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師走と、2人の言葉を後押しに/水晶体に映る記憶vol.53

私は今、彼と、彼の上司の方とお酒を飲むという摩訶不思議な状況にいる。

忘年会にしては早いし、クリスマスまでは時間がある。わかりやすく〇〇会、と名付けられないのだが、私にとってこの場があることはとても有難いことだった。

大阪に来て3ヶ月が経った。
初めて内見に来た時は、夏だったな
もう2022年が終わるなんて信じられない
でも、朝方が暗い時間は長くなったから
冬なのだなと思わされる。


この数ヶ月を経て、私はこの土地での地盤みたいなものを、少しずつ作ってきたように思う。

新しい縁ができ、知らない街にも沢山いった。ついには大阪観光に友人を連れて行くまでになった。

そして今、生粋の大阪人であろう彼の上司ともお陰様で楽しく話せていることを、数ヶ月前の私が想像しただろうか。

この飲み会は、2回目だった。初めは、彼がとてもお世話になっているという方ということで、彼らの定例会にお誘いしてもらったことがきっかけだった。

人見知り度合いに定評のある私でも、瞬時に打ち解けることができたのは、二人の作る空気感が心地よかったからだと思う。

1回目は、とても楽しく時間をすごし、2回目の今日は大衆居酒屋に行こう、という話になった。

一杯目から目の前で起こる、高速のツッコミにハラハラしつつも、なぜか私の発言に笑ってくれたり、逆に面白くない事をいうとわざとシンとしたりする、その一連の流れも面白くて、肩の力を抜いて会話していた。


そんな中、ふと私の仕事の話になった。

今、フリーのデザインの仕事をしていること。
ヒーヒー言いながら、生き延びていること。
近い未来で、デザインとインテリアを網羅した仕事をしたいこと。


そして、ゆっくりと彼がいう。
「仕事はとても丁寧なのに、自分の価値を低くつけるんだよね」

以前から、私の値段設定について、たびたび相談はしていた。しかし、一向に勇気を出せない私もいたのだ。


「値段を上げるほどの価値があるのだろうか」
「お客さんは着いてきてくれるだろうか」
「もっと実力をつけてから…」

そんな言葉を考えてしまうと、値上げ所ではなくなる。

だから、この半年はずっと値段を変えずにやってきた。


「仕事はとても丁寧なのに、自分の価値を低くつけるんだよね」

この彼の言葉を聞いた上司の方が、さっきまで柔らかい表情だったのに、少し真面目な目に変わった。

具体的にどんな工程で仕事をしているのかを話したら、
それはとても価値があることだと熱弁してくれた。

「しっかり値段をつけて、対価をいただくこと。君だって生活があるし、これから仕事していくときに、とても大切な考え方だ」と。自身の経験と重ねて語ってくれた。

彼も重ねて話す。
「今までデザインをさせてもらった人に、満足度を聞くのはどう?きっと、私らが言いたいことがわかるよ」と。

おそらく、飲み会の半分ほどの時間を、私の仕事の相談に使ってくれたのだ。

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