『燃え尽きケア』~持続可能なやさしさを紡ぐ~
「どいつもこいつも」って、イライラすることはないですか。私は、ものすごく疲れていたり弱っていたり自分に厳しすぎたりするときに、その傾向があります。自分ばかりが貧乏くじを引いているようで、やっとられん。そうかといって、頑張ることを善とする舞台から、そんな簡単には降りられないんだよってときの、持続可能なやさしさの紡ぎ方。
1.燃え尽き予備軍
人の支えになりたいというやさしさで、いい仕事をしたいという誇り高き思いで、懸命にやってきた。もうすでに、長いことつま先立ちでやってきた。
なのに、どこまでも無理を強いられる気がして、なんだかイライラする。
どうしてあの子は、笑って喋っていられるの。どうしてあの人は、座って寛いでいられるの。私がこんなに無理をしているのに。
「どいつもこいつも」などと、舌打ちをしたくなっているあなた。燃え尽き予備軍に片足を突っ込んでいるかも。
2.思い当たることはありませんか
□人に合わせ過ぎる
□気を遣いすぎる
□言いたいことを飲みこむ
□ノーと言えない
□人を優先してばかり
□仕事を抱え込む
□自分に感謝しない
□自分に敬意を払わない
□自分をねぎらわない
□やりたいことを我慢する
□時間に追われている
□トイレを我慢する
□ご飯をろくに食べてない
□睡眠時間が足りない
一個でもチェックがついたら、注意ですよ。たったひとつと思うでしょうけれど、常態化するとすると心身が悲鳴をあげます。
私たちには、自尊心と回復力が壊死する前に、怒りによってその力を蘇生させようというプログラムが備わっているように感じます。
心身共に弱りきってしまうと、回復にも時間がかかってしまう。ぷんすかエネルギーが出ているうちは、まだなんとかなります。今のうちに、なんらかのケアを。
すぐにできるケアとしては、なんともいえない憎悪に気づいたとき、いったん自分ファーストに意識を切り替えること。
3.自分ファーストのやりかた
□睡眠、排泄、飲食の欲求を満たす
□頼まれごとや約束を断って自分の時間を作る
□誰かに、手伝ってと頼む
□自分に、ありがとうと言う
□自分を、えらいぞと褒める
□自分を、ご苦労さまとねぎらう
□5分でもいいから、心からやりたいことをする
□思っていることを書き出す。もしくは誰かに話す。
必要であれば関係者に伝える、確認する。
(個人的な問題を越えた構造的な問題の場合は、同じ立場、同じ思いの人とつながり、声をあげていくことも必要かと思います)
あたりまえのことを、あたりまえに。
イライラするときは、人としてあたりまえの権利が侵されていることが多いものです。
3.孤独な援助職
個人的には、食事や排泄を我慢するのは、実に精神衛生上よくないと思います。
昔々の援助職の同僚は、トイレや食事を我慢しがち。いつもイライラして喧嘩腰。飯を食ってトイレにいき、夜は眠るひまのある(?)他の同僚らを、蔑みのまなざしで一瞥。
『ぼーっとしてんじゃねーよ。能なしの群れめ』的な、近寄りがたいエネルギーを放っていたのでした。
いやいや、自分の生存欲求を満たさずして人のために頑張りつづけるのは無理なこと。あんまり意地張ってると、燃え尽きちまう。
その同僚、じつは人一倍、生真面目な人。
人一倍、高いパフォーマンスを心がける人。
そんな人材が、援助職としての寿命を削っていくのをただ見ているだけというのは、とても切なかった。
お願いだから。
我慢しないでトイレに行って。
少し休んで食事を楽しんで。
しんどいって、認めちゃえ。
寂しいって、こぼしてみちゃえ。
助けてって、言ってみちゃえ。
これは、自分自身にも言い聞かせていること。けっこう根を詰めてやりすぎる傾向があるので、意識してブレーキ&ブレイクを心がけています。
いくら頑張りつづけたくても、なんせ人間だから。息継ぎも、充電も、栄養補給も必要です。
AIでもない、肉体をもたない大いなる存在とかでもない、弱みや脆さや生命の限りを内包する人間だからこそ、震えるほどの共感が生まれる瞬間があるというもの。
4.あなたがあなたを大事にすると、多くの人が救われる
援助職は、とくにこのご時世、無理を強いられます。
息をするのも忘れて、誰かのために奔走しています。
それでも世の中に、心地よいパフォーマンスがめぐり続けるように。人が人らしくいられるように。
援助職同士が、気軽でありながら深く支え合えるような仕組みづくりができたらと常々思っています。
援助職の方々だけでなく、サービス業の方々や、お父さん、お母さんも、日々の営みが感情労働。
あなたが繰り出す滋味あふれるパフォーマンスを待っている人がいるわけです。
いい仕事をするために。息の長い活動をするために。
人にやさしくもけっこうですが、自分にもやさしく。
なにとぞ。
「どんなことでも、なんとかなる」「なにごとにも意味があり、学ぶことができる」という考え方をベースに、人の心に橋をかける言葉を紡いでいきます。サポートいただいた場合は、援助職をサポートする活動に使わせていただきます。