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vol.01 二つ折りの恋文 【手紙の助け舟】

こんにちは。
喫茶手紙寺分室の田丸有子です。
桜もそうでしたが、今年は全国的に花の季節がいつもより早く訪れているようですね。ベランダで去年から育てているホオズキの花が早くも可憐な姿を見せてくれています。春から初夏へ移り変わる季節、みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

オオキバナカタバミという花をご存知ですか? 名前の通り、カタバミを少し大きくしたような花です。鮮やかなレモン色の花が群生して咲く様子は、薄暗くなってからでもきっとその場を照らすのではないかと思うほど光り輝いて見えます。

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散歩中に私はそのオオキバナカタバミがお花畑になっている場所を発見しました。その時の気持ちをどう表現したら良いものか。なんとも言えず胸が震えた瞬間でした。

植物に詳しい友人がこんなことを言っていました。
暗くなるとオオキバナカタバミは、そのハート形の三つ葉を折り畳むようにして眠りにつくのだそうです。その様子がジュール・ルナールの『博物誌』に出てくる

「二つ折りの恋文が 花の番地を探してる」

という一節を思い出させるのだと。
この一節は蝶がひらひらと飛んでいる様子を表していますが、オオキバナカタバミの葉が折り畳まれる様子にもこの言葉を重ね合わせている友人の感性に私は深く感じ入ったのでした。

それは私にとって思いがけない贈り物でした。以来、想像力を掻き立てるルナールの言葉は私が手紙を折り畳むたびに脳裏に浮かんでくるようになったからです。薄暮にレモン色の花が朧げに光を放つあのお花畑を1匹の蝶が恋文を運んでいる姿と一緒に。


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田丸有子(たまる・ゆうこ)|喫茶手紙寺分室 note ライター
手紙文化振興協会認定 手紙の書き方コンサルタント
子供の頃から「手紙魔」と呼ばれるほどの文通好き。
切手に描かれている美術品や絵画の実物を鑑賞するための美術館巡りが趣味。目下ステイホームで始めたベランダガーデニングに夢中。
blog:  CORDIALLY YOURS 手紙魔の手紙物語 


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