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日本国憲法第七十条

内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。

何もなかった訳ではない。ただ生活に追われて単純に時間が取れなかった。

平日も出勤できるようになり、慌ただしい日々が続いている。ずっと土日祝しか出勤していなかったため、平日にしか出勤しない社員と会うのは約3ヶ月ぶりだった。彼女の一挙手一投足に腹を立てていても仕方がないため、もう無視をすることにしたが、ああそういえばこんな感じだったなあと溜息が出た。
彼女と会わないのを良いことに、私の傍若無人っぷりも順調に加速していた。これまで“イチ派遣社員”を掲げ、良くも悪くも一歩引いていた。口も出さない代わりに責任も持たない。給料だってたかが知れているんだから、それに見合った仕事をしていようと思っていた。
だけどもう、そんなことを言っていても仕方がないと思うようになった。困るのは自分と現場だ。彼女が何もしないなら私がやると、無駄に張り切ってみることにした。
私の業務範囲からはゆうに超えている。私の仕事ではないことは分かっている。出しゃばりかも知れない。だけど。

今日、一人の子が全員が見られるチャットに「お客さんが怒っています」と電話対応中に書き込んでいた。ちょうど私も他の電話に出ていたため、彼女に目配せをすると“どうしましょう…”というような困った顔をしていた。急いで自分の対応を終わらせ、彼女の元に駆けつけ電話を代わった。たしかにお客さんは怒っており、手のつけられない状態だった。
「申し訳ございません」と「失礼致しました」を繰り返し、なんとか宥め、なぜか終いには「ありがとう。あなたは良い人だ」とお褒めの言葉をいただいた。
最初の子の対応が悪かった訳では決してない。私より歴がある頼りになるメンバーの一人で、お客さんがただのクレーマーだっただけだ。
だけど、困っていることに変わりはなく、誰かが代わらざるを得ない状況だった。そんなことは日常茶飯事だが、これまでは気付いても私が出る幕ではないと思い、どうしても誰も対応できないとき以外は見過ごしていた。

今日だってもしかしたら、放っておけば誰かが彼女の対応を代わったかも知れない。私じゃなくても良かったかも知れない。でも、そんなこと考えている場合ではないと思った。
私も以前に比べ自分で判断できることが増えた。ここまできたらもう、管轄外のところまで手を出してやる。召集は掛からなくとも、いつだって私はみんなの元に駆けつける。



新学期のオリエンテーションがあった。いよいよ最終学年。そして受験生。さらに就活生。学生生活も残り一年を切ったが、大変なことがたくさん詰まっている。
そんな中、やっぱり仕事は楽に承認欲求を満たせる時間であり空間なのだ。黙々と勉強するのは根気がいる。何ヶ月も先の試験に向けて、コツコツと知識を積み上げるのは精神力が求められる。自分と自分の将来と向き合い、目標に向かっていくのはやっぱりしんどいこともあるだろう。

一方仕事はどうだ。
決して自分が求められているとも、私じゃなきゃダメだとも思っていない。だけど、一応契約は更新し続けてもらい、出勤すれば仕事があり、月末には給料が振り込まれている。仕事も大変だが、それなりに満たされて一日が終わる。
終わりのない試験勉強より、仕事終わりの帰り道の方が、同じ労力でも気持ちが違う。やり切った、頑張った、と思える。
お金の面でもそうだが、多分この一年は精神的な息抜きのために働くことになると思う。物理的にしんどいことも増えてくるだろうが、うまくやりくりして仕事と勉強を両立させたい。実習も就活もあるからどこまで働けるか分からないけれど。

本当に、本当に短かった春休みが終わり明日から新学期。相変わらずオンライン授業だけど、少しずつまたゴールに向かって歩き始める。

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