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24秒の奇跡!第77回富士登山競走完走レポート

2024年7月26日、第77回富士登山競走山頂コースをなんとか完走しました!

ゴールタイムはなんとまさかの4時間29分36秒。
制限時間24秒前の(文字通り)滑り込みゴールでした…!
今まで積み上げてきたもの・いただいたものの何ひとつが欠けていたとしても及ばなかったような気がします。
今回ほど、周りの方に支えられてこそ走れているのだと実感した大会はありません。

富士登山競走は、今回で77回目(五合目打ち切りおよび中止を含む)という歴史のある大会で、実際に書籍やインターネット上にも数多くの知見は共有されていますが、自分なりに「これがよかったのかも」と感じたことや、当日の展開を振り返ってみます。来年以降出場される方がお読みになったときに、どこか一箇所だけでも参考になるところがあればと願っています。


レースまでの練習

私は東京都江戸川区在住です。
江戸川区というのは坂道のまったくない海抜0メートル地帯で(かつて水害ハザードマップの表紙が話題にあがりました)、そのため坂道練習ができる場所はほとんどありません。
あるとすれば、川にかかっている橋(せいぜい200メートル)くらいでしょうか…
なのでマラソンのペース走をはじめ練習のペース管理には適した場所ですが、富士登山競走のような山岳レースには対応していません。

昨年の山頂コースで八合目関門の制限時間に間に合わなかった経験をふまえ、練習における基本的な考え方を以下の3つに整理しました。

  1. 山頂コースでは3,000mを登る必要がある

    • 言うまでもなく登りの力を身につけることが必要と考えました。

  2. 山頂コースでは4時間半動き続ける必要がある

    • 動き続ける大変さをイメージするため、平地に換算し、50〜60km走に相当すると考えました。山頂コースに挑むランナーの多くはフルマラソンサブ3〜3.5周辺と思うのですが、フラットなコースを4時間半走れといわれたら、このくらいの距離になるのではないでしょうか?

  3. 山頂コースではテクニカルな要素が求められる

    • 試走や、経験者・トレイルランナーからのアドバイスが役立ちました

今回富士登山競走に向けて、5月までは通常のマラソン用トレーニングを継続し、6月からは徐々に富士登山競走に向けて以下のようなトレーニングを混ぜていきました。

峠走(5月末)

鶴巻温泉駅〜ヤビツ峠の峠走(上り約12km、670m up)+大山登山(450m up)を実施しました。
効果はあると思うのですが、家から遠いのでなかなか実践できず、結局1回どまり…

富士山須走五合目競走(6月9日)

11.8kmで約1,200m登るという、富士登山競走対策といっても過言ではないレースでした。
実際に周りの会話でも「富士登山競走だったらXXくらいかな」的なのが聞こえてきたので、同じ目的の方は多かったでしょう。
富士登山競走におけるスタート〜馬返し間が、11kmで650m upなので、その約2倍の傾斜が味わえるという、なんともタフなコースです(中ノ茶屋〜馬返しの登りがずっと続く印象でした。さすがにウォークが混ざりました…)。

距離走(6月後半の週末)

仮に平地であっても、長距離を走っておく練習は必須と考え、6月後半の週末には25〜30kmの距離走を2回入れました。

試走(6月末と7月頭)

富士山の試走には2回行きました。
1回目、6月最後の土曜日には、五合目佐藤小屋まで。2時間7分くらい。
2回目、7月最初の土曜日には、八合目まで。山頂に行くことも視野に入れつつでしたが、帰りの時間や、足に力が入らなくなってきたことを考慮し、山頂は本番の楽しみとすることにしました。

傾斜トレッドミル(7月の平日)

6月末の試走はトレイルを得意とする友人と行ったのですが、帰りの車中で彼が勧めてくれたのが傾斜トレッドミル。
知り合いのトレイルランナーで傾斜トレッドミルを練習に組み込んでいる人は例外なく早くなっているそうな……
ということで7月の平日練習の多くを下記のような感じで傾斜トレッドミルにあてました。

①6% 10km/h 1時間 600m up
②15% 6km/h 1時間 900m up
③6.5% 10km/h 1時間 650m up
④15% 6.5km/h 1時間 975m up
⑤7% 10km/h 30分 350m up
⑥15% 7km/h 1時間 1,050m up
⑦7.5% 10km/h 30分 375m up

合宿(7月中旬)

7月13日(土)〜15日(月・祝)の3連休で、坂道だらけの峰の原高原に、ランニング合宿に行き、坂道たくさんのコースを3日間で80km走りました。
詳細は以下の記事で紹介しましたので、よろしければ。

