多幸感
「도대체 어디에 배치해야 되는 거야?(一体どこにすれば良いんだ?)」
しばらくの沈黙の後、ミンスが口を開いた。
何度聞いても思う。
彼の声は心地いい。
特に、英語を喋っている時のミンスの声が好きで、私は自分で編集した音声を、寝る前にASMR的な感覚で聴いたりしている。
見なくてもなんとなく分かる。
今、ミンスが背もたれにもたれ掛かるようにして、顎に少し手をあてて、座っている足を後ろに引いて、足首のところで組んでいることを。
本当にミンスが悩んでいる時、彼の体は後ろ側へ行く。
問題を俯瞰的に見つめようとするからだ。
逆に解決策が見つかった時、彼の体は前のめりになる。
問題解決に自信があるからだ。
そう、彼の声音で状況が理解出来るほどには、私はミンスを理解している。
反面、テヤンは私をハラハラさせる。
大事な撮影中なのに、突然トイレに足を運んだり、撮影中のオブジェに手を出してみたり。
今だって携帯電話を触っている。
届くかどうかは分からないが、私のアカウントだってcutterの中では大きい方である。
多くの人に反応されれば、彼の目にも届くかも知れない。
『やっぱり、「Burst up」はメインステージで踊って欲しいし盛り上がるから、終盤の方で花道とかエプロンステージとかトロッコで歌える曲の後に想いきり楽しませて欲しいな。』
私はそう投稿した。
投稿したと同時に、多くの人から反応を貰う。
3分後には海外のcutterからも反応を貰えるほどには、私のアカウントも大きくなっている。
テヤンの目も大きく開き、彼は沈黙を破るように口を開いた。
「오랜만에 마지막에 춤추고 즐기는 거 어때요?(久しぶりに最後に踊って楽しむのはどうですか?)」
テヤンの発言に、他のメンバーも口々に賛同している。
良かった。
私の投稿は無駄じゃなかった。
テヤンが見たものが私の呟きではないにしろ、韓国人の方にも反応を貰えてるし、韓国で似たような内容を投稿したcutterも多いだろう。
私は叔父から借りている方の携帯で、テヤンに『이심전심이네(以心伝心だね。)』と送った。
テヤンは私のメッセージに既読だけ付けると、携帯電話をポケットにしまった。
それだけで、この動画が現在同時刻で配信されていて、テヤンが私のメッセージを本当に読んだのだと実感する。
得も言われない多幸感に包まれる。
まぁ、若干面倒くさがってるように見えなくもなかったが、それでも、私は本当にテヤンと繋がっているのだと感じた。
他のcutterでは絶対に得られない感覚だ。
メンバー全員が拍手喝采し、いつものようにテヤンがカメラを手で覆い隠し、ライブ配信は幕を閉じた。
そして気付く。
せっかく作ったビビン麺が冷めきっていることに。
私はカップ麺を電子レンジに入れると、再加熱して食べることにした。
私の携帯電話の方にメッセージが届き、誰からかと思うとまさかの雪道君からメッセージが届いていた。
『圭さん、今日はお疲れ様でした。嫌なことがあれば良いこともあると言いますが、CUTのライブ配信見られましたか?』
雪道君のメッセージを見て、思い出した。
そうだ、今日、私にとって最悪の出来事があったはずだった。
それなのに、テヤンとのテレビ電話やCUTのファンミーティングの話し合いについての生配信があったおかげで、何事もなかったかのように晩御飯を食べれている。
『うん、見たよー!おかげで立ち直れた!』
私は雪道君にそう返した。
恐ろしいことに本当に立ち直れている。
昼間に両目を泣きはらしたことが嘘の様だった。
『それは良かったです!明日の出勤、変わりましょうか?』
彼はそう言ってすぐにレスポンスをくれた。
『大丈夫だよ!心配ありがとう!』
私も即座に返事を返す。
この心境なら大丈夫だ。
逆に、こんなに元気になったのに、明日の仕事を休むのも申し訳ない。
『了解です!無理しないでくださいね。』
雪道君はそうメッセージを残した後に、CUTのスタンプでミンスのスタンプを押してくれている。
私のことを気にかけてくれる人が居ることに安心する。
ありがたいなぁ、とも思う。
私もCUTのスタンプでありがとう、と送った。
テヤンから返事は来ないけれど、彼も忙しいのだと思う。
私は、この得も言われぬ多幸感を誰かと共有したくて、セリちゃんにDMを送ることにした。
『이번 셋리 기대하게 되지?(今回のセトリ期待しちゃわない?)』
私がそう送ると、セリちゃんからすぐに返信が来る。
『그렇죠!(そうですよね!)』
やはり、持つべきものはオタ友である。
『너무 기대돼!(すごく楽しみ!)』
『저도요(私もです)』
仲間からのレスポンスが早いと、よりテンションが上がる。
『세리야 또 만나고 싶어(セリちゃん、また、会いたいね。)』
私がそう送った後、セリちゃんから既読が付いたのに、返事は帰ってこなかった。
これから晩御飯でも食べるのだろうか?
私は携帯をテーブルに置き、お風呂を洗うことにした。
この調子なら明日も問題なく仕事に行ける、そう思っていた。
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