川上未映子『春のこわいもの』(新潮社、2022)
2022年の2月に出版された短編集。コロナウィルスのパンデミック下を描いた作品群と言えるだろう(実際、コロナ文学というカテゴリーもあるそうだし)。刺激的で面白かったのは「あなたの鼻がもう少し高ければ」という作品。美容整形をするためにギャラ飲みに志願する若い女性がそのギャラ飲みをセッティングしている女性たちにすげなく拒絶されて、同じく拒絶された女性と酒を飲んでやり過ごす物語で二人の女性が何者かになれるわけではないという一種の絶望のようなものを提示する結末が描かれる。「花瓶」は一