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ミンナの場合 フィンランドの人・社会福祉・介護 聖書を基として見る 7

「ミンナ」のストーリーをご覧になるにはこちらから。

https://note.com/teeri/n/n77279d49f98f 

 壮年のミンナは結婚生活の破綻、それに伴う鬱。新しい命の誕生、親の介護というフィンランドでは『渋滞期間』と言われる、仕事、孫、老親と仕事だけに集中するだけではなく、他に助けの必要な家族が出て来た期間を過ごしている。自分の人生、仕事の他に他の世代をアシストする必要が出てきた。仕事は鬱のため待ったをかけることができたが、孫と親のケアの必要には待ったがかけられない。頼れると思っていた伴侶も頼ることができなくなり、精神的、体力的にきつい50代となってしまった。

 離婚率はフィンランドではとても高く、結婚したカップルの半分が別れてしまうと言われている。離婚届は双方の承諾が必要なく、一方的に届けることができる。パートナーからDV被害に遭っている人のために、他の危険にさらされている人のために双方の承諾は必要としない。離婚もインターネットで書類を書いて送信すればそれで済んでしまう。
 一般的な離婚の形は子どもが小学生から中学生になるあたりで、女性の方から男性に対して別れを切り出す。経済的に自立している女性は、一つ屋根の下に住むパートナーにちょっと嫌気がさしたら忍耐する必要もなく一人になる選択をする。この時点ではまだ双方に新しい恋人はいない。
子どもは両親の二人に育てられる権利があるので成人する18歳になるまで、子どもがどうやって両親の間を行き来するか決める。通常、子どもたちは母親の家に平日は住んで学校もそこから通い、1週間ごとの週末を父の家、母の家と子どもたちが行き来する。有責の場合でもパートナーに慰謝料を払う事はない。ピックヨウル呼ばれるクリスマス前の忘年会などで、エストニアのタリンにクリーズで行き飲んで酔って同僚と関係を持って、そのまま離婚してしまうなどのケースもあるが、パートナーも子供達も外見上は非常にあっさりしている。住む場所を決め新しい生活に慣れたら、新しい恋人探しが始まる。
 フィンランドの男性は自分の思い、感情について表現することに困難を覚えるので、自分の人生について感情的にどう思っているのかをパートナーが聞くことは非常に希である。世界の情勢について、政治のことについて、趣味のことについてならいくらでも話すことができるが、自分の事はどう表現していいのかわからない。多くの男性は誰か第三者の助けを得ようとしないので、病気になったり家族の中に問題があったとしても、医者にも行かないし、カンセリングなどもっての他である。男女共問題があるとアルコールに逃げることになる。

 ワークシェリングは20年以上仕事を続けた、つまり職場を変えてきたとしても労働年金を払ってきた人が申請できて、雇用者と相談し最低100日、最高180日の平日の期間職場を離れることができる制度である。年金生活を始めようとする3年前まで取得することができる。その代わりに失業中の人で、25~55歳の間の人が休暇を取る人に変わり配属される。基本的にこれは仕事を長年続けた社員が、仕事のストレスから解放されるために設けられた制度で、孫や年老いた両親の世話のためのものではないが、家族とともにいる事が喜びでありストレス軽減になるために、家族のサポートの必要が二次的な目的となる場合が多い。この期間の保障は収入のおよそ70%。男女ともに利用していい制度だが、利用者のほとんどは女性だ。やはり孫や親への時間を増やすために女性は時間が必要らしい。

また男女雇用格差についてだが、フィンランドでは長年女性たちは女性が男性と同じ給料を支払ってもらうことができるように努力をしてきた。いまだに同じ会社、職種で男性の方が女性よりも3%給与が良いとされている。「男性の1ユーロが女性の70セントだ」と長年言われてきた。2010年以降男女の格差は横ばい状態だ。
2017年の男性と女性の年間収入の差は9500ユーロになると言われている。女性の方が25%男性より少ないのだ。これは性差による社会現象によるもので、契約社員、パート、子供の世話で中断されるキャリアなどが女性に影響するものと考えられている。
高収入の業種のトップを見ても男女差は現れている。しかし労働における給与の男女差は北欧諸国は5%前後と、世界的にはあまり差がグループに属する。
全労働人口の女性就業率の割合はフィンランドは72%、日本は67%なのでほとんど差はない。個人的には全ての労働人口に属するフィンランド女性は働いているのだと思っていたが、この数値の中には働いていない難民の数も入っているのかもしれない。
どうしたら男女格差を失くせるのかと言うことも研究されている。給与を公表することにより、差がなくなるのではと言われているが、フィンランドでは一般的に自分がいくら稼いでいるのかという事は、友人たちの間で話題にならない。給与について周囲に話すことはタブーだと考えられている。中央ヨーロッパの方が他人の給料の額を知っているが、フィンランド人とって、お隣がいくら稼いでいるのかは未知の世界なのだ。お隣スウェーデンでは85%の人が「給与を公表してもいい」と答えているのに対し、フィンランドでは圧倒的に下がり58%に留まる。
しかしネット内には業種別に自分がどのくらいの給与をもらっているのかというのをカミングアウトしているページもある。自分はいくらもらっているか公表したくないけれど、発信先が特定されない場所では公表してもいいかなと思っている。シャイなフィンランド人はネット上では大胆になれるのだ。

 話は少しずれるが、医療・介護業界における男女比率では95%は女性となっている。全ての領域において男女平等と言いつつもこの業界では明らかに男女差があり、ケアを受ける人たちも「男性介護者がくるとシャワーの時にちゃんと洗わないから嫌だ」と言う高齢者も多い。男性のクライアントには男性介護者、女性には女性介護者と言う発想はフィンランドにはない。

 お金の事に関して追記しておくが、フィンランド人家庭では結婚している、またしておらずパートナーとして二人が一つ屋根の下で生活している場合、お互いの給与から誰が何を払うかを取り決め、それを払っている。給与のいい方のどちらかが全てを支払ってはいない。家賃や管理費、住宅ローン、不動産税、車の維持、保険、食費、交際費、着るもの、子供の趣味などどちらが何を払うかが二人の間で決められている。

・失業保険
病欠の際には企業によって有給最大日数が決まっており、その範囲なら完全有給である。それ以上続く場合にはKelaが保証を支払う。

 基本的にフィンランド人女性は男性に心理的にも経済的にも依り頼むことを好まない。レストランなどで食事をし、外に出る前に男性が女性をエスコートしてコートを着させようとしても、「そのくらい一人で着れるわ」と言う女性もいる。日本人女性から見たらもったいないくらいの話だが、フィンランド女性にとってみると、男性の庇護などなくてもやっていけるという自信もあるし、女性だからと言って甘やかされるのは嫌なのだろう。

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