エスカレーター・エレベーター禁止(2カ月間)

会社の入居するビル、駅、家のマンション、など階段がある場所はすべて階段で登りました。残業で帰宅が23時過ぎとかになっても、「ゴール寸前で数秒が違ってきたらどうするんだ」と自分に言い聞かせ、ここだけは最後の一線として死守しました。

こういった練習を込みで、6月や7月の月間走行距離は200km前後でした。
暑さや獲得標高を考えると、数値以上に体には負荷がかかっていたようにも思います。
(逆に言えば、こういった練習を組み込みながら300kmとかを走れるようにならないと、安定した成績は残せないのでしょうね…)

ギア

ランニングの実力をギアが大きく左右するとは私は思いませんが、本人と相性の悪いギアはパフォーマンスを低下させる要因となりますし、またコースとギアの相性によっては最終結果を1%くらいは変動させるのではないでしょうか(4時間半における24秒の差は、わずか0.15%です)。
「下山時にシューズが駄目になるから使い古しのロードレースシューズがいい」
なんて言説を見ますが、私のようなボーダーライン上の人こそ、ギアを含めて細部にもこだわる必要があると思います。前述のように4時間半動き続けるわけですので、パフォーマンスをあげるのももちろんですが、それ以上にストレスの発生要因をなくすことにも意識しました。

シューズ

アシックスのFUJISPEED 2を使いました。

軽量性と反発を重視したトレイルシューズということで、おそらくショート〜ミドルディスタンスの上級者向けモデルだとは思うのですが、ロード区間とトレイル区間が組み合わさった富士登山競走にも適正があると考え、こちらを選びました。
実際に履いてみてもしっくりきたので、前述の合宿ではインターバルトレーニングもこのシューズで行いましたが、スピードも十分に出せる印象でした。

服装

手袋とアームカバー、バフはジップロックに入れて持ち運びました。取り出す手間はやや増えますが、そのままランパンのポケットに入れると汗で濡れてしまい、装着するのがストレスとなるので。

給水・給食

富士登山競走の基本的な考え方は上述のとおり「50〜60km相当レース」ですが、コース中の給水ポイントは10箇所しかありません。またいくつかのエイド(馬返し、三合目、五合目など)ではバナナやレモン、パンなどの給食もありますが、六合目以降は水のみと考えたほうがよいと思います。フルマラソン以上のエフォートを暑熱条件で行うわけですので、各エイドで水分をしっかりとるのは前提として、エイド間でも適宜補給できる装備が必要と考えました。例えば私はフルマラソンでは4回ジェルを摂りますが、今回は6回摂りました。

  • ボトル:ShakeHandsボトル…ランパンとタイツの間に差し込めるボトルです。三合目以降、エイドで水を入れてもらい、適宜ドリンク粉末を溶かしました。

  • ドリンク粉末:凌駕スマッシュウォーター…2包持参。三合目と八合目で使用。

  • ジェル:軽量化よりもエネルギー切れのリスクを重く見て、7つ持参しました。味の変化をつけたいので、好きな味からいろんな種類を。

  • 塩飴:健康体力研究所のスポーツキャンディー塩飴…パッケージを両側から押すとそのままポンッと開くのですが、疲れているような状況ではこれが最大の長所と考えました。

  • ローション:Mag-onボディーローション…マグネシウムと芍薬甘草が経皮吸収されて効くとかホンマかいな、と思っていたのですが、練習会で一度試してたしかに足攣りにはならなかったので、おまじないとして。

レース振り返り

前日

いつもの富士急トラベルのアクセスツアーのバスで16時新宿発。バスは自由席なので、車酔いしやすい人は前方窓際の席を確保するため30分前くらいに行くとよいと思います。
大会本部の富士北麓公園(今年から変わりましたね!)で受付を済ませ、お宿はツアー内の富士山リゾートホテルへ。

大会本部の富士北麓公園

夕食は少し歩いて、レース前ルーチンのうなぎを食べ(丑の日も近いし)、少し頭痛がしたので薬局でバファリンを買って22時前就寝。

当日朝

朝食はコンビニで調達したおにぎり3つとみたらし団子3本、そしてツアーバスで富士吉田市役所に移動してから、バナナ1本とOS-1ゼリーをとりました。

スタート地点から富士山を眺めるたび「あんな遠くまでたった4時間半で行くのか」と絶望感にかられます(笑)
3年目ともなると、開会式の挨拶〜諸注意〜選手宣誓〜エイエイオーまでの流れが自然に感じられる

