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日本国憲法第六十三条

内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

ご多分に洩れずやっぱりバレンタインはまだ恥ずかしくて、すかしている訳ではないが特に何かしようという気はなかった。いや、恥ずかしいのとも違う。クリスマスもバレンタインもイベント自体を否定する気はないが、その日に‟なにかやる”というのが本当に面倒で、興味のない振りをしているのだ。

その日は仕事で、共に残業し同じ時間に上がれたため一緒に駅に向かった。新宿駅西口の地下にはゴディバがあり、人が大勢並んでいたら辞めようかと思ったがちらっと様子を伺うと予想に反して2,3人ほど店の前で商品を選んでいるだけだった。これで「買わない」理由の最終関門も突破してしまったため、ホーム方向に歩いていた足を90度回転させ、店に向かった。一瞬「?」という反応をした彼も黙ってついてきた。
商品一覧を持っていたお店のお姉さんに声をかけてそれを受け取り、「どれがいいですか?」と言って広げて見せた。「ああ、今日バレンタインか」と呟き、暫く手元を見つめていたが、「まあ、これでいいですかね?」とオーソドックスな詰め合わせを指さし無理矢理決定させた。
レジに向かい、これお願いしますと言ってクレジットカードをトレーに出した。彼はその様子を黙って隣で見ていた。「こういうの、目の前で会計するってやっぱりおかしいですよね?」と言ったのは照れ隠しだったのだと思う。
会計を終え紙袋を受け取り、その場で「はい」と言って手渡した。淡泊で何の味わいもないバレンタインデーだったが、これでもよくやった方だと自分を褒めている。

私は甘党だがチョコレートはそれほど好きではない。コンビニで買うアーモンドチョコやポッキーの方が美味しいと感じてしまうくらいにはお子ちゃまなので、高級チョコレートを貰っても申し訳ないと思ってしまう。美味しい、より高そう、という感想が先にくる。
それでも、これまでバレンタインに無縁だったわけではなく、高校生の頃は2月14日になると毎年必ず部活の後輩が教室のドアから顔を覗かせて「〇〇せんぱーい」と声をかけてきた。女子高だったため、どの女子がどの男子に渡す、というような青春ドキドキイベントではなく、可愛い後輩たちが好きな先輩の元に手作りのお菓子を渡しに行くのが恒例になっていた。自他ともに認める「同性にモテる」タイプの私は、毎年この日になるとたくさんのお菓子を抱えて帰宅した。因みにいつどこのコミュニティでこの話をしても「でしょうね」と納得される。

今書いていて気付いたが、黙って店に向かって突然「何がいい?」と選ばせ、さらっとお会計をする、というのは所謂イケメンがする行動なのかも知れない。運よく今年は女子高のような環境下ではなく異性でのバレンタインを過ごしたが、根本の人間性は高校生の頃からきっと変わっておらず「同性にモテる」タイプの女子なのだろう。小さなカバンの中から「実は…」と言って顔を赤らめながら、可愛らしい包みを渡すといった行動は、多分一生できない。今の時代でも、こんな典型的な女子が求められるのかどうかは定かではないが。

ところでせっかく買ったゴディバのチョコレートを私の家に置きっぱなしにした彼を責めてもいいですか?

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