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「労働改革」の要は「労働時間」~8・4 hour workday system~

◆前提

●2022年(令和4年)の労働力調査/雇用形態の割合
「正規の職員・従業員 63.1%」「パート・アルバイト 25.9%」
「契約社員 5%」「派遣社員2.6%」「嘱託 2%」「その他 1.5%」

●非正規社員の現雇用形態を選んだ主な理由/
「自分の都合のよ い時間に働きたいから 32%」
「家計の補助・学費等を得たいから 20%」「その他 13%」
「家事・育児・介護等と両立しやすいから 11%」
「正規の職員・従業員の仕事がないから 11%」
「専門的な技能等をいかせるから 8%」「通勤時間が短いから 3%」

マイナビの離職理由アンケート/保育士の離職理由
「職場の人間関係 38.2%」「仕事量が多い 31.8%」
「保育方針の違い 23.6%」「給与の安さ20.4%」

介護労働実態調査/早期離職防止や定着促進に最も効果のあった方策
「本人の希望に応じた勤務体制にする等の労働条件の改善 22.9%」
「残業を少なくする、有給休暇を取りやすくする等の労働条件の改善に取り組んでいる 18.1%」「給与水準を向上させている 7%」

●15歳以上人口は、1億1021万人。労働人口は、6870万人。
●非正規社員のうち、転職希望者は18%。
●無期雇用(正社員)でも30日前に勧告することで解雇可能。
●定年制の導入は義務ではないが、高年齢者雇用安定法の改正により、65歳超雇用推進助成金が新設されたり、定年年齢を70歳まで引き上げることが一応「努力義務」にはなっている。

◆全体像

非正規雇用の多くは「パート・アルバイト」であるため、労働負担が小さいことや時間の融通がきくこと等が重視され、正規社員になることを望んでいる人は少ないようです。

「人材不足は給与額をあげて解消すべきだ」という人も多いですが、離職理由をみると賃金は優先度の高い要望ではなく、労働負担を軽減することの方が重要なようです。

正社員との待遇差が問題になるのは、派遣社員や契約社員ではないかと思いますが、派遣社員は2.6%。日本派遣協会のデータでも2.5%です。
全体数としては少ないようですが、「同一労働同一賃金」の義務化で多少は改善されているとしても、雇用形態を分ける以上は待遇差が生まれます。
仕事の内容で区切らなくても、労働時間・日数などで雇用形態を区切ることはできるので、労働問題の課題①は、非正規のフルタイム労働なのかもしれません。

また、保育士や介護士などは人手不足を感じていて、給与額よりも労働負担の軽減を強く求めていますが、雇用主側はわりあい楽観的なようです。
この温度差からも、労働者負担の重い職種であることが窺えます。
課題②は、お金では解決できない過重労働の軽減です。

◆改善案「フルタイム労働とハーフタイム労働」

・<8hW>正規社員/8時間のフルタイム労働…副業不可、残業可
・<4hW>非正規社員/4時間のハーフタイム労働…副業可、残業不可

というシンプルな労働体制に分けたらどうかなと思います。
この改善案では、フルタイム労働者(8hW)が必要な事業では正社員として雇用するため、ハーフタイム労働者(4hW)を24時間以内に連続して働かせることはできません。
8hWは正社員なので副業を不可として統一するかわりに賞与対象です。
雇用形態が引き継がれるので、残業などの扱いは現状通りです。
4hWは交代制になるので、残業は不可、副業OKです。
派遣労働者やパート・アルバイト、時短労働者等はすべて4hWになります。
フルタイム労働が必要なら正社員として雇用しなければならず、それ以外は非正規社員という扱いになるような感じです。
裁量労働制は一定時間働いたとみなす「みなし労働」なので8hWです。
非正規の労働時間を1社につき4時間以下と固定する以外は、本来あるべき雇用形態に正すということです。

■ ハーフタイム労働で何が変わる?

