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【エッセイ】甘い匂いに誘われた私は

もう十月だというのに何だか暑い。私の部屋にはまだ蚊が出るし、先週はスズメバチも見かけた。一方で柿がスーパーに並べられたり、クリや松ぼっくりが林に落ちている。今年の十月は夏と秋がハイブリットしてるような気がする。誰かが
「はい、今日で夏終了!蚊、蜂、死んで!それでは明日から秋始めます!鈴虫、鳴いて!」
と指図して季節が変わるわけではないのでハイブリットする時期があるのは当たり前っちゃ当たり前か。コンピュータの勉強ばかりやってるからかもしれないが、零と一の間があるのが妙な違和感を覚えてしまう。

夏から秋にかけてよく見かける虫は?と聞かれたら私は迷わず
「ゴキブリ!」
と言う。大抵の人はアイツが嫌いでゴキブリを見るだけで、人間が本来持っていたけれど経済発展と共に忘れ去られていた「殺意」が芽生える。犬や猫は可愛がる癖に、ゴキブリにだけどうしてあんなに殺意を向けてしまうのか。やはり人間って奥深い。

かく言う私も、ゴキブリに対してそこはかとない「殺意」を向ける。母がよく置くだけタイプの殺虫剤を買ってくるが、安物なのかそれを食べて死んでいるゴキブリを見たことが無い。そこで、私の場合は「ゴキブリホイホイ」を購入し、ちゃんとホイホイの中でゴキブリが死んでいるのを確認して安心する。やっぱり金をかけたからには効果がある薬を購入したい。

私にとって「甘い匂いに誘われた」のは「カブトムシ」ではなく「ゴキブリ」だ。ゴキブリホイホイの甘い匂いに誘われて我慢できずにホイホイさせるゴキブリ達を私は何度も見送った。段々ゴキブリ達も学習するのか、私がホイホイを置いた直後は警戒してホイホイの中に入らないが、数日経つと確実にホイホイされている。ホイホイ恐るべし。家の中ばかり生活していると、甘い匂いに誘われる」のは「ゴキブリ」のような「愚か者」のことだと私は考えてしまう。しかし、これが「カブトムシ」になるだけで急に情緒的になってしまうのが不思議だ。少なくとも、今の私には「カブトムシ」が「甘い匂いに誘われる」という感覚を持ち合わせていない。都会ばかり住んでいると、こうした感性が失われてしまうのが不味いんだろうな。

今日も暑かったからアイス食べよう。甘い匂いに誘われた私はゴキブリ。

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