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住所プレートに恋焦がれ

京都市下京区。
私はここで、運命の出会いをした。

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えっ?と思わず住所プレートを二度見した。
そして、漢字一文字一文字、噛み締めるように読み直した。

「天使突抜」

て ん し つ き ぬ け 。
どうやらこの町は、天使が突き抜けて行くらしい。
私はふふ、と頬を緩めながら住所プレートを見つめた。
住所プレートに笑いかけたのは、この時が初めて。
住所プレートをじっと見つめたのも、生まれて初めてだった。

そして、「これだ」と思った。

*******

私が京都に行く理由は「地名」。
住所プレートは、私に理由を与えてくれた。
それまでも京都へ行くことは楽しかったけれど、
理由が出来たことで楽しさに加えて探究心というか好奇心というか、
とにかくそういう欲がぶわっと湧いた。
京都の地名は面白い。
観光都市京都の華やかさからはかけ離れた、
古の血生臭さや殺伐とした足跡が見えてくる。
なんだか指の隙間から見てはいけないものを見たような気がして、
なんとも言えない背徳感と高揚感を味わえるのだ。
私はより一層京都が好きになり、
京都の地名を追うことがライフワークになった。
たった一枚の住所プレートが、私の人生に色を添えてくれた。
ありがとう住所プレート。愛してる住所プレート。

ちなみに。
「天使突抜」は「エンジェルが突き抜ける」という意味ではありませんでした(そりゃそうだ)。
実際に京都市下京区天使突抜を歩いて回ったのですが、
案の定、町名の由来になったヒントがそこにありました。
それは…

また、別の機会に。

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