午前中はオフィスワーク、午後は音楽活動やクリエイター活動、といった生活も可能

8・4 hour workday system(8・4hW)
・労働負担の軽減。重労働でも4時間ならできる人が増えるかも?
・午前と午後で違う仕事をして、心身の負担を軽減。
・所属先を複数持つことで人間関係の負担を軽減。
・人によっては居場所も職種も問わない多様な生活が可能になる。
・雇用に流動性が生まれるので、離職も再就職もしやすくなる。
・複数の仕事を持つことで、セーフティーネットになる。
・失業率が下がるので、社会保障支出が減る。
・家庭での育児時間が増え、待機児童問題が解決。
・職場に気を使わずに柔軟な生活スタイルを選べるようになる。
・労働時間が4時間以下と決まっているので学業と労働を両立しやすい。

非正規の労働時間を4時間にするのは、労働負担を軽減するためです。
エッセンシャルワーカーなどハードな仕事でも、4時間ならできるという人はいると思います。
デジタル化しにくい分野の労働者を増やさないといけないので、ひとりあたりの労働負担を軽減した方が良いと思います。

複数の仕事を持つことで、リストラや人間関係に対するリスクを軽減できますし、ダブルワークによって失業保険の対象件数が減るので社会保障支出も減ります。

1日を決まった仕事に費やさなくても良くなるので、昼は事務職をして、夜は音楽活動をするとか、午前と午後で全く違う分野の仕事をするなど、多様な生き方ができます。

出社時間がズレるので、通勤ラッシュが楽になる可能性があります。
空いてる時間帯に出社できればベビーカー乗車も問題になりにくいです。
産休・育休は原職復帰となっていますが、4hWで復帰すれば(時短労働)、休職中に4hWの人を補填することで同僚への負担が減ると共に、復帰後にそのまま雇い続けやすくなります。

時短労働者は6時間という中途半端な労働時間設定になっているため、給与の減額幅に対して仕事量はそれほど減らなかったりします。
残業が発生すると保育士の連鎖残業も起りやすくなります。

莫大な税金をかけて保育所などを増設してきましたが、4hWなら増設や増員などに関する投資の多くは必要なかったと思います。
現在子供を預けている時間の半分を親が面倒みることになるからです。
子供を預ける時間がズレるので待機児童問題も軽減します。

既に増税をして無償化してしまっているので、3歳以上の子供がいる家庭だと6時間労働の方が収入面では得なケースもありますが、実質的に税金で給与補償を行っているのも同然なので是正した方が良いです。
幾度となく行われてきた無駄な公共事業が繰り返されてしまったということで、そのせいで増税しなければいけなくなっています。
だったら、最初から4hWにして2時間分の所得保障をする方が大幅に支出を抑制できたと思います。

4hWなら育休も完全休業である必要はなくなるので、男性も育児参加しやすくなりますし、女性間の取得率の格差も改善しやすくなります。
正社員では取得率7割を超えるのに対し、非正規社員の取得率は2割です。
男性社会の中で女性の権利をどう守るかという視点で法整備されていますが、同性間の待遇格差も考慮しないと正しく機能しません。

また、4hWなら雇用に流動性が生まれるので、8hWの派遣を禁止しても、派遣会社は仕事がなくなるわけではありません。
本来、派遣制度は流動性がないと成立しないシステムですが、現在は正社員と同じフルタイム労働者として契約しているため、派遣社員を選択するメリットが小さくなっています。
しかも正社員登用の際にトラブルが多く、派遣会社が派遣先に対して正社員登用時に手数料を求めるなど悪質なケースもあります。

4hWなら企業も人の補填がしやすくなり、労働者も仕事を見つけやすくなります。未経験者を雇いやすくなるので、社会復帰もしやすくなります。

■ 勤務日を減らすのとどちらが良いか

4・8hWと併用できる仕組みなので、どちらかではなく、どちらも導入された方が良いと思います。

◆格差を広げている原因は「時給」

4hWを増やすには、最低時給をあげた方が良いと思います。
基本給という仕組みがマッチしないケースもあるので、正社員として働いた時と同額程度の時給が必要です。
時給が2000円になれば、22日計算で1社4hWで月収17万円。
現在はここから所得税や保険料などが引かれて手取14万円くらいです。
正社員の平均時給に近い2500円なら月収22万円、手取18万円。
2社で働くなら、月収が34~44万円、手取りで28~36万円です。

◆ 時給に差があるのはダブスタ?