スタート〜馬返し

ナンバーカードは1100番台前半で昨年とほぼ変わらずだったのですが、スタートブロックはD→Cに変更となっていました。
スタート時の天気は晴れ、気温は発表はされていなかったものの、いくぶんは昨年よりマシだったようにも感じました。

昨年のデータから、今年の目標タイムは「馬返し1時間3分、五合目2時間7分」に設定しました。

ただそれ以上に強く意識していたのは、馬返し通過まで運動強度を上げすぎないことでした。「ロードを飛ばさないと渋滞に巻き込まれてタイムが出せない」という言説も聞きますが、そもそもロードでヘタってそれ以降のパフォーマンスが下がってしまっては本末転倒です。
具体的には「中ノ茶屋まで心拍160以内、馬返しまで心拍170以内」を基準にしていました。

スタートから北口本宮冨士浅間神社を15分0秒で通過、水2杯を補給。

中ノ茶屋は40分10秒。昨年は(靴の中が濡れるかも)と遠慮していた掛水を、今年は受けることにしました。気分的には楽になりますね。
本当は中ノ茶屋でジェルを摂取する予定でしたが、前日夜と当日朝の食事が残っている感があったので、給水のみとしました。

中の茶屋〜馬返し間は、心拍ともにらめっこしながら、165を超えたらすこし抑えめに…と意識している間に馬返しに到着。ゆっくりながらもほとんど歩かずに到着できました。

馬返し通過は1時間6分34秒。悪いタイムではないものの目標から3分半のビハインドです。トレイルでリカバリーできるといいのだが…などと思いながら、ジェルを1つ摂取。

馬返し〜五合目

予想はしていましたが、馬返しを過ぎた直後からずっと渋滞でした。
ところどころで小走りはできるものの、体感で7〜8割の時間は渋滞だったような気がします。
焦りは周りのランナーからも伝わってきますし、なかにはシングルトラックの脇にある斜面を強引に通り抜ける人もいるのですが「ここでリカバリーだ」と言い聞かせて辛抱します。
途中でボトルを落としてしまいましたが、ありがたくも後続のランナーに拾っていただきタイムロスなしでした。順位やタイムを競うとかではなく「みんなでゴールに行くぞ!」という時間帯ならではの助け合い、嬉しかったです。

そんななか三合目給水所では、バナナを1切れいただき、ボトルへの給水(スマッシュウォーターを溶かす)を行いました。まだまだ先は長いぞと気分転換できたように思います。

三合目給水所を過ぎたあとも、基本はやはり渋滞。こればかりは仕方ないです。
脚は温存できたはずが、自分のスピードで行けなかったフラストレーションもあり、疲れたような疲れていないような不思議な気分でした。
(実際は疲れていたと思います)

五合目通過は2時間11分55秒。試走のとき(2時間7分)より遅いのと、目標より5分ビハインドなこと、関門閉鎖までわずか3分だったこと(昨年は1分半前だったので進歩ですが…)から「今年もまた八合目で関門に引っかかるのだろうか」という不安がつきまといました。

五合目〜七合目

五合目エイドまでにボトルの水も半分くらい飲んでいたのでここで補給しました。空腹感はまだないですが、ジェルも1つ入れます。里見平星観荘でヘルメットを受け取り、(安全指導センターまでこんなに長かったっけ?)と思いながら坂道を登ります。

すると私と同じ赤いランニングユニフォームを着たSさんが応援してくださっているではないですか! 思わぬところで元気をもらい、いくぶんか足も軽くなったように感じました。

写真はSさんよりいただきました!

さて馬返しまでは意図的に、馬返し以降のトレイルでは渋滞に巻き込まれて、いずれも脚を温存した(ことになっている)ので、本番はここからです。
…というよりは、昨年のデータからは、五合目を2時間10分台以降に通過したランナーの完走率はわずか23.5%ですので、周りのランナーよりも速いペースに上げないと完走の可能性はないということを認識します。ある意味でこれは「焦り」ですが、裏を返せば「(かなり疲れた顔になってきているランナー集団のなかで)上位20%に入れれば大丈夫」という、やや俯瞰した思いでもありました。自分でスプレッドシートと向き合ってグラフを描いたからこそ得られた視点だと思います。

あまり先を見すぎると気が滅入るのと、砂に足を取られてずり落ちるとエネルギーロスになる(階段2〜3段ぶんくらいは損するのでは?)ので、ずっと前のランナーの足取りをトレースしていました。そして、前に2人並んでいるときにはより早いほうにつき、抜けるぞと思ったところでは歩幅は小さく保ちつつもピッチを上げて、少しずつ順位をあげました。

