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(超自己流)水彩画の制作過程を紹介します。

数ある画材の中で、水彩画(中でも透明水彩)は、何となく「相性が合わない」と思っており、なかなか手が出せずにいたので、本格的(趣味の範囲で、の意味ですが)に絵の具やスケッチブックを揃えて描き始めたのは、ほんの一年ほど前のことになります。

水彩画を縁遠く感じていたのは、自分の絵を描くスタイルとかけ離れた特性を持っているという印象があったためです。具体的には、自分の描き方が「様々な色を塗り重ねて紙の上で試行錯誤をしているうちになんかいいものができる」であるのに対し、透明水彩というのは「非常に繊細で、やり直しがきかないので、緻密に工程を練るか、持って生まれたセンスで一発勝負で描く」というイメージがありました。

優れた水彩画家さんの作品を見ても、「ふわっと」とか、「シンプル」とか、「透明感のある」という形容詞が似合うものが多いように思うのです。

まあ、そういう画風に憧れて、自分にもこういうものが描けたらな、と思ったのが出発点だったのですが、そこに達するにはまだまだ時間がかかりそう。

一方で、失敗に懲りずに描き続ける過程で、たとえ水彩画でも、そこまでびくびくしながら描くことはないかもな...という開き直りも生まれてきました。

水彩画だから、といって、無理に自分の描き方を変えずとも、最初適当、ヘンだったら直す、色や塗り方も豪快に押し切って、何となく気に入った作品が描けます。

それが果たして、「透明水彩がらしいか」と言われれば、客観的には分からないのですが、自分としては、たとえクレヨンや色鉛筆など、他の画材と同じような描き方をしても、水彩画にしかない雰囲気や色の混ざり合いがあり、今のところは気に入っています。

技術的にはまだまだ足りないところがあり、参考になるポイントも皆無かとは思われますが、以下に、先日作成したダックスフントの絵の塗りの過程を紹介していきます。こまめに写真撮ろうと思っていたけど、集中してたら忘れてました(汗)。何となく流れが分かっていただければ幸いです。

1. 画材の紹介

下描きは写真を取り忘れたので省略。色塗りにはあまり関係ないのでご了承ください(汗)。

スケッチブック、パレット(色見本付き)など、今回使用した画材たち。

スケッチブックは、最近MarumanのvifArtというスケッチブックが、非常に相性が良いことを発見しました。細目、中目、粗目がありますが、赤の粗目を使用。理由は色塗りの過程で言及しますね。

絵の具は、様々な色がたまるにつれてパレットも増えてきていますが、絵のイメージとか、その時の気分によって、使いたい色がそろっているものを選びます。今回、犬を赤っぽく、背景を青緑っぽく、というイメージがあったので、赤~黄の色が豊富なDaniel Smithの22色を詰め込んだパレットを使用。あと、最近買った、Mayan Blue Genuine Diopside Genuine という色をこのパレットに追加して、使いたくてしょうがなかったので。

絵の具にお金をかけている今、筆、色溶き用の皿、水入れなどは購入する余裕がなく、リサイクル容器や100均雑貨で間に合わせています。ダイソーの白い長方形のお皿は(多分)メラミン製で洗いやすく優れモノ。

2. イメージを決めて、(かなり自由に)色を置く

最初はあまり慎重にならず、ジャンジャン色をのせます。この時点ですでに、「繊細な」水彩画の特徴がきれいに失われるのですが、「水を多めにして、薄くしておく」と、「最後まで白く残したいところをはっきり決めて、そこには色をのせない」の2つのルールを守れば意外と挽回可能です。

水彩画のチュートリアルで必ず聞くアドバイスが、「明るい色から塗る」というものですが、私は暗い色も最初から塗ってしまいます(影になると分かっている部分限定ですが)。「明るい色」というよりも「水を多めに」の方が、初期の塗りでは大事なように思います。個人的な感想ですが。


白は残す、だけは意識したけど、後は結構いい加減。早くMayan Blue Genuineを使いたくて、暗い色なのにしょっぱなから紙中にぶちまけました。

vifArtの画用紙、かなり濡らしても丈夫です(紙が波打つので周囲にマスキングテープを貼って、裏表紙の厚紙に固定しています。)

