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Bon Appetit!

「ボナペティ!」
我が家ではシェフ(夫)の発するこの一声で毎回食事がスタートする。

厨房は夫の領域。私は洗い物や生ごみの処理など下働きをするために足を踏み入れることはあっても料理は夫に任せている。夫にとって料理をする事は喜び以外の何物でもないらしい。共に暮らし始めた時に彼はこう言った。
「料理をする事は全く苦にならないから食事は僕が作る。君の仕事はただ一つ。何が食べたいのか言ってくれ」

私はそもそも料理はあまり得意ではないのでこの役割分担にほとんど不満はない。「ほとんど」としたのはこういう事だ。今夜はさっぱりとお茶漬けに梅干しで済ませたいなーと思ってもんなリクエストはなかなかしづらい。そういった食事は夫が出張で家を留守にした時にこっそり楽しむようにしている。私はなんという贅沢を言っているのだろう。

料理が大好きな夫は友人たちと外で会うよりも家に招待して手料理を振る舞う事を好む。毎週誰かが夫の料理を食べに我が家にやってくる。この週末も、昨年日本に到着した直後しばらく滞在したシェアハウスで知り合った青年が新婚の奥さんを連れて遊びに来る予定。彼らには何を出そうかと今からメニューをあれこれ考えている夫は楽しそう。

バターの溶ける香りが漂ってきた。そろそろ階下でシェフが朝食の準備を始めたらしい。

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