見出し画像

良いところ探し

モヤモヤは続いて一週間。
昨日は大学の同期たちと休み時間にたくさんだべって、少し自分の状況に対して客観的になれた。客観的になれたと同時に、何か自分の中のタガが外れたようだ。恋人の良いところ、好きなところが、今朝は考えてみても思いつかなかった。

同期たちと話題になったのは、とある共通の知人の話だ。知人は学校の一つ上の先輩で、一時期同じバイトをしていた関係で人となりはある程度知っていた。少し天然っぽいというか、自分の考えと他人の考えがはっきり分かれているタイプで、見た目はかわいらしく仕事もできる。その天然っぽいところ含めて面白くて、結構好ましいと私は思っていた。しかし友人の見立てでは、「そういうのは全部計算でやっていて、自分に好意を持った人間に近づいて狂わせるタイプの女の子」だという。実際、彼女に狂わされた男性を知っているらしい。そんな話をして、私はいわゆる「人を狂わせる女」にまんまと狂わされやすいのではないかと気づいた。

確かに、恋人は元カノを狂わせていた。私はそれを知っていたし、「私は狂わされない」という気持ちと「狂わされてみたい」という気持ちを両方持ったまま恋愛関係に踏み切った。恋人のことを「狂わせ」だとは認識していたが、自分が狂わされやすいということは全く思っていなかったのだ。

つまり、友人との会話によって、自分と恋人の関係が「人を狂わせる女とまんまと狂わされた人」に当てはまっているということに気づいたのだった。

「狂わせ」は、まず、自分に好意を持っていそうな人をロックオンする。そして思わせぶりな態度でからめとって、相手を振り回し、どこまでついてこれるか試す。そこで疑われたりして面倒になったら、さっと手を離す。ここが第一の切れ目。もしもついてこれる相手でも、飽きたら手放す。ここが第二の切れ目だ。そして、もしも新しく自分に好意を持つ人物が現れたら、そちらに乗り換える。それが第三の切れ目。

聞いていて耳が痛すぎた。恋人は完全に「狂わせ」である、それも精神が未熟で厄介な。友人は私と恋人の関係を知らない。(恋人も大学の同期である。)しかし私が恋人のことを気に入っていて、他の人よりも特別仲良くしていることは友人も知っていることだ。おそらく友人は、恋人が「狂わせ」であることをわかっているだろうし、私がそうやって突っ込んで聞いてくるのは恋人への対応に困っているからだろうと察している。

友人が使った「切れ目」という言葉が、妙に耳に残る。いつか捨てられるならこちらから捨てる。恋人はプライドがとにかく高いので、私から「別れてほしい」と言われるなんて絶対に避けたいだろうし、私の今までの態度からそうなることはないと思っているだろう。それでいきなり振るなんて、薄情が過ぎるし、あんまりな裏切りかもしれない。

私はずっと、恋人はかわいそうな人だと思って接してきた。容姿のことなど自分への自信のなさをあまりにもアピールするので、欲しい言葉をかけてあげよう、と思った。そうすることでこの子が自分に自信を持って生きていけたらいいなという、完全なおせっかいだ。私は容姿は良くないが、自分の母が「あんたは可愛い、大丈夫」と何度も言ってくれたことが救いになっている。同じやり方で、与えてくれた愛を周りにも分け与えようという気持ちだった。実際に恋人は服装が変わった。友達が増えた。だから私は嬉しかった。だけど、自分に何も帰ってこないことに気が付いた。恋人と過ごす時間は楽しくて、安心できた。それでも、自分は何も変わらなかった。多少人にやさしくすることは覚えた。いや、最初から、「この子と付き合ったら弱い人間への理解が深まってより優しい人間になれるだろう」と思っていた。それだけが私にとってのメリットだった。でもそんなのエゴでしかなかった。結果、優しい人間にはなれなかった。それはただ、好意を利用されていただけだった。

恋人は、自分が「狂わせ」であること自体は伝えてくれていた。「違う人があらわれたら、ふらっと行っちゃうと思う」と言っていた。私はそれでも、「今ここにいてくれたらいい」と答えた。しかし、本当は違った。私は、それを私を大切にしてくれないということだと考える。本当は大切にしてほしかったし、愛してほしかった。返してほしかった。

今朝、歩きながらふと、彼女の良いところをあげようとしてみた。1つも思い浮かばなかった。思い浮かぶのは悪いことばかり、脳内で罵倒。
ひとしきり脳内で恋人をなじって、今やっと思い浮かんだ恋人の良いところは、素直なことと品があること。しかし、私が素直だと感じていても、はたから見たら計算なんだろうか。

私と違うままでいてくれるところも好きだった。好きだけど、違うままなのがつらくもあった。やっぱり、友達のままの方が良かったのかもしれない。恋人になったことは間違いだったのかもしれない。

私は恋人にエゴを押し付けた。恋人は私を利用した。ただそれだけの関係だったんだろう。きっともうすぐに破綻する。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?