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「目に見えない豊かさ、アイデアの力を信じて、精一杯届けたい」|Passions Worth Spreading vol.5

「うち、最近お祭りやろうと思ってんねん。はすみんもやる??」

自他ともに認める「楽しいことを思いつく天才」である友人の口から出た「お祭り」で指し示されたのが、他ならぬTEDxUTokyoでした。

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こんにちは〜。こんな不思議な誘われ方でjoinしました。

TEDxUTokyo実行委員会の蓮見日向(はすみひなた)です。TEDのこと「お祭り」って言う人なんているのですね。笑

私は、国際基督教大学に通っている新三年生です。TEDxUTokyoの理念に共感し「ここにいる人が好きだぁ」と思いながら、On-Stageの統括として活動しています。

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TEDxUTokyoは複数のチームで構成ており、ずばりTEDxイベントの根幹を成すトークを作っていくのが我らがOn-stage。
その仕事はざっくり、

①「今以上に光の当たるべき」「未来を創る」アイデア探し
②相乗効果を生み出すような登壇者・登壇順の設計
③個々のスピーカーの方との打ち合わせを通して行うトークのブラッシュアップ


という順に進んでいきます。
どれもつま先の先まで背伸びしなければ実現できないチャレンジングなお仕事です。

例えば、①のアイデアを探す段階。

TEDキュレーターのクリス・アンダーソンは、ケニアのナイロビを訪れ、マサイ族の少年に会い、話し、彼の中のアイデアに惹かれ、スピーカーとして招いた。- TED TALKS スーパープレゼンを学ぶTED公式ガイド より

私は、このエピソードが好きで、こんな風なセレンディピティの先にTEDxUTokyoのイベントがあるとよいなぁと思います。
一般的なカンファレンスとは違い、TEDでは扱う分野の縛りがありません。 “Ideas worth spreading”の理念のもと聞き手の世界観を新しく、豊かにするアイデアは全て「贈り物」として歓迎されます。キュレーター達が全身全霊でアンテナを張ってアイデアを探している様子が格好よくて、「私もそうやって作られたイベントに参加したい!」「そういうイベントを届けたい!」と思っています。

②相乗効果を生み出すような登壇者・登壇順の設計
じゃあ沢山のアイデアを限りある1日でどうやって届けるのか。これがまた、難題なのです。TEDxUTokyoは、大学コミュニティが未来を想像/創造するものであってほしいという想いから “Co-build the future”というmisionをもっています。私たちが取材の中で其々のアイデアに見てきた様々な未来から、どんな未来がどのように交わっている様子が自分たちの作りたい未来像なのか、聴衆がワクワクするものか考え抜く必要があります。1+1=2以上の化学反応を目指すのがやりがいです。

③トークのブラッシュアップ
TEDxイベントでは、スピーカーの方と運営メンバーで丁寧な打ち合わせをさせていただいた上でトークを作成していきます。TEDの理念と、TEDxUTokyoとして作りたいイベントと、スピーカーの方自身が大切にしていらっしゃるアイデアが重なりあう部分をさぐり、届けること。それがOn-stageチームのゴールです。

前置きが長くなりました。本noteではPassions worth spreadingの企画趣旨にのっとり、私の活動の裏にある原点にある体験や考えをナラティヴに記してみます。この企画を通じてTEDxUTokyoにいる人の魅力が伝われば幸いです。

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ちょっと かわった のねずみの はなし

(1)レオ=レオニ『フレデリック』

幼い頃、母がよく読み聞かせてくれた本のなかに、レオ=レオニの『フレデリック』という本があります。

あらすじは以下の通り。

冬を越す5匹の野ねずみのお話。
仲間の野ねずみは、せっせと木の実を貯えているのに、フレデリックは一人ぼんやりとしています。
仲間に問われると、彼は寒くて灰色で長い冬のために「お日様の光」「色」「言葉」を集めて自分も働いていると言います。みんなはそのことに少し腹を立てていました。
そして、冬が来ました。最初は快適に過ごしていた野ねずみたちですが、日が経つと食べ物も暖をとる藁も尽きてしまって、みんなはお喋りする気にもなれません。そんな時に、フレデリックが集めたもの、彼の話が仲間の心を慰めるのでした。

「きみたちに おひさまを あげよう。ほら かんじるだろ、もえるような きんいろの ひかり……」

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(2)4匹の野ねずみたち

作品に登場するフレデリックを除く4匹のねずみたちは、多少の冷たい物言いはしても、集めた食べ物をフレデリックに分け与えました。そして、物質的豊かさを失ってしまった時には、彼の言葉に心温まり、「君って詩人じゃないか」と褒め称えます。
私は一つの寓意として、ここに「贈り手=フレデリック」と「社会=4匹の野ねずみ」の関係の理想を読み取りました。衣食住があってこそ生きながらえることが出来るけれど、心に太陽を灯してくれるものだって、同様に尊いと思うのです。

(3)キュレーションへの挑戦

実際の社会において4匹の野ねずみどころではない数の多様な感性を人々とフレデリック=贈り手のつながりは、絵本で述べられるように単純ではありません。私は、誰もがフレデリックのように自分の世界を他者に贈ることが出来て、また別の人の世界を享受することが出来る社会になったらいいなと考えます。

