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何も言わない

大体のことは事後報告している。
家族や親しい友人に、「途中」の姿を見せたくないからだ。

就職活動をしていたとき、どんな企業を受けているのか、今どれくらい選考が進んでいるかなど、誰にも話さなかった。大学に友人はいなかったし、家族は誰も聞いてこなかったのも話さずにいられた要因だとは思うが。
結果的に入社することになった会社からは、なぜか最終面接の最後にその場で内定を言い渡された。あ、後日とかじゃないんだ、と腑抜けた顔で会社を出て、駅に向かう道すがら母親に電話をして「決まったわ」と報告した。母親からしてみればどこの会社だよ、状態だったとは思うが、泣いて喜んでくれた。父親にはいつどうやって伝えたか覚えていない。そういえば伝えたっけな?

会社を辞めたときも、退職日も次の引っ越し先も次の仕事も決まった状態で母親に連絡した。きっともう、私の「口出しをさせない」という固い意志が伝わっているのだろう。頑固なのは随分前からバレている。

誰に何を言ったのかあまり覚えていないため、仲は良くてもなかなか会えない友人とか、家族だけど話す機会のない父親とか、言っていないことがたくさんあると思う。別に言わなくてもいいか、という気持ちと今更言うのも恥ずかしい、という気持ちが綯い交ぜになっている。
多分父親は、私が新卒で入った会社にまだ勤めていると思っているんじゃないかな。別にいいけど。


自分の身に降りかかることは、それがいくら突飛なことだとしても5秒くらい目を瞑って腕組みをすれば大抵受け止められる。うーん、どうしよう、まあしょうがないか、と目を開き、次の選択をする。
他人に「で、これからどうするの?」「今どんな状況なの?」の聞かれるのが嫌なのだ。誰に何を相談しようと、結局決めるのは自分で人の意見なんて聞き入れられないことなど初めから分かっている。

営業をやっていた頃は随分そのことで怒られたりしたけれど、自分の人生は自分が最高経営責任者なので逐一連絡も相談もしない。全部が片付いてから、一応私の人生を気にしてくれている人には報告をする。

要するにいつまでもプライドが高いのだ。実はそんなに平気じゃなくても、平気なフリをしてたいのだ。
心配されるのが好きではない。弱みを見せるのが恥ずかしい。

今も色々ゴタゴタしていることがあるけれど、水面下で進めている。
全部決まったら母親だけには言うかな。父親にはその過程を全部話すのが面倒だから多分言わない。


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