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【エッセイ】月食

今宵は「ほぼ皆既月食」。我が眼でここまで綺麗に隠れる月食が見られる日が来るなんて。

・・・と言いたいところだが、当たり前のように街灯のある私の街で月食を見ても「ふーん、月食やってんのね。」と数あるニュースの一つとして消化してしまう。街の明るさが邪魔をして本来あるべき真っ暗な夜の闇にならない。

そもそも私達は夜の闇を恐れて街の明かりを灯しているのだから、本来月食になったら恐怖を感じるものなのかもしれない。多分私はこの「恐怖」を感じられない事にもどかしさを覚えてるのかもしれない。

それでも父が、
「おい、月食だぞ!見ないのか!」
と言ってくる。とりあえず双眼鏡持って見物してやろうじゃないか。外に出ると何とも見たことのない微妙な薄さの月が見える。私は双眼鏡で月を確認すると、ボンヤリと真円を描きながら右側だけほんの微かに光り輝く月が見えた。下記の大喜利に近い状態だった。

シーチキン目線で月食を見ると、先祖代々恐れてきたはずの暗闇の中に
「おお、神よ!」
と救世主か何かの光に見える。ボンヤリ光る感じが正に「後光を指す」という表現に近いものがある。

昔の月食は暗闇を導くもの、現代の月食は笑いの種。やっぱり現代の方が安心して見れて良い。

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