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【エッセイ】今日寒かったですね。

定時になったのでテレワークを終了し、散歩に出かけた。秋分の日を過ぎたこの日の外は既に暗く、星が二、三個瞬いていた。

私は普段着の上に軽いランニングウェアを羽織って出かけた。これまでならこの格好で大丈夫だったけれど、今日は寒気を覚えた。いつもより気温が下がったからか、はたまた二キロ減量した事で今まで守ってくれていた脂肪達が私の体から逃げていってしまったからだろうか。あっ、昨日体重測ったら0.5キロ戻っていたからそれはちょっと違うか。

私はいつもの散歩道に出る。今までコーラスしていた秋の虫達はもう居らず、その静けさが寒さを助長させる。私は裸の木々の間の先で輝く星々を見ながら無心で散歩を続ける。聞こえてくるのは私が踏み締める落ち葉の音だけ。この下には春を待ってスヤスヤ冬眠している生命が一杯いるんだろうか。コイツらが土から出て来たら出て来たで喧しいが、居ないだけでこんなに夜が静かになる。というか静か過ぎる。本当は自分はこの世に一人ぼっちなんじゃないだろうか。そう思うくらい、この季節は生命を感じない。静けさと冷たさが余計私を寂しくさせる。

散歩道を暫く歩くと葉が生い茂っている林の道に出る。この辺りまで来ると月や星の輝きが届きづらいため暗くなり、この時期ならではの暗闇散歩ができる。他に誰かがその場に居たとしても気づかないだろう、この不気味な世界で私は一人歩き続ける。何処かに誰かが潜んでるんじゃないだろうかと考えてしまうと怖くなってしまうので、とにかく無心で歩く。

このような道を歩いていると、人生に似ているなと感じる。未来は分からず真っ暗だけど、あまり深く考えずに今やる事に集中する。所謂「無我」の状態になる。一休和尚の名言が頭をよぎる。

「大丈夫だ、心配するな、何とかなる。」

無心で歩いたからか、いつもよりも早く散歩が終わり家に帰った。暖房をつけ、冷えた身体を温める。私は身体を温めながら実感した。

とうとう今年の冬がやってきた。

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