2021年 賃金格差 厚生労働省

日本では労働時間=労働力です。
労働力は労働時間と釣り合っているとみなしているので、本当は職種によって時給に差はないはずです。
賃金に差をつけるなら、手当か労働時間で調整しなければいけないのだと思います。

たとえば、事務職の労働力が営業職の半分だと経営者が思うなら、事務所の労働時間を半分にして、その分の賃金を払うのが正当な雇用契約です。
仕事量は多くないが、人は配置しておきたい業務などもあると思いますが、時間給換算なので仕事量は関係ありません。
だから、待機命令分も給与が発生します。

物価が安いとか、地代が高いといった事情も時給が低い理由になりません。
ビジネスである以上、利益と経費(給与支出)はつり合いがとれているはずで、とれていなければ単に赤字になり、場合によっては倒産します。
倒産するものを低賃金労働者に支えさせるのは良くありません。

再就職しやすいなら解雇され易くても大した問題ではなく、解雇されにくいから再就職もしにくいという悪循環に陥っているので、雇用の流動性を確保するために、国内で短時間労働者を増やす必要があります。

「正社員を解雇しやすくすべきだ」という人もいますが、それだけでは単に失業率が上がり、増税されるだけです。
雇用の流動性やダブルワークがセーフティーネットとして働き、雇用と解雇がしやすくなるという順番でなければいけません。
8hWが前提なら労働者の権利が強いのは当たり前で、長時間労働が前提のまま解雇しやすくするのは最悪です。
これまで正社員の解雇をしやすくすべきだと主張してきた人達は、フルタイム労働を前提として言っていたので愚策です。

派遣社員の平均時給は1500円、最低時給は全国平均961円、東京都は1072円なので、わりあい差が小さい非正規内でも、雇用形態の違いで月に約7~8万円の差があります。
本来は時給ではなく労働時間で労働力を換算しなければいけないのに、労働力を推算して時給で差をつけているせいで、同じ時間働いても月収が大きく違ってしまっています。

米国だと平均時給は32ドル(1ドル130円なら4160円)、米マクドナルドの最低時給も22ドル(2860円)まで引き上げられるようになりました。
欧米では物価連動制をとる州などもあり、一定以上の物価上昇が起ると直ぐに最低時給が引き上げられます。
日本では同バイトの日中時給は高くて1200円ですが、物価が米国の4割と仮定しても1700円以下だと低すぎます。

労働時間=労働力だという原則を守るなら、日本の場合は、いっそ全ての雇用形態で時給を2000~2500円に固定してしまっても良い気がします。
個人の能力差は手当で調整するのが適切です。

時給2000円+手当とした場合、8hWの基本給相当は35万円、年間で420万円、手取で350万円+手当ということになるので、現在と大差ありません。

基本給が固定時給になっても、手当で現在の給与水準は維持されますが、赤字になった場合、手当から削ることになります。
現在でも同じですが、手当の割合を増やすことで削除優先度が上がります。
現在はこの負担を時給に差をつけて非正規労働者に負担させています。

◆ デメリットは?

現状の負の部分を改善する案なので、個人差以上のデメリットは多くないと思います。
今でもパートは4時間くらいを目処に働いているかもしれませんし、時短労働をこれから導入するハードルに比べれば、6時間を4時間にするのはそれほど難しいことではありません。

非正規の多くはパート・アルバイトなので、新たな負担というわけではありませんが、派遣社員や契約社員は4hWになるので、あちこちで働くのが面倒という人は、8hWへの切替え(正社員化)が必要です。

子育て支援は既に増税してまで色々とやっているので、損得でいえば、子供を保育所に任せて6時間労働したいと思う人もいるかもしれません。
本当は増税して手当を出す・施設を増設するという無駄な巨大コストを発生させる前に導入すべきだったと思います。
今後も増税予定なので、できれば今からでも是正した方が良いと思います。

交通費や雇用保険の会社負担は、国側が調整する必要があります。
交通費は支払い方法に関わらず、出勤日数にあわせて最低限の経費計上ができるようにした方が良く、それは今でも同じです。
また、雇用保険は加入条件があり、1社しか加入できないうえ、複数箇所で働いていると失業給付を受けられないこともあります。
被保険者番号で管理さているので、保険料の納付状況と確定申告で労働実態は分かりますが、個人事業主本人は加入できないなど、今でも問題のある部分なので、早急に改善すべきだと思います。

あと直接的ではありませんが、実態として、正規と非正規ではローンの組みやすさや賃貸契約のしやすさ等に違いがあります。
信用が値崩れしているなかで、差別的な実態だけが残っている状態なので、きちんと年収(収入証明書)だけで審査が行われ、支払いができる年収であれば契約できるようにするなどの法改正が必要です。
それにあわせ第三者が提出を求められる個人情報に制限を設けたり、連帯保証人制度を廃止すべきですが、廃止ではなく改悪されています。
選択肢のないものを公正証書化しても借り手に不利になるだけです。
事業用は限度額が設けられましたが、金銭の保証を第三者に行わせること自体に問題があります。
リスクは、保険や共済などを通して事業社・貸し手側が調整すべきです。


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