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チーム戦について思うこと

 チーム戦において思うことがあって、この記事を書く。最初思いついたきっかけが旗王戦のときだったので、それを半分なぞるように書く(タイトル画像はこれだというものが思いつかなかったので、やはり旗王戦から頂戴してきている)。
 2021年秋から2022年春頃にかけて、旗王戦という棋戦を戦った。チームによるペナントレースのような棋戦だ。そのルールに関して、今更ながら、少し書こうと思う。

◯旗王戦とは

 原案は、くりそら団長まじくりさんだったと思う。なんらかのチーム戦をできないかという企み。そこにハムさんの、野球のペナントレースをイメージした棋戦、大会をできないか、という企みが交差して実現した棋戦だったと思う。記憶ももう定かではないので、間違っていたら謝っちゃう。

 繰り返しになるが、チーム、団体での棋戦である。ハムさんの意向で、ホーム戦、アウェイ戦を設定する。当初決まっていたのは確かこれくらい。どこのプラットフォームでやる? 持ち時間は? そもそもチームのうち、どれだけの人数が実際に指すの? チーム戦って言ってるけど、どうなったら勝ちなの? 
 それら全ては、参戦表明した各団体の代表者の話し合いで決める。この話し合いのことを円卓会議と呼ぶ。

 この円卓会議によって、大半のルールが決められた。以下覚えているものを下に箇条書きで記す。

・参加チームは6チームで、それらで総当りのリーグ戦を行う。
・通常のリーグ戦と違い、各チームにホームとアウェイを設定する。
・そのため、同じ対戦カードがホーム・アウェイを逆にした、計2回行われる(チームAは、ホームA(アウェイB)で対B戦を行い、別日にアウェイA(ホームB)で対B戦を行う。これをチームCDEFにも行う)。
・ホーム側は自分たちに有利なルールをアウェイ側に強いることができる。
・今回に限っては、ホーム側がどこの対局場の、どのルールで対局するかを指定できる、というもの。なお。どこの対局場を使用するかは、円卓会議で宣言しているが、一部チームは使えるサービスの都合で都度設定であった。
・当日対局するのは各チーム3人vs3人である。メンバーは毎回変わっても良い。
・その際、その3人の合計段位が、81道場換算で九段以内に収まるようにすること。級位者はマイナス1で計算するものとする。
・対局日が決まったら、ホーム側がどこの将棋サイトを使うか、どの持ち時間を利用するかを宣言する(例えば24であれば早1、2、3、15分、30分から選べるし、ウォーズであれば10分、10秒、3切れから選べる、といったもの。一回の対戦カードで、それらが全て統一されていないくても良い。例えばウォーズを選んだチームの一人目は10分だけど二人目は10秒、三人目は3分、でも構わないし、全員10分でも良い)
・チーム内で調整を行う上で、上記の3人の合計段位が九段以内を守れない場合、外部に助っ人を頼んでもいい。これは事前に自チームに入れていなくても構わないし、他のチームに頼むのも構わない。ただし、同じ助っ人連続で呼ぶことはできない。
・選出した3人の順番は当日、ほぼ直前の発表であり、相手チーム誰それにこちらのこの人を当てる、ということは基本的にできない(順番を読み勝って当てることは当然あるが)
・緒戦で勝ち越したチームに勝ち点を計上し、その合計点で優勝を決める。複数チームが同点の場合、それぞれのカードの詳細を追って決める。あるいは同率優勝とする。
 
 まだ漏れがあるかもしれないけど、だいたい上記の通りである。一度にこれだけ見せられると引っかかるところもあるかもしれないが、実際に参加して見ると、特に困るところもなかった。こういう棋戦をやりたい! というハムさんのビジョンを、ある程度参加者全員で共有できていたからだと思う。
 最後の助っ人に関する取り決めが、結局円卓会議で決まったのか後日の調整時にそれぞれが納得の上でのことなのかが不明なこと。また参加者の棋力の基準を81としたが、81に垢を持っているものはそれを利用し、ないものは他のサービスから相対的にこれくらいだろうと割り出して当てはめたのだが、実際の棋力と81の表記がずれているものがいるのでは? という意見があり、都度微調整が入った。
 各々、納得のいかない部分はあったことと思うが、全ては主催者権限ということでハムさんの一存に委ねる形を取った。
 なお、案には上がったが実際には見送りになったホーム・アウェイ戦の有利不利について、「ホーム側はアウェイ側よりも3人の合計段位を高く設定できる」などもあった。次回以降に実現されれば楽しそうだ。

◯チーム戦について思うこと

 さて、旗王戦が閉幕したのは2022年4月。この記事を書くのは8月後半。なぜいまさらこのようなことを書くのか、だが、さめちょこにきの記事を見たことが大きな理由である。

 さめちょこにきのこちらの記事は、いろんな人に読んでもらいたい。わたしの記事を読む人はおそらくだけど、将棋Vに少なからず関係があったり興味があったりの人だと勝手に想像しているけど、そういうひと達がさらに楽しめるように、配信という形を活用した仕掛けを目指したものだ。ここから先は読まなくていいから、さめちょこにきの記事を読め。