この歩幅についてですが、ロードメインだと発想はむしろ逆かもしれません。総距離は歩幅とピッチの積算ですので、同じピッチであれば当然歩幅は大きいほうが早いわけです。しかし一緒に試走に行った友人のトレイルランナーは、歩幅を小さく保ち、段差もできる限り小さな段差を積み重ねて登るべし、なぜならそのほうが大きな筋肉を使い続けられるから、というのです。「よっこいしょ」と大きな段差を一足飛びで登ると、小さな筋肉をも動員することになり、結果として早く売り切れてしまうのだと。そんなアドバイスも思い出しながら、小さな歩幅(靴1足分も空かないくらいの歩幅)で淡々と登り続けました。

七合目〜本八合目

七合目あたりから岩場がはじまるのですが、ここでまたしても渋滞です。私の周辺では、岩場での渋滞は結局最後の最後まで続きました。とはいえそれを嘆いても仕方ないので、またしても前の人の足取りを参考に、トレースできるところはトレースしつつも、できるだけ小さな段差を選び、かつ岩や鎖で手に持てるものがあればなんでも掴み、体を上に運ぶ手助けにしたつもりです。

途中、岩の間に挟まって靴が脱げてしまうアクシデントがありました。ちゃんと履いたつもりでしたが、さすがに紐も緩むのでしょうか。とはいえ結び直す余裕はなく、紐もそのままに履き直して前へ(というよりは上へ)進みました。

前述とは別な試走会でご一緒した方で、昨年は山頂の関門に残念ながら2分及ばかかったという方のお話も役に立ちました。いわく「山小屋の前の平坦なところを走るだけでも何秒かずつ縮められる」。これを実践していなかったら山頂の制限時間にも間に合わなかったでしょう。

給水所のある太子館で2包めのスマッシュウォーターをボトルに溶かし、またこの道中で3つほどジェルを摂りました。レモンわらびと苺わらびは最高にうまい。

白雲荘(標高3,200m?)は、昨年には足が攣ってジエンドになった場所ですが、今年は大丈夫でした。というか、ここに至る道中も、昨年の本番や今年の試走では、足が重くて前に進むのもやっとだったところが、今回は事前の練習の成果か、歩幅や段差に気をつけていたからか、補給をしっかりしていたからか…おそらくすべてがうまく作用してだとは思いますが、不思議と進み続けることができていたのに気づいた瞬間の喜びは、何物にも変えられないものでした。

とはいえ刻一刻と迫るのは関門閉鎖時刻。白雲荘から本八合目富士山ホテルははるか上に感じられました。この時点で八合目関門閉鎖まで残り18分、目標は15分前通過だったのですが、さすがに現実的でないと感じ、まずは関門突破をということで、ピッチをさらに上げました。

元祖室(標高3,250m)は残り14分で通過。とりあえず平地は下り坂と思い込んでキロ5くらいで飛ばします。

果たして、標高3,400mの富士山ホテル(八合目関門)を、3時間56分46秒で通過しました。はるか上に感じられる場所も、意外となんとかなってしまうものだ…という気付きがありました。

本八合目〜山頂

八合目関門を閉鎖3分前に通過したときは、昨年よりは上に行けたという達成感と、まだ33分頑張らないといけないのかという絶望感、そして「閉鎖5分以内に通過した人で山頂ゴールしたのは30%」という前年のデータの3つが頭によぎりました。まあでもここまできたらプッシュ一択ですよね…応援してくれていたランナー(須走五合目競走でもお見かけした方)も「あと34分、行けるよ!」と励ましてくださった。

とはいえここからはまったく未知の領域です。とりあえず、「閉鎖5分以内に通過した人での上位30%」に食い込むべく、ひたすら小さな歩幅で進み続けました。道も狭いけれども抜かせなくはないので、一人また一人とすこしずつ追いかけるだけです。

八合五勺の御来光館を4時間6分で通過。最後の給水所なので、しっかりとコップの水も飲みつつボトルにもフルで充填しました(最後まで飲む余裕はなかったですが)。

迎久須志神社の鳥居(硬貨が刺さっているやつ)を4時間16分で通過。たぶんここが九合目なのだけれども「あと一合ぶんを果たして14分で行けるの??」と、どんどん自信がなくなります。

ここから先はいわゆる「胸突き八丁」と呼ばれる難所の岩場です。山頂ははるか上に見えてくるものの、そこに至る残り八丁(872メートル?)は、胸を突かれるように息もできなくなるほど苦しいというのに由来するとのことです。
とはいえそんなことは考える余裕もなく、これまでの延長線上でただただ登り続けました…あまり覚えていません……。「まだ行けるよ!」なんて声も聞こえましたが、自分に向けられたものじゃないと思い、しかし必死に、鉛のようになった足を少しずつ進めると……残り1分で鳥居が目前に飛び込んできました。

出し切ればまだ行ける!」
という檄(2022年優勝者のくれいじーかろさんでした)で目が覚めて、200mインターバルのラストみたいなスパートをかけると、果たして、制限時間10秒前(に感じたが実際は24秒前)にゴールに滑り込みセーフ!!!