そこで、絵本には登場しなかったキュレーター(*)ねずみがもしいたら…?という考えに行き着いたのでした。

*キュレーション(curation)という言葉は、ラテン語で「世話役」といった意味の語を語源に持つ。一般的には、美術館などで企画展を組む(館長や学芸員に相当する)役職を「キュレーター」(curator)と呼ぶ。キュレーターは企画展において、特定のテーマに沿って作品を収集し、それぞれの作品を特定の文脈の中に位置づけ、観客に紹介する、といった役割を担っている。- IT用語辞典バイナリより

練られたキュレーションを通して、それらを一番魅力的な状態で贈ることが出来れば「もっと知ってみたい」「自分も贈りたい」と活発な関係を生み出すことが出来ます。贈り物をする場が増えれば、そこで贈り交わされるアイデアや伝え方も多様になってくるのではないでしょうか。On-stageでの活動は、まさにキュレーションへの挑戦です。

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世界の縁が広がるような経験

話は変わりますが、みなさんの原体験はなんですか。

私は代表が第一回の連載で語った

>人生は、等速直線運動と高密度の異質な経験との繰り返しです。

ということばに共感しています。

自分の言葉に置き換えると、
「誰しも『こつこつ丁寧に積み重ねる日常』と『それを方向づける様々な出会い』を生きていく」だと思います。

自分は、たくさんの縁に恵まれ生きてきました。その1つが、ダンスです。
それまで打ち込んでいたクラシックバレエを怪我で辞め、両立に励んでいたはずの部活を同時に辞め、何事にもモチベーションが保てなくなっていた中学3年の時期に出会いました。

私は昔から、本を読んだり、文章を書いたり、誰かと話したり、そんな営みが大好きでした。誰かの想いに触れ、自分の想いを伝えてみると、世界の縁が広がる感じがして、自分の輪郭が見えた気がして、ゾクゾクするのです。まさに『高密度の異質な経験』です。

そういった『高密度の異質な経験』は「言葉を基軸にした他者とのコミュニケーションだけではない」ということをダンスを通じて知ることが出来ました。だから私にとってダンスとの出会いは、かけがえのないものだったんです。

自分の身体や鼓動と向き合うという内省も初めてのことながら、音、空気感、温度、隣で踊る人の呼吸、客席にいる人の呼吸、観客という群衆の総体…といった風に自分にとっての他者性も拡大し続け、それらが渾然一体となっていくのが、えも言われぬ体験です。頭でっかちの私には、すんなりとはいかない難しいことでしたが、難しさや味わったことない快感ゆえに没頭していました。

高校3年間を捧げたダンスを通じて、何かに一生懸命打ち込む楽しさや、人と協働するマインドセットなど多くのことを学びました。そして今でも、舞台という非日常空間で演者にも観客にも共有されるえもいわれぬ空気感、言葉を介さない身体表現の突き抜けるような解放感が私を惹きつけてやみません。

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MIWA作品 天の川のひとしずく

写真は、初めて舞台に立ったときのこと。私を作品に温かく迎えてくださり、愛のある指導をしてくださったMIWAさんに本当に感謝しています。七夕伝説をモチーフに創られた傘と群舞の美しい作品なので、ぜひ、音を出してこちらから見てみてください。

ちょっと埃っぽい舞台袖の独特な匂いや、直視すると目が潰れそうになるS.S(サイドスポットライト)を脳裏に浮かべると、自分を発奮させることができます。迷った自分に、立ち返ってくるとどんなことが好きなのかヒントを与えてくれます。

みなさんには、そんな経験はありますか?

TEDxUTokyoへの期待

それからというもの、嗚呼こんな『高密度の異質な経験』が詰まった刺激的な空間に居座りたい、携わりたいと思うようになりました。この空間にいることの快感を沢山の人と分かち合いたい、贈りたいと思うようになりました。

そこへ、冒頭での友人のお祭りという言葉が舞い込み、お祭りという場の高密度さ、異質性が私を惹きつけたのでした。

なんでTEDをやりたいんだろうと考えるうちに、世界の縁が広がるような『高密度の異質な経験』を贈るということが、フレデリックの絵本と共に具体化されて点と点が繋がった気持ちになりました。

目には見えなくても人を豊かにするものはある。そういう豊かさをもった多様なアイデアが多様な伝え方で活発に贈り交わされる社会になってほしい。だから、


「目に見えない豊かさ、アイデアの力を信じて、精一杯届けたい。」

これが私をTEDxUTokyoで突き動かしている情熱だと思います。

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是非私たちの作ったトークを聞きにきてください。本郷で6月12日に開催するTEDxUTokyo2022まで後二ヶ月です!

スピーカーの方のアイデアが、このノートを読んでくださっている方の世界でどんな化学反応を起こすのかが楽しみです。

結びにはなりますが、TEDxUTokyoイベントはスピーカーの方々の大切なアイデアを共有していただくことで成立し、トーク作成へのご協力の中でより豊かなものへとなっていきます。これまで取材にご協力いただいた皆様、先日のTEDxUTokyoSalonでご登壇を快諾いただいた3名のスピーカー方、そしてこの先の6月のイベントでご登壇くださる皆様に心より感謝を申し上げます。

誘ってくれた友人に愛と感謝の気持ちを込めて。
On-stage 蓮見日向


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