 読んだ? その上でまだ活字に飢えてるひとは続きをどうぞ。
 さて。チーム戦。特に3vs3形式において思うことを述べていく。
 春秋戦国時代の斉の国に、孫臏という兵法家がいた。当時は兵法家とは呼んでいなかったそうだが。彼の逸話の一つに、競馬を催した当時の主人である田忌に、必勝策を与えて大儲けさせた、というものがある。
 この競馬は、馬3頭と馬3頭同士を競わせて、多く勝ったほうの勝ちというものであるらしく、見れば、馬は上中下の3頭がそれぞれいるということ。ならば相手の上にこちらの下を、相手の中にこちらの上を、そして相手の下にこちらの中を当てれば2勝1敗で勝つことができる。これが孫臏の与えた策であった。
 チーム戦において、チームが最終的に2勝1敗であれば勝ちである。そしてわたしも比較的この意識の強いほうであった。なので、わたしが所属した栗空団の裏番、渉外担当のまじくりさんにこれについて打診してみたところ、
「勝つのは大事だけど楽しむ上で、そういう負けること前提にする采配は、そこに割り当てられたひとも、ほんとに楽しめるのかな」
 という、お前いつからそんな聖人になった、と思わず言い返したくなるような言葉でもって窘められた。だってあのひと、すぐわたしを火炎瓶と称してあちこちに投げ込もうとすんねんもん。いや、わたしとしても都合がええねんけど。けどさ。
 これを受けて、わたしは少し考えることとなった。
 アジラトナ第二期についての記事で、どういうチーム構成が結局強いのか? という過去の記事も少し頭にひっかかったりもした。
 チーム戦の面白さは、各チームの戦力バランスがうまく取れていて、チームの勝敗が読めないことが大きいと思う。そして個々の対局に関しては、棋力差があると、見るぶんにはやはり勝敗はある程度予想してしまう上に結果も大半はその予想通りになってしまう。だからこそときどきある金星に盛り上がったりもするものだけど。
 ということで、そこに注目したというのが、今回の記事の主旨である。

旗王戦最終戦が2022/04/24。その約一週間前のやり取り。

◯チームの低段/級位者の勝利がチームに大きく貢献する

 上の図にある通りなのだが、再度一部を文章化することも含めて、わたしの考える案を示したい。やはり箇条書きで記す。

・チームの勝敗を勝ち/負け数ではなく、勝ち点基準とする。
・勝ち点は勝ったほうにのみ加算される。
・その勝ち点は、固定値ではなく、対局相手との棋力差によって決まる。
・多くのサービスが採用しているように、格下に勝っても大した勝ち点はもらえず、格上に勝てば多く貰える、レーティングに近いものを採用する。
・最終的な両者の勝ち点合計が同じ場合、別の基準でもって勝敗を決める。


 具体的な例を見てみる。
 チームの縛りは、3人の合計が九段以下であること。
 そして、勝った側は基本的に勝ち点2が加算されるが、相手との棋力差で、そこにボーナスがつく。
 勝った相手が、
・段級位が一つでも下の場合:ボーナスはなし。つまり勝ち点は2点。
・段級位が同じ場合    :ボーナスは1点。合計3点。
・段級位差が1上の場合  :ボーナスは2点。合計4点。
・段級位差が2上の場合  :ボーナスは3点。合計5点。
・段級位差が3以上上の場合:ボーナスは4点。合計6点。
 基準点に比較して、ボーナス点が多いようにも映るが、格下が格上に勝つ金星を点数として表現するなら、これくらいのバランスでいいように考える。
 チームAは、五段、三段、初段で構成されている。チームBは、四段、ニ段、1級で構成されている。単純に順番で当てたものとして、A五段ーB四段戦、A三段ーB二段戦、A初段ーB1級戦を想定する。この組み合わせの場合、事前の勝敗予想は、順当にいくならおそらくチームAの全勝である。しかし、同時にこのルールの場合、チームAがチームとして勝利する条件もまた、全勝しかないのである(チームAは相手が段級位が下のため、勝ってもそれぞれ2点。チームBは全員一つ上相手なので、誰かが一勝を上げれば4点。チームの合計勝ち点はどちらも4点となり、引き分けとなる)。


 上記のルールにおいては、実際の組み合わせが段位順にきれいに並ぶようなことはおそらくないので、点数計算が複雑、かつ面倒にはなるし、示した数値も思いつきのものなので、期待値計算をすればもっと厳密な数値になるかもしれない(そこまではしないと思うが)。
 また、最後のルール

・最終的な両者の勝ち点合計が同じ場合、別の基準でもって勝敗を決める。

 に関して、これをどう扱うかもキモになる。チームとしての総合力と見るなら、勝利数の多い方が勝ちでもちろんいいのだが、金星に主眼を置くなら、「参加した6人の中で一番段級位の低いものを擁するチームを勝ちとする(あるいは合計段級位が低い方を勝ちとする)」という基準を、勝利数よりも優先するものとして設定するなどはどうだろうか。

◯級位者に注目するということ

 厳正な全国大会には、チームごとのバランスなど存在する余地はなく、出せる限りの最大火力でもって相手チームをねじ伏せることが正解である。そのためには孫臏の策のように、相手の強者を自軍の弱者で空振りさせる作戦が当然基本戦術の一つになる。
 しかし、旗王戦筆頭に、お祭り要素の強い団体戦においては、参加してくれた級位者は、単に切り捨てられる存在ではなく、むしろ彼あるいは彼女あるいはそれ(一応無生物にも配慮している)の勝利こそがチームの勝利に一番貢献するのだ、というものであって欲しいという思いから、こういったルールを思いつくに至った。
 これを記事として出すのは、単純に、団体戦において捨て駒にされがちな比較的弱い層こそが、チームの勝敗の鍵となるルールがなにかないか、誰かこれを採用して棋戦を企画してくれないか、という思いからである。別にこの記事のルールである必要はないし、そんなことしなくても現状で楽しめる、低段・級位者も活躍できるというならそうなんだろうけど、そこになにか一石を投じられたら、という思いからのものである。
 誰かやってみてくんない?
 最後になるが、第二期旗王戦いつすんねん、とかは全く思ってないです。多分。多分ね。くりそら団は、誰の挑戦も拒まない。多分。まじくりさんならそう言うと思う。

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