【エッセイ】嘘の世界

以前、私は自宅へ帰りリビングのドアを開けると両親が揃ってTVを見ていた。何を見ているのか、私も目をやると人気バラエティ番組を見ていたようだった。ひな壇にはいつものお笑いメンバー達とその間にゲストが居た。そのゲストはここ最近急にスポーツメディアに出てきた人だった。元々そのゲストは現役時代も目立つ格好をしており、スタイルも良く顔も良く、派手なプレーをして観客を楽しませる事ができる稀有な選手だった。しかし暫くメディアで見ないうちに顔が変わっていた。目元は二重になっており、歯はホワイトニングでテカテカ光っていた。母が尋ねてきた。

「テレビ見ないの?」

私は社会人になるまでバラエティ番組が好きだったしよく見ていた。しかし、いつからかバラエティ番組を見なくなっていた。私はテレビがつまらなくなったとは思わない。寧ろ今までと同様の番組制作をやっているし、以前より金をかけられなくなっただけの話だと素人目線で感じている。しかし、当たり前だがバラエティ番組には「嘘」が混じっている。その嘘が露骨に見えてしまった時にはどうしても冷める。このゲストは面白おかしく現役時代や現在のエピソードを語っているが、嘘が混じっていると直感した。勿論本当の事を喋っている時もある。

「そのゲストが嘘をついていると証明できるのか？」

と言われたら証明できない。ただ、この顔は盛り上がりさえすれば嘘をつくのに抵抗が無い顔だ。身近にいたら絶対近づきたくない。しかしこのゲストのトークは周りのメンバーを食っていたように思う。それもその筈で、毎週レギュラーとして出演している人達が嘘を交えたエピソードトークをするのは危険だからだ。(誇張することはあるかもしれないけれど。)このゲストは奇抜なファッションに軽妙なトークを持ち合わせている。こういう人が長年愛されているのは、そのスポーツの知識が深い事や観察眼が優れているのは間違いない。現役時代も素晴らしい選手だったのも間違い無い。でも非常に胡散臭い。

また、ドッキリを仕掛けるバラエティ番組がある。あれも私は嫌いだ。仕掛けられる側の反応が嘘っぽい。本当にやっているのもあるけど、そうじゃないのも結構多いだろう。

先程のゲストもこのバラエティも高い人気があるらしい。変な事に、あの世界では嘘を交えて視聴者に届ける方が人気を獲得するという残念な現象が起きている。この事に今まで気づかなかった私もやはり阿呆なんだろう。最後はこの言葉で締めくくろう。

ストップ詐欺被害！

「自分は大丈夫」と言ってるそこのあなた。今回はテレビの話でしたが、他にも様々な所で間違いなく嘘を信じてますよ。