日本国憲法第六十八条
内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
2.内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。
28歳になった。歳を取ると時の流れが早く感じるというが、私は20代に入ってから一年一年が遅く感じるようになった。
朝起きて歯を磨き、朝食を食べて仕事に向かう。仕事を終え、帰宅し簡単な夕食を作り晩酌をする。録画をしたドラマを見ながら翌日の準備をし、床に就く。毎日同じことの繰り返し。明日も明後日もその次の日も、同じ時間を過ごすということが大人になるということだと知った。
学生時代の友人たちがどんどん結婚していく。部活帰りに鯛焼きを食べながら勉強や恋愛の話をしていたあの頃から10年経ち、居酒屋で子育てや保険の話をするようになった。見ている景色がいつの間にか変わっていた。
女性の社会進出が叫ばれるようになって久しい昨今。中学生の頃からすでに、「女子も働くのが当たり前」になっていた。私自身もそうなるのだと、信じて疑わなかった。
テレビに映る40代、50代の独身の女性は、力強く美しい。年齢を重ねてなお輝きを増し、憧れすら抱けないほど目見麗しい。あえて結婚する道を選ばず、強い意志を持って一人で堂々と歩いているように見えるのは私だけではないだろう。
大学に進学し、就職活動を行い、会社に入った。自分の力で稼ぎ、自立して生きてきた。普通に日々生活しているだけなのに、中学時代に想像していた姿になっているはずなのに、20代後半に突入したあたりから「結婚」の二文字が頭から離れない。
同世代の結婚ラッシュ。年齢の近い親戚に子どもが生まれた報告。自分の意志とは関係なく、突然ベルトコンベアに乗せられ焦らされているような気分になった。
専門性の高い特別な仕事をしているわけでもない。特別な才能も、特別な容姿も持っていない。おまけに確固たる意志を持って独身を貫いているわけでもない。
「どうして結婚しないの?」「結婚したくないの?」と言われても理由などなく、別に今じゃなくてもいいとか、そんなに焦ってしたくないとか、そんな曖昧な答えしか出せない。
ずっと独身でも別に構わないと思っているが、美しい独身の女優さんを見て、「こういう人でなければ独身でいることを許されないんだな」と思ってしまう。
「普通の人」は、結婚するのが普通。女性が社会進出するのが当たり前の世の中になっても、やっぱり結婚して出産するのが普通、という風潮も消えていない。独身でいるためには、「独身でいる理由」が求められる。義務教育を終え、高校に入る。大学に入り、就職するところまではみんなで足並みを揃えて歩いてきた。その先にある道は結婚出産。真っ直ぐ、普通に歩いていけば結婚に辿り着くでしょ?と誰からともなく言われている。
あと何年、このベルトコンベアに乗っていなければいけないのだろうか。ああ、一年が遅い。結婚適齢期の枠からいつまで経っても抜け出せない。
自分から降りることが許されるのは、特別な人だけ。なんとなく結婚していない、というだけで責められるのはもう疲れた。
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