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日本語キーボード入力概論:PC編

Attention!
音声入力は扱いません。あとIMEの話もあんまりしません。

「:」→「ー」と、拗音入力での「G」キーの利用は、QWERTYローマ字入力を全く破壊しないので、全日本語キーボード入力者が導入すべき

という話をしています。


配列

おそらく読者の方の9割以上はQWERTYによるローマ字入力を利用されていると思います。また、平仮名(キーキャップにだいたい印刷されているアレ)で入力する方法もあります。こちらはいわゆる「かな入力」、正式には「JISかな」という配列です。

しかし、タイピングの速度が一定以上になると、これらの配列に不満を持ち始め(る人も稀にい)ます。

ローマ字だと、Aキーを貧弱な左手の小指に割り当ててるところとか、「きょう」とか「しょう」とかでyouは頻繁に出てくるのに3打も必要なこととか、そもそも拗音で超頻繁に出てくるYキーが人差し指を微妙に伸ばさないと届かない場所にあることとか。
JISかなだと、拗音に必要なShiftキーが小指なこととか、濁音キーが超右上の@に配置されてることとか。

ということで、ローマ字入力でもJISかなでもない独自配列が生み出されていきます。独自配列は本当にたくさんあり、選択用フローチャートも作成されているほどですが、ここでは、習得しやすい「AZIK」と、高度に最適化された「新下駄配列」を紹介します。

AZIK

ほぼQWERTYローマ字入力、でも打鍵数12%削減。

AZIKは、一般のローマ字入力のキー配列をそのままに、日本語によく出てくる文字列(読み)を2〜3ストロークで打てるようにし、さらに打ちにくいパターンの互換キーを提供するものです。

AZIK総合解説書

AZIKではQWERTYローマ字との互換性は保たれます(ほぼ)。つまり、AZIKが提供する拡張のうち、自分の使いたいものを好きなペースで導入できて、慣れてなくて疲れたらいつでもローマ字入力に戻れるということです。
以下、簡単に拡張の一部を紹介します。

  1. 「;」→「っ」
    連打、疲れる。

  2. 「:」→「ー」
    長音キーってそれなりに使うのに、目視しないとミスタイプする僻地に追いやられていて不憫すぎる。

  3. 拗音拡張
    「Y」キーに加えて「G」キーが拗音の入力に利用できるようになります。「ngu」で「にゅ」が打てます。
    「にゅ」って打ちにくくないですか?AZIKを知る前のわたしは「にゅ」「みゅ」を入力するたびに左手の人差し指を「Y」キーへと出張させていました。

  4. 撥音拡張
    子音に続けて入力する場合、「Z」(Aの下)に「ann」、「K」(Iの下)に「inn」、……が割り当てられます。「kz」で「かん」が打てます。

  5. 二重母音拡張
    子音に続けて入力する場合、各キーに以下の二重母音が割り当てられます。

    • 「Q」(Aの近く)に「ai」
      「kq」で「かい」が打てます。

    • 「H」(Uの近く)に「uu」
      「kh」で「くう」が打てます。

    • 「W」(Eの近く)に「ei」
      「kw」で「けい」が打てます。

    • 「P」(Oの近く)に「ou」
      「kp」で「こう」が打てます。

1~3の拡張は、打鍵数こそ変わらないものの、打ちやすさを大きく向上させます。特に、「:」→「ー」と、拗音入力での「G」キーの利用は、QWERTYローマ字入力を全く破壊しないので、全日本語キーボード入力者が導入すべきですいつかコロンが入力したくなるかも?「:」の読みを「ー」と登録すれば、「ー」の変換で「:」が出てきます。
また、4、5の拡張は直接的に打鍵数を削減してきます。日本語の特に漢語において、上記の撥音と二重母音は頻出するからです。たとえば「打鍵数」には、「けん」に撥音、「すう」に二重母音が含まれています。

導入方法については「実装」セクションへどうぞ。

新下駄配列

こちらはAZIKとは違ってかな入力系の配列となります。つまり、1アクション(単打または2キー同時打鍵)で1文字以上が入力できるということです。……50音(以上)を覚えられればね……

新下駄配列の配列図

……読み方を説明します。
この図は4枚分のキーボードの配列図からなっています。1枚目は単打。2枚目は反対の手の中指との同時打鍵。3枚目は反対の手の薬指との同時打鍵。4枚目の左側は左手側のキーと「I」キーとの同時打鍵、右側は左手側のキーと「O」キーとの同時打鍵です。

新下駄配列はあらゆる面で日本語の入力がしやすいように設計されています。
頻出の文字は単打で入力できますし、拗音も促音も濁音も1アクション2打以下で入力できます。また、薬指や小指といった弱い指には打鍵が集中しないように工夫されています。

わたしは今、(物理)モニタに上の画像を貼りながら4回目の習得チャレンジ中です。まだ入力スピードはそれほど出ないですが、入力の多くが単打で済ませられるうえ、拗音が一発で入力できるので、相当に楽だとは感じています。
あと1年ぐらいしたら立派な新下駄タイパーになっている……はず……

実装

おーけー配列が色々あることはわかった!じゃあ実際どうやって使うの?

Google日本語入力

上で紹介したAZIKと新下駄配列は、Google日本語入力(IMEのひとつ)の設定を変更することによって実装することができます。

AZIK編

まず、以下のファイルをダウンロードします。ただのテキストファイルです。

続いて、Google日本語入力のプロパディから、「ローマ字テーブル」の「編集」、「編集」から「インポート」、さっきのファイルを選択。
OKを連打すればあなたも無事にAZIKを使うことができます。

さすがにいきなりAZIKを導入するのは怖い、そんなあなたには「:」→「ー」と、拗音「G」キーのみのバージョンも用意しました。(拗音「G」キーは、k/s/n/h/b/p/mの後ろのみ)

使い始める前にAZIK総合解説書を読まれることをおすすめします。

新下駄配列編

こちらは同時打鍵を実装する都合上、AZIKよりは少々複雑な作業が必要になります。
ざっくりいうと、あるサイトで.dbファイルを作成&ダウンロードし、あるフォルダのconfig1.dbをそれに置き換え、Google日本語入力を再起動するという手順を踏みます。

詳しい手順は作者さんのサイトにて。

キーリマップソフトの利用(DvorakJなど)

新下駄配列自体は2010年に発表されたのですが、実はGoogle日本語入力で新下駄配列などの同時打ち配列が利用できるようになったのはつい最近、2022年のことでした。

また、より複雑なキーの組み合わせを用いる場合、例えばスペースキーをシフトとして利用したりする配列では、今でもGoogle日本語入力では利用できないものがあります。

そういった場合、配列の実装には、DvorakJに代表されるキーリマップソフトが利用されてきました。独自配列の発展はキーリマップソフトと共にあったと言っても過言ではありません。
……が、さすがに概論の範囲ではないので、これぐらいの紹介にとどめておきます。

さいごに

タイピング自体を練習して早くなるのを目指すのもいいですが、そもそもの配列をいじるのも面白いですよ。なにより「枠組み自体を疑ってる自分かっこいい~!」気分に浸れます。

以下、もっとたくさんの配列を知りたい方はどうぞ。

Google IME (ならびにmozc) で利用可能な配列 - GitHub
親指シフトよりいい方法が、少なくとも10個ある - 大岡俊彦の作品置き場
2019独自配列選択のためのてきとうフローチャート - ゲーム以外の雑記(井上明人)

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