ガーミンのスクショ。最後の曲がり角(鳥居)が見えてからのペースはたぶん二度と出せない
最大心拍数はゴール時に記録

ゴールしてからも大変だった

ゴールしてから15分ほど、どうにも動くことができず、ベンチに座り込んで残りのドリンクとジェルを補給していました。

時計を止めたのがゴール13秒後なのでてっきり11秒前セーフと思い込んでいた(似たようなものか)

その後、せっかく山頂まで来たことだし、例のアレで写真だけは撮るかということで、撮影列に並ぶこと約15分…

例のアレ

首から下のありとあらゆる筋肉が攣り、なんとか写真は撮ってもらうも、そのまま救護スタッフに両脇を抱えられ、扇屋の救護所に運ばれることに……(テレビでお見かけする福田六花さんもいらっしゃいました)
椅子に座らせていただき、芍薬甘草湯、お水をいただき、また手持ちで残っていたジェルと塩タブレットをすべて使い果たすと、25分後にようやく回復。本当にご迷惑をおかけしました…周りのランナーの方々もお騒がせしました……。

出発前に、なけなしのお水をいただき、トボトボと下山道に。五合目スバルラインの最終バスが14時発ということで、山頂で何かを買うような余裕もなく、富士下山競走に出発したのが12時20分でした。下りは超苦手なので、転ばないように(そして脚が攣らないように)一歩ずつ降りていったところ、なんとか最終バスに出発5分前に間に合いました。

下山道は、多くのランナーが軽やかに走っている印象があるかもしれません。でも山頂で救護を受けて時間ギリギリに出発した自分の目線からすると、ごく一部(おそらく早々にゴールしてお鉢めぐりをした方でしょう)を除いては、一歩ずつ確実に降りている方ばかりでした。別に下り道の速さを競うレースでもないし、バスに間に合いさえすれば迷惑をかけるわけでもないし、シューズも傷みにくいし、ましてや周りの一般登山者(下山者?)を脅かしにくいわけですし、ゆっくり下山が流行ってくれると良いのにと思うばかりです。

おわりに:完走ボーダーラインのランナーが24秒を削り出すために役立ったこと

長々と書いてきてしまいましたが「完走ボーダーラインのランナーが24秒を削り出すために役立ったこと」をtake-home messageをまとめるとすればこんな感じでしょうか。重要度順というわけではなく、時系列順です。

  • 傾斜トレッドミルのような登りの練習を平日にも組み込む

    • 最強の練習は試走ですが、週末の試走だけでは足りなかったと思います

  • 装備品を妥協しない(特に靴:スピードも出せるトレイルシューズ)

  • 4時間半のレースに耐えうる補給食と水分携行体制をとる

  • ロード区間で消耗しきらない

    • フルマラソンくらいのエフォートで入りたいと思い、実際にそうしたのですが、トレイル区間や岩場で渋滞に巻き込まれたので、もっと飛ばせばよかったという考えもあると思います。しかしその戦略で、山岳区間で止まることなく、実際に完走することができたので、本稿での結論はやはり「飛ばさない」にしたいです。

  • トレイル区間以降はなるべく歩幅を小さく、段差は小刻みに

  • 山岳区間は前の人の足取りをトレースしてエネルギーを節約する

    • 足元が崩れることによるロスを避けるという意味と、どこに足を置くべきか考えることによる精神力(いわゆるMP)の節約という意味の2つ

  • 時間制限が迫って関門が遥か上に見えても諦めない

    • 山岳区間では2時間15分で1,500mを登りました。単純計算で、100mを登るのにかかる時間は9分です。見えていれば、意外と行ける(と思い込むのが大切)。

24秒なんてものは、4時間半という制限時間の前にはわずかな時間ですが、だからこそ、今までに行ってきた練習や準備を振り返るいいきっかけだったと思います。繰り返しになりますが、紹介してきた内容のなにか一つでも、来年以降のレースに挑まれる方の参考になれば嬉しく思います。ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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