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いつだってあの頃の気持ちを、思い出しながら/水晶体に映る記憶vol.32

Googleマップで、「歯医者」と検索する
30件…いやもっと見ただろうか。

私は口コミを頼りに、
ひたすら「痛くない歯医者」を探していた。


誰しも苦手なもの、というのはあると思うのだけど、私にとってはダントツで歯医者である。

小さい頃、突然乳歯を抜かれて以来(先生と雑談していたら途中で抜かれていた)、歯医者=怖いもの、という認識が取れない。

それなのに神様はひどいもので、私はいわゆる虫歯になりやすい体質らしい。毎日3回磨いているし、磨く時間もかけていると思うのだけど、それでも健診で1ヶ所はヤツが見つかる。

その先に、地獄の虫歯治療があるわけだ…。

どうせ虫歯になるならば
痛くない歯医者で治療したいし、かつケアもしっかりしてくれるところがいい。

引越し、がいいきっかけとなり
かかりつけの歯医者さんを変えるため、
怒涛の歯医者選びが始まったのだ。




選ばれたのは、駅近くにある
新しい歯医者さん。

口コミ評価も良く、画像からみると室内も綺麗そう。早々に予約をして、ドキドキしながら当日を待つ。(歯医者の前日は、いつも無駄に緊張してしまう…!)


当日たどり着いたのは、入り口がガラス張りの、まるで珈琲とシナモンロールの香りがしてきそうなカフェ…………?

いや、入り口に歯医者と書いてある。歯医者か。歯医者にしてはおしゃれすぎるな。。と、中の様子を伺いながら入った。


す、すてきすぎる………。
思ず声に出してしまいそうな声を、頑張って心の中にとどめた。


ベージュに統一された可愛らしい色合いの空間に、足の細いスタイリッシュな椅子が5.6脚、子供の遊ぶスペースも広く確保されている。

そして先にある診察室は、一室一室がお家のように屋根が付いているデザインで、私の中の子供心がはしゃいだ🤯

「歯医者の認識」がガラッと変わった瞬間であった。


「小林さん〜」
院内を舐めるようにみる私に、声がかかる。
いよいよ診察…。痛く在りませんように、痛くありませんように、と祈りながら診察室へ。


そこは落ち着いた個室で。青色と泡の白が美しい水槽があり、円錐のペンダントライトが下がっていて、その空間にいるだけで、緊張していた気持ちが解されるようだった。

そこから流れるように検査や説明が終わり、なんとも清々しい気持ちでクリニックを後にする。

帰り道、気づいた。
久しぶりに、患者さんの立場に立ったな、と。

大嫌いな歯医者に行く前は冷や汗がでること。
診察中に先生の手が止まると、虫歯じゃないか、とハラハラすること。
待ち時間に聞こえるキーーーンって音に怖くなってしまうこと。

当たり前に「不安」とか「恐れ」がある中で
治療のために1時間を過ごす。

その時の空間の、雰囲気、というものの重要性の高さに、ハッとしたのだ。
照明一つ、壁一つ、椅子一つ、可愛らしいものがあるだけでほっこりするし、
受付の人の柔らかい対応は、空間の一つの要素になっている。

空間の心地よさが、
患者さんにとってどれほど大切か
そんな当たり前のことを、おもいだして。

看護学生の頃、初めての実習で感じた「病院の無機質さ」とか「医療者のホスピタリティの大切さ」の違和感は、
多分ずっと私の心のしこりになっているのだなと思う。

そして今はあの頃よりも、ずっと空間のことを知ってるし、勉強する環境も揃っていて。
ああこういう風に人生って繋がっているのだな、、と。自然とこの道に来たのは、私の選択の連続だから。


こういう日常に、そんな当たり前を思い出す機会があったなんてね。医療に関わるならば、人の過ごす空間に関わるならば。

何度だって思い出していたいと思う。

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