「神の一手」を探して(3)
前回は将棋の神さまにインタビューしたものの、将棋の神さまは万能すぎて「瞬時に全探索できるため、その局面の結論が分かる」、またそのため「形勢という考え方がない」ということが分かりました。このシリーズの目的は「形勢とは何か」「最善手とは何か」突き詰めること。このままでは引き下がれません。インタビューを続けましょう(といっても逆に質問されてますが)。
神 (続き)そもそも「形勢」とは何なのだ?先手あるいは後手が「十分」「優勢」とはどういう意味か。
――えーと、例えば次の局面をみてください。
――この局面は第85期棋聖戦五番勝負[森内竜王-羽生棋聖]で現われました。この局面は「後手十分」とみられています。
神 それで?
――この局面を踏まえて、次の局面を見てください。
――先手の銀が後手の持ち駒になりました。
神 バカなことを考えるなあ。
――恐れ入ります。先ほどは「後手十分」でしたが、先手の銀が後手に渡ったため「後手優勢」です。このように、「駒の損得」「駒の働き」「玉形の堅さ」などを判断基準として、先手・後手がどのくらい勝っているか・負けているか、その程度を表すものを「形勢」といっています。
神 お前の言わんとするところは分かった。
――やった!(太字にした甲斐があった!)
神 しかしだな、形勢なんてものは存在しないのだ。全探索をすれば2つの局面の結論は「後手勝ち」であり、そこに程度の差などない。
――し、しかし、先ほどの図と明らかに差があるでしょ!銀一枚違うんだから!
神 そうだな、差があるとすれば、2つの局面から全探索をしたときの最終図での後手勝ち数/全通り数ぐらいだな。これは大きく違う。
――それだ!
さて、神さまに「形勢」を説明しようと試みましたが上手くいきません。最後に打開策が見えた気がしますが、果たしてどうなるでしょうか(笑) 次回もインタビューをしつこく続けたいと思います。
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