座布団は一人暮らしの家にあったほうがいい

ぼくは、仏教徒だ。

といっても、信心深いわけではなく、なんとなく、浄土真宗くらいの認識である。

そして、タイトルの「座布団の重要性」に気づいたのは、2年前の話である。

ぼくは現在、世間から見たら働き盛りの30代会社員・一人暮らしであるが、いろいろと理由があって仏壇が家にあった。

特に引っ張る理由も、後々伏線回収するつもりもないので「いろいろ」を説明すると、

僕は3人兄弟で母子家庭で育ち、20歳のころには祖母祖父はすでに他界していた。

母子家庭で貧乏な家庭だった母親は、友人の勧めと「納骨料が安い」という理由で(おそらく)、宗教色の強いとこに改宗をして、その宗派の仏壇が家にあったというわけだ。(代々、宗教にこだわりがないことがよく分かる)

そして、母もいない今、仏壇を捨てるわけにもいかず、地元に残った私が一人暮らしの家に似つかぬ大き目の仏壇を所有していたということだ。

勘のいい方なら、もうここでタイトルの意味に気が付いたかもしれないが、どうかここまで来たら呼んでいただきたい。

↑誤字である。

読んでいただきたい。呼んでいただくのは飲み会でお願いします。

さて、冒頭に記した通り、私は信心深くないが、母親が改宗したグループには思い入れもなかったため、先祖の魂が眠っているであろう浄土真宗に戻し、仏壇を処分しようと考えに至ったのである。

さて、皆さんは仏壇の処分方法って知ってますか?

恥ずかしながら、僕は、知りませんでした。

ある日、友人の飲み会に参加したら、ちょうど、仏教系の学校を卒業したという方がいたので、これ幸いと聞いたみたところ、

「魂を抜いてから、引き取ってもらってください」

と、RPGのイベント発生みたいなコメントを言われ、正直「ナニソレ?どうゆう行為??」状態になってしまった。

「ちなみにおいくらぐらいですかね?」と聞くと、

「そうですね、安くて5万円~くらいですかねぇ」と。

「いやいや、高い高い!!! 俺がイギリスに行った時の所持金の3倍じゃん!!!(※過去の記事参照)」

まぁ最後のセリフは言わなかったが、私がその後の飲み会でひきつった顔でハイボールを飲んでいたことは言うまでもない。

しばらく、仏壇の処理は保留にして過ごしていたある日、

ダイエット目的で参加していたフットサルで引越しやハウスクリーニングをやっている個人事業主の青年と出会った。

そこで、すかさず「仏壇安く処分できませんかね?」と聞いたら、

「ああ、知り合いに住職がいるので、多分1万くらいでできますよ」と言われ、「やぁっっすいっすねぇぇぇえ」と返答してそのまま処分を依頼する流れとなった。

通常5万円が1万円。

80%オフである。

なんと素敵な響きだ。もう今後は「80%OFF」のタトゥーを左肩に入れようか?

それか、「あなたの座右の銘は?」と聞かれたら、迷わず「はい、私の座右の銘は80%オフです」と答えることにしよう。

しかし、この後、私は思い知る。

自分の無知を。そして、座布団の必要性を。

当日。

事前に聞いていた話だと、

「軽トラで取りに来ますので、簡単な儀式をやってから、持っていっちゃいます。30分もかからんすよ」

真っ当な社会人なら、この「簡単な儀式」で何をするか容易に想像がついたのだろう。

ぼくは、正直、紙がしゃらんしゃらんと垂れている木の棒を左右に振るくらいとしか予想ができなかった。

いざ、住職が到着した。

僕の家の玄関を開けた。

僕は、「さぁ、もう、持って行ってもらう準備はできていますよ!」とあろうことか、もう仏壇を玄関まで運び、観音扉が開かないようにひもでくくるという段取りまでしていたのだ。

それをみた住職は、多めに瞬きをして、「あ、あの、まずは魂を抜きますので、すこし広い場所に移動してもらうことは可能でしょうか?」といった。

(ええ、そうなの??もう一回わざわざ運ぶのん?)

と、私はびっくりしつつ、広めの部屋に移した。そして、仏壇を開いたところで住職が言ったのだ。

「それでは、魂を抜かせていただきます。座って行いますので、座布団をお貸しいただけますか?」

それを言われた私は、Macの虹の玉が回転するかの如く、フリーズしてしまった。

「ざ、座布団ですか…ああー座布団、要りますよねぇ…」

はい困った。

だってないんだもん!

一人暮らしの男の家に、住職が座って魂を抜くにふさわしい座布団とかあるわけないじゃん!

どうしよ、どうしよ。もう、枕を差し出すか??

いや、掛布団をきれいに折りたたんだらいい感じの座布団を演出できるのでは?

なにかうまいことを言って、山田君に座布団を持ってきてもらえないかな?

とか、パニック時のドラえもんよろしく、部屋を物色していたら、枕の横にそれはあった。

ニトリで購入したソファクッション(30cm x 30cm)である。

「あの、ざ、座布団です…」

と住職に渡そうとすると、住職の顔はみるみると曇っていった。ちなみにその日の天気は晴れていたため、そのコントラストはそれはもう!であった。

「で、では、儀式を始めます。」と住職。

その正座のひざ元には、花柄のソファクッション。

違和感しかない。

しかし、プラスに考えよう。

もし、僕がOLで、家にビーズクッション(人をダメにする、のフレーズでおなじみのやつ)しかなかったらどうだったか?

それに座ればきっと、住職が魂を抜かれたようにビーズクッションでくつろぎ、「だめだぁ俺がタマシイ抜かれちったぁwww」と、なったかもしれないのだ。

ならばむしろ、最善だったのかもしれない。

さて、儀式はというと30分ほどかかった。

お経を読み上げていただき、蛇腹の厚めのお札みたいなやつで、私の肩をバンバンとたたき、それはそれはもう、絶対にソファクッションでやるべきではない、めちゃくちゃしっかりとした儀式だった。

それを終え、料金をお支払いし、住職は仏壇を引き取ってお寺へ戻っていった。

「魂を抜くのだから、それなりの儀式が必要だとなぜ思わなかったのだろう?といか、それくらい知っておけよ、かつての俺。」と学んだ出来事である。

ちなみに、そのひ以降、身も心も軽くなった気がして、ちょくちょく見ていた変な夢を見ることはなくなり、何か新しいものへ自分が向かっているような気分になった。(風水っぽいな)

住職さん、本当にありがとうございました。

ちなみに、モデルのアンミカさんは寝る前にポジティブなことを言って、いい夢を見るようにしているそうです。


みなさん、いい夢みてね☆

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