見出し画像

【エッセイ】最後の一個

今朝カラスが来た。庭には柿の木があるのだが、その最後の一個を狙いに来ていた。

実は先月もカラスは庭に来ていた。先月柿の木は今年の中で全盛だったため、沢山の柿がなっていた。その柿を狙いに来ていたのだが、家の中から私がジーッと監視している。その視線に気付いたのか、カラスは何も取らずに退散した。

もしかするとあの日と同じカラスだろうか。今回こそは食べてやろうと、少しずつジリジリと最後の一個に近づいていく。その様子を私はまた家の中から監視した。食べるんじゃねえぞ、と思いながら。

しかし、今回カラスは最後の一個を突いた。美味かったからかもしれないが、突いた衝撃で柿が取れてしまう。その取れた柿をカラスは口でキャッチした。私の目力だけでは今回何の脅しにもならなかったようだ。

もしかすると、前回来た時はあくまで偵察だったのかもしれない。柿が一杯ある内は、確実に人間に邪魔をされるのでとりあえず場所と位置だけ確認して、柿が少なくなってから食べに来ようとしていたのかも。カラスは知恵が回るからあり得る。

そうだとすると、私の目力なんか何とも阿呆らしい監視だ。所詮目で訴えて分かってくれる事なんて人間同士でもあまり無い。冷静に振り返ると何をしてるんだろう、と思う。

こうして最後の一個はカラスに食べられた訳だが、実は別に良い。元々小鳥に多少食べられてたし、最後の一個は自然に返すと決めていたからだ。人間ばかり得をするような行動をしてると、いつか足元を掬われる。何事もバランスが大事だと思う。

よろしければサポートお願いします!