3. 明暗に注意しながら、形と色をまとめていく

いったん十分に乾かして、もう少し濃いめに色を付けていきます。この段階から、ある程度モチーフの輪郭を、影と光を使って浮き上がらせていきます。写真は犬のお尻のほうから、背景の青、緑に加え、茶色、紫など赤の混ざった暗い色を置いて、身体の影を作っていっているところ。


だんだん色がはっきりしてくる過程が好き。

いろいろな色を塗っていると、どうしても暗くなりすぎて、光を目立たせたいところの色も濁ってきてしまいがちですが、そんな時はきれいな水を含ませた筆で紙面をこするようにすると、いい感じに色が落ちます。真っ白にはならないのですが、写真でいうと犬の前足やお尻のあたりのように、影から光へのボヤっとした移行がうまく表せます。いくつかの画用紙で試したけど、vifArtが一番色落ちが良かったです。安い画用紙でやると紙がむけるし、逆に高級紙の中にはどうしても色が取れないものがあります(絵の具との相性もあるみたい。ダニエルスミスとvifArtのコンビが最高なのかも。)

クレヨン、色鉛筆でもそうなのですが、「茶色の犬は茶色で塗る」ということが、私はどうもできません。小学生の時に通っていた絵画教室の口癖が「肌は肌色で塗るな、木は緑で塗るな、象は灰色で塗るな」というもので、いまだにその呪縛にとらわれており、茶色の犬に茶色を塗ると罪悪感がわきます...。そのため、始めの段階ではなるべく茶色の使用を避け、暗い部分は紫、濃い赤、緑などを、明るい部分は黄色、空色、黄緑などを意識して塗っています。どこを紫にして、どこを赤にするのか、というのは、全くランダムで、計算、計画一切なし。当たると上手くいくのですが、大抵は救済不可能なまでにきったなくなります。このあんばいが分かると上手くなるんだろうなあ...

4. 間違った色はふき取り、乾燥させてやり直す...を繰り返す。

塗る箇所がなくなって行き詰ったら乾燥させて一休みします。こんなひどい絵、もう触りたくない!といらだって放置していても、徐々に乾いて色が落ち着いてくると、そこまでひどくは見えなくなってきます。おすすめは、乾燥させている間、遠くから眺めてみること。絵を描く距離でがっつり向き合っていると分からない全体のバランスや色合いが、遠くから見ると2割増しでよくなり、直すべきところも見えてきます。修正不可能、と思っていた個所も、乾くと色が若干薄くなり、あれ、ここ直せるんじゃネ??(又は直さなくてもいいんじゃネ??)と思えてきます。気分転換したところで、もうちょっと頑張ってみましょう。

基本は、暗い箇所は異なる色を重ねてどんどん暗くし、明るくしたいところはふき取って周囲の色となじませながら、色を薄めに重ねていく、という作業の繰り返しです。この辺でやめておいた方がいいかな...と思う瞬間は、人それぞれですが、私の場合は「これで完成にしよう」と思った後、乾かしてもう一回、最後の修正をして終わりとします。写真を見てもわかるように、色は重ねていますが細部はおおざっぱなので、これでも1時間ちょっとで描き上げています(乾燥時間は除く)

完成に近づいてきたら、茶色も取り入れて全体をまとめていきます。ダニエルスミスのPermanent Brownという絵の具がこれまた素敵な色で...。油絵、クレヨンなどは、下に塗った色を塗りつぶしても色に深みが出ていいよ、などと言いますが、透明水彩画も同じで、紙の上でいろいろな色が重なることで、パレットの中の色をはるかに超える数の色が見えてくると思います。

完成。

5.おわりに

以上、読んでくださりありがとうございました。普通の水彩画の制作方法から逸脱しすぎて、参考にはならなかったかもしれませんが。

一度塗った絵具を「ふき取る」というのは、おそらく正統派の透明水彩では邪道なのかもしれませんが、私自身は、水彩画に挑戦して以来一番多用し、かつ効果を楽しんでいる技法です。

技術に関しては全くの初心者なので、ここまで読んでここはこうすればいいよー、など、お気づきの点がありましたらコメントいただけますと幸いです。

画材紹介欄で言及した画材


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