シャム猫の作り方
サモワールの湯気の音
お茶の時間に猫は生まれる
ジャムティーから湯気が逃げる
ミルクのジャムから たちまちシャム猫
今はない名前を恋しく呼ぶ 舌は滴る 結晶して甘さは固まる
ウスベニアオイからロシアンブルー
瞳が開けば夜が明ける よちよちしている間に 目の覚める青色を
レモンカードからアビシニアン
こってりと甘いのに 撫ぜれば爽やかに梳けてゆく毛並み
曇った窓に柔らかい足跡
部屋の中の自由自在
彩られた湯気の猫たち
束の間 愛想を振りまく
たちまち冷えて 陽だまりの気配をそこここに残して消える
サモワールの湯気の音
お茶の時間に猫は生まれる
赤茶けた毛色のシャムが好みなら
52番目のレンガを投げる術もあると聞く
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収録:真昼に落ちた流れ星
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