加齢と記憶力の関係
脳の能力は20代をピークにして、30代から衰え始めていきます。記憶に関していえば、新しいことを覚える能力や、覚えていることを思い出す能力、ワーキングメモリの能力などが低下していきます。
何かを思い出そうとしたときに、喉まで(下の先まで)出かかっているのに思い出せない現象のことを、舌先現象と言います。「なんだっけ、ガから始まった気がするんだけど…」みたいなやつです。舌先現象は、40代頃から起こりやすくなるようです。
十分な睡眠、定期的な運動、脳を使うことなどによって、記憶力の低下の幅を小さくすることは可能です。同じ年齢でも、記憶力がしっかりしている人もいればそうでない人もいるのはこのためです。しかし、加齢による記憶力の低下は避けることはできません。歳を重ねて記憶力がしっかりしている人も、若いときと比較すれば衰えているでしょう。
ここまで、加齢によって記憶力が低下するという話をしましたが、歳を重ねても変わらないことや、むしろ前向きに捉えられることもあります。
記憶自体がなくなる訳ではない
歳を重ねても、記憶自体がなくなる訳ではないようです。記憶は脳に物理的な構造として存在しますが、これが老化によって破壊されることはないということです。
記憶は、陳述記憶と運動記憶の2種類に分けることができます。陳述記憶とは「〜について知っている」と言える記憶のことで、一般に記憶と言われた時に想像するものです。運動記憶は、自転車の乗り方になどの体の動かし方についての記憶です。
陳述記憶に関しては、老化によって思い出せなくなることは起こりやすくなりますが、答えを見れば思い出せます。運動記憶についても、筋力は衰えますが、歳をとって自転車の乗り方を忘れるというようなことはありません。
ポジティブな記憶が残りやすくなる
若い人と高齢者に対して、ポジティブな写真、ネガティブな写真、どちらでもない写真の3種類を見せて、どれくらい覚えられるかを調べた実験があります。
結果は、若い人の方が覚えた写真の枚数が多かったですが、その内容には違いがありました。若い人はポジティブな写真とネガティブな写真を同程度覚えていましたが、高齢者はポジティブな写真をネガティブな写真の2倍覚えていました。
つまり、歳を重ねると世界をポジティブに捉えられるようになるということです。この原因が、加齢による体の変化によるものか、人生の中で経験的に身につけたものなのかは分かりませんが、前向きな変化もあることは朗報でした。
参考
Remember 記憶の科学 12章 正常な老化現象
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