不都合な事実 /「オックスフォード大教授が問う思考停止社会ニッポン」を読んで/大卒が増えたのに、企業の生産性が上がっていない _下手は下手なりの読書

§1
「オックスフォード大教授が問う思考停止社会ニッポン」
(苅谷 剛彦/著)を読んだ。
色々と感想はあるのだが、衝撃だったのは次の事実。
「高学歴化したのに、企業の生産性が上がっていない」(同書 p.177)
今は大学全入時代と言われているが、上のようなことでは、学生が(せっかく?)大学入学しても・・・なんなのか・・・、となってしまう。
以下の「それ」は、「日本社会全体の人的資本が国際的に見ても高いこと」を指しています。

それが市場における競争(略)を通じて、労働生産性や賃金の上昇には結びついてこなかった(略)。

「オックスフォード大教授が問う思考停止社会ニッポン」
p.180

§2
著者は、上記に続けて、日本社会の閉鎖性を述べます。詳しくは同書を読んでほしい。
ここでは、一例を抜き出します。
まず、オックスフォード大学は公立大学であることを述べ(p.186)、その後

オックスフォード大学の研究者や教員のおよそ4割は「外国人」だ。

「オックスフォード大教授が問う思考停止社会ニッポン」
p.195

さらに、閉鎖性を読者に喚起するかのように著者は、東大教授の4割が外国人に置き換わることを想像してみれば・・・、と述べます。(p.195)
つまり、現状は、

高度人材には依然として国を閉ざしていると等しい(略)。

「オックスフォード大教授が問う思考停止社会ニッポン」p.194

§3
ここでは、象徴的な言葉を抜き出してみます。

曖昧さを許す(カタカナ語の括弧つきの)「アンビバレンス」である。

「オックスフォード大教授が問う思考停止社会ニッポン」p.247

§4
同書では、”知識の在庫”、”社会に埋め込まれた知識の在庫”、”知識の構図”などの言葉が使われていて、いささかハードルが高いように思える。
著者は、”思考の習性”(p.270)と言い換えており、こちらの方がなじみやすいかも。

§5
他の論点も興味深い。刺激的な本。前半の著者の体験と、後半の考察がうまく続いている。「考え方」の本を書いている著者ならでは、である。(「考え方」の本→『知的複眼思考法』、『教え学ぶ技術』(共著)。『知的・・』の本については、ネット上に感想などが在りますし、このnote内にも、関連した文章があります。)

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