「オンライン企業説明会、疲れました」と言われて。
「オンライン企業説明会、疲れました」
学生さんと話していた時に言われた言葉だ。
「そうだろうなぁ。」
自然と、そう思った。
ここからは、極めて結論ファーストではなく、まわりくどく、ナラティブっぽい感じで一筆書きで書いていきます。分かりやすさを求める人はイライラするかもしれませんが、まぁちょっと、暇つぶしのような感じで付き合ってもらえればと思います。
エッセンシャル消費という言葉を聞くようになってから久しい。
エッセンシャルというのは必要不可欠なものという意味だ。
飲食店においても、コンテンツにおいても、めちゃくちゃ実利のあるものか、めちゃくちゃおもしろいもの以外はなくなっていく。キャリアに関するコンテンツも同様で、とくに就職活動を行うほとんど学生にとっては、実利は内定(による安心)だろう。
めちゃくちゃおもしろいものは?そんなものは後回しでいいというのがきっと本音だと思う。
実際にコロナウイルスで大型の合同説明会が中止になったあとは、「就職活動は楽しい、楽しもう」といった訴求は、大人を中心に次々と展開されたが、学生がそれを見る目は冷ややかだった。「楽しいかどうかは、自分たちが決めることで、周囲の大人が決めることじゃない」と。ごもっともだと思う。それどころじゃないと。
昨年までよく聞いた「自分らしく働きたい」というのは、今思えば働くことができる見込みが立った上での贅沢な欲求だったのかもしれない。
特に今の22卒の学生からすると、学生の活動量の方が、企業の活動量よりも明らかに多くなっており、需給バランスを考えると自然だが、夏のインターンの枠への倍率は高騰しているようだ。
今は多くの学生が、「(そんなことはいいから)とにかく内定欲しい、インターン受かりたい」と言っているようだ。あれだけ毎日のように聞こえていた「自分らしく」という言葉は最近あまり聞かない。
気持ちはわかる、とは言えない。その不安な気持ちは、どこまでいっても当事者にしかわからないだろう。軽はずみな気持ちで寄り添うようなことはできない。
ただひとつ、想像できることがあるとしたら、自分も就職活動をしている時に、リーマンショックが弾けて採用がみるみる中止になっていった時期を経験したから、その状況を思い出すことはできる。
当時、周囲は2種類に分かれた。
内定が取れないかもしれないという不安に苛まれ、焦り、表情は暗くなり、面接で偽り、結果も出ず、みるみる自信を無くしていく友人たち。
不安にしょうもない誰かが作った「就活」というルールなんかに翻弄されてたまるかと、開き直る友人たち。
僕は、幸運にも、後者の友人たちと一緒にいた。そして彼らの言動の影響を大きく受けた。仲間の誰かが面接に落ちたら、「マジで面接のおっさんって見る目ないよな、アホちゃう?」と酒を飲みながら強気で傷を舐め合い、みんなの携帯をカーテンレールの上に置き、非通知の先行通過の電話を麻雀をしながら待った。誰かが選考通過したら、複雑な気持ちを勢いで隠し、嫉妬と祝いの酒を飲ませた。
だから自然と、悩みすぎることはなかった。正気を保つための現実逃避ってやつかもしれない。
だから何だよって感じかもしれないが、その経験は意外と今もいきている。
結局不安なんてものは、一生つきまとうし、逃げ切ろうとしても、逃げることはできない。
不安とは、向き合うより、付き合うほうがいい。
誰かに教えてもらったのか、自分で気づいたのかはわからないけれど、いま、大事にしている言葉だったりする。
未来について考える時間が、多くの若い人にとって、こんなにも不安で辛い時間になっているのは異常現象だと思う。
そして、内定を取るという手段が目的化したときに、数年後の悲劇は起きる。気持ちを偽って入った会社で、今後何年も何十年も、嘘のための嘘を重ねて生きるのは、苦行以外の何物でもない。
他人に嘘をつく時、自分にも嘘をついていることをしばしば人は忘れがちだ。
使い分けていたはずの建前が、知らないうちに本音を呑み込んでしまう。結局、損得に支配され、何が好きで、何を美しいと思うかを徐々に忘れていき、空っぽになるまでそれに気づかなかったりする。そして忘れた本音を思い出すのはめちゃくちゃ大変だったりする。
不安が人を襲う時、決まってこの負のループが回り始める。数年後、偽って内定を取得した人たちが、「自分が何をしたいのかわからなくなってしまった」と新しい悩みに喘ぐ姿は、きっとリーマンショック世代の87/88世代がそうなったのと同じで、経験した人たちはそれを伝えたいと願うものの、「でもこれ、生存者バイアスかもしれないな」と思って、口を噤む。
僕も同じく、そうしてきた。そもそも個人的には、人のキャリアに口出しするのはあまり好きじゃないから、普段からキャリア相談にも乗らないようにしている。ただちょっと、気の毒で見てられなくなってきたから、誰に言うわけでもなく、そっと文章にして置いておきたいと思う。
偶然見つけた誰かは、我に帰るかもしれないし、偶然見つけた誰かは、老害の高みの見物だと憤慨するかもしれない。それでいい。
数年後に、あのとき開き直ってよかったわ。という人が1人でも生まれれば、この文章を書いた意味があるのだろうと思う。
そしてここから、大胆に告知をします。
エッセンシャル消費の話に戻る。
就職活動に関する、キャリアのコンテンツでエッセンシャルなものは、めっちゃ実利(内定に近づく)のあるものと、めっちゃおもしろい(内定に関係ないけど、視野が広がったり、新しい気づきのある)もので、ぶっちゃけめっちゃ実利のあるものにくらべると、後者は必要ないと言われるかもしれない。
ただ、僕は、今こそ後者のコンテンツが必要だと思う。焦りと不安から、半強制的に適切な距離を置くために。おせっかいかもしれないが、内定に関係ないけど意味のあるコンテンツをつくり続けていきたい。
それが5/22にやったONE CAREER SUPER LIVEだし、それが7/18にやるONE CAREER SUPER LIVEだ。
いつだって、「しってる」を「やりたい」に変えるのは人だ。
今回は、人事の人ではなく、現場社員の人の出演にこだわっている。たくさんの人に触れ、情報を感情に変えて欲しい。最初は、なんとなくやりたい、なんとなくなりたいでいいと思う。説明なんて、ほとんどは感情のあとづけロジックだから。
純粋なこれやりたいと、純粋なこうなりたい、そうありたいに出会う一日になったらいいと思う。選考が思い通りにならなくて、未来のことを考える時間が苦痛になってしまっている人にこそ、立ち会って欲しいと思う。
ちょっと小休止というか、そんな感じで。きっとそのとき触れた人のストーリーは、じわじわと自分の中で意味をもっていくだろうから。
もし興味があれば、覗いてみてください。7/18にやります。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?