【エッセイ】母が習慣にしていること
学生時代、僕は母に「お弁当作らなくて良いよ。」と言った。理由は周りの友達が食堂で食べていて、自分だけお弁当を作ってもらうのが恥ずかしくなったからだ。
それもあるけど、それだけじゃなかった。
僕は中学から高校時代にかけて毎朝6時30分の電車に乗って通学していた。母は弁当と朝ご飯を作るため、毎朝5時30分に起きていた。それが何だか申し訳なく思った。自分なんかにそれ程の価値があるとは思えなかった。
母はその日から弁当を作らなくなった。しかし、朝5時30分に起きて朝ご飯を作るのを辞めなかった。
★★★
私は大学を卒業し社会人になった。私は一人暮らしをしていた寮を出て実家に戻っていた。
5時30分起床では無いが、未だに母は朝昼晩ごはんを作っていた。
私は流石に自立した方が良いと思い、母も歳を取って昔ほど体力は無くなってきたはずだった。
私は母に「休日くらい自分の分は自分で作る」と言った。
最初は母も承諾し私にご飯を作らせていたが、いつのまにか母が休日も三食ご飯を作る生活に戻っていた。私が年甲斐もなくだらしなかったんだろう。
「ああ、忙しい。なんで私ばっかり。」
母はボヤキながら今も三食ご飯を作っている。
私は母の背中を見て習慣とはプライドを保つことなんだと解釈するようになった。
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