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【読書記録】井伏鱒二全詩集

書籍情報

タイトル: 井伏鱒二全詩集
著者: 井伏鱒二
出版社: 岩波書店
出版日: 2004-07-16

読んだきっかけ

詩について調べているときに、おすすめの詩集として紹介されていたので、読んでみることにしました。

【詩のレッスン#1】気軽に詩を書き始めるには?   詩人の大崎清夏さんがお答えします。 | Column | 花椿 HANATSUBAKI | 資生堂

書籍の概要

井伏鱒二の、生涯の全詩作70篇を収めた書籍です。厄除け詩集・拾遺詩篇・付録(あとがき等)の三部構成になっています。

厄除け詩集は、いくつかの出版社から出版されている詩集です。厄除け詩集の名前は、井伏鱒二が厄にあったときに、厄除けのために散文を書いたことがもとになっています(付録より)。

感想

詩というと格調高かったり、抽象的で分かりにくいものがあるイメージだったのですが、井伏鱒二の詩は日常の出来事を描いた分かりやすいものが多くありました。

テーマとしているものには、近所の子供と話した、居酒屋に行った、釣りをしたなど、ささやかな出来事もあります。日記のような印象も受けました。言葉選びやリズムによって味わい深いものになるのだなと感じました。

中には「電車で目の前に座っている人の顎が外れた」「一緒に歩いていた友人が溝に落ちて泥まみれになった」など、思わずつられて笑ってしまうような内容のものもあり、面白く読めました。

大雅堂の主人
佐藤俊雄が溝に落ちた
——僕がうしろを振向くと
忽然として彼は消えてゐた——
やがて佐藤の呻き声がした
どろどろの汚水の溝であつた
彼は溝から這ひあがり
全くひどいですなあ
くさいなあと泣声を出した
それからしよんぼり立つてゐたが
ポケツトの溝泥を摑み出した
実にくさくて近寄れない
気の毒だとはいふものの
暫時は笑ひがとまらなかつた

厄除け詩集・春宵

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