新させた名曲だと思っている『エンパシー』。
最近のアジカンの音源の音はそれぞれの楽器の音が本当に良くてライブでどうなるんだろう?って思っていたがライブも素晴らしかった。
最新の曲がライブのハイライトになるのはバンドの今の状態が本当に良いということだ。
音源でキヨシのドラムの音の旨味100%で最高だなぁと感じていてライブでも最高でキヨシのドラムばかり見てしまっていた。笑

ここから音楽をやる「きっかけ」の一つにアジカンもあるだろうと思われる若手アーティストが続々出てくる。
『触れたい 確かめたい』では羊文学の塩塚モエカが登場し浮遊感のある歌声でゆらゆらと踊りながら歌い『UCLA』ではHomecomingの畳野彩加が登場し澄んでいるがしっかり芯も通った歌声で魅了した。

そしてメンバー4人+シモリョーで披露された『ダイアローグ』『転がる岩、君に朝が降る』で改めて難しい課題も抱えている社会だが前に進もうという強い意志ときっと大丈夫だという優しく包み込むよう想いも感じた。
『ダイアローグ』をライブで聞くのも初めてだったが、それぞれの楽器の音がライブハウスでは収まらない、音一つ一つがとんでもない拡がりをみせるスタジアムロックで最高だった。アウトロではセンスレスと同様oasisの『Rock’n’ Roll Star』のアウトロで痺れた。

その後登場したのがROTH BART BARONの三船雅也。

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披露された曲はもちろん3月30日にリリース予定のアジカンのアルバム『プラネットフォークス』のリードシングルでもある『You To You』だ。
一回聞いてまた新たな名曲誕生したんだと思ったがライブで聞いても本当に最高だった。
アジカンにありそうで無かったタイプの曲。
イントロから感じる躍動感と三船さんのコーラスはライブで聞いても素晴らしかった。
三船さんがオーディエンスを鼓舞していたのもすごく印象的で、歌詞に「想い描いて/君だって輪のなかに在って/ほら You To You」とあるとおり、この場をアジカンとそれを見ている人という関係ではなく、みんな輪の中にいるんだ、というそこにいた全員を肯定しているようにも見えて最高だったな。

本編最後はTurntable Filmsのボーカル&ギターの井上陽介と村田ストリングスが登場し『フラワーズ』『海岸通り』が披露された。
どちらも壮大な曲だがストリングスを入れることでバンドサウンドでは出せない繊細だが拡がりのある音でオーディエンスの感情に直接訴えるような、そんな締めに相応しいパフォーマンスだった。


アンコールではメンバー4人だけ登場した。
オーディエンスに対して25年の間で何かを「きっかけ」にアジカンの音楽を見つけてくれたことへの感謝、そして周りのスタッフへの感謝を述べ「俺たちを世界に連れて行ってくれた曲」と紹介しベースの山ちゃんが弾くイントロが鳴った。アニメNARUTOのオープニング曲の『遥か彼方』だ。
世界中で大人気のNARUTOの曲ということでこの曲は世界中で聞かれゴッチの言う通りアジカンが世界で聞かれるきっかけとなった曲でもある。
そんなアジカンにとってもきっかけになり、自分にとってもアジカンを聞くきっかけになったこの曲で終わりかと思いきや、キヨシが鼓動のようなビートを叩きだしオーディエンスも手拍子で呼応する。
『今を生きて』というタイトルのとおりタフな時代だが生きることを肯定するポジティブなエネルギーがあの空間に満ちていた。

アジカンの25周年記念ライブは前半はフェスのようなセットリストで中盤から後半にかけてレア曲も交えながら、アジカンの今のモードを強く感じるポジティブなムードに満ちたライブだった。
デビュー10周年の横浜スタジアムの時は同世代の友人アーティストを呼んで10周年を祝ったが、今回の結成25周年ライブは音楽をやるきっかけの一つにアジカンの音楽がある若手アーティストが次から次へと登場しパフォーマンスするヒップホップのライブのようでバンドのライブとも少し違う雰囲気もあって見ていて楽しかった。

アジカンは自分たちの「きっかけ」にもなっている影響を色濃く受けたoasisの音楽を散りばめ、アジカンの音楽も音楽活動の「きっかけ」となったアーティストが参加し、何かを「きっかけ」にアジカンを好きになった人たちが集まった。

25年間で変化と進化をし続けたアジカンの音楽。そしてアジカンが「きっかけ」を作り続けているブリッジになっていることを感じれたアジカンらしいライブだった。

新作にも今回ライブに参加したアーティスト以外にもおそらくアジカンを通ってきたアーティストが参加していてこれまた凄いことになっていそうなので非常に楽しみ。


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