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リベカのアドベント

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リベカがアドベントの季節に体験した、少し不思議で楽しい物語をお届けします。  さあ、真っ赤なコートをはおって、息を弾ませてリベカが駆けてきます。辺りは一面、雪に覆われて真っ白です…
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#リベカ

リベカのアドベント 予告

クリスマスおめでとう! 今年のアドベントの季節に、「リベカのアドベント」という物語をお届けします。 12/1〜クリスマスの日まで、毎日更新されます(11/30にプロローグを投稿します)。今年のアドベントのはじまりは、正確には12/2ですが、アドベントカレンダーの多くは12/1からなので、それにならいます。 初出は2009年のアドベントの季節。同じようにwebで公開されました。その後、iPhoneアプリを作成し(現在非公開)、その時に英語版が同梱されました。ですので、今回の

リベカのアドベント プロローグ

 女の子の名前はリベカといいました。  とても素敵な名前です。  リベカの両親は、意味の深い名前から選んで彼女に付けました。そのことについてはまた後ほど、お話しましょう。  これから、女の子主人公リベカがアドベントの季節に体験した、少し不思議で楽しい物語をお届けします。  さあ、真っ赤なコートをはおって、息を弾ませてリベカが駆けてきます。辺りは一面、雪に覆われて真っ白です。  リベカのコートがよく目立っています。 ***** Her name was Rebecca, s

リベカのアドベント -1日目-

「コウジ、待って!」  リベカが呼んだコウジはリベカより少しだけ背が高くて眼鏡をかけている男の子です。 「何だよ、リベカ」 「クリスマスギフト!」  リベカはニヤリとして、雪玉をコウジのコートの背中に突っ込みました。 「ひやっあ、、、」  情けない声を出して首をすくめるコウジを見て、リベカは笑ってこう言いました。 「さよなら、コウジ。素敵なクリスマスを!」  そんなリベカの様子を見ている鳥がいました。それは、まったくフクロウのようでしたが、よく考えて! フクロウはお昼間は森の

リベカのアドベント -2日目-

 この日は学校です。リベカも教室で真剣に先生の話を聞いていました。リベカは勉強が得意でした。  リベカの勉強の方法はこうです。じっと先生の話を聞いて、それを忘れないようにします。家に帰ったら(ひとりで帰る時は、その帰り道に)今日の授業のひとつひとつを正確に思い出します。そうするとテストの時もまったく同じようなことを思い出せるのです。  マリヤ先生は、峠という文字を教える時に、そうそう、山の絵を描いて上がって下がることを黒板に書いていたっけ。眼鏡の縁を押さえていたから、これはき

リベカのアドベント -3日目-

 フクロウのような姿の天の使いは、唐突にリベカの元へやってきました。 「こんにちは。リベカ」  それは、学校からの帰り道のことでした。リベカが今日の算数の授業のことを反すうして、ピエール先生のおひげはいつも素敵だなあ、フランスパンを乗せているあの芸術家さんみたいだなあと考えていたところでしたので、とっさにこんな風に返事をしたのです。 「こんにちは、おヒゲのないフクロウさん」  フクロウのような姿の天の使いは、びっくりした様子のないリベカを見て少し驚いて首を横に回しました。 「

リベカのアドベント -4日目-

 アドベント4日目の朝はとても気持ちのよい晴天でした。  リベカは起き抜けにアドベントカレンダーを開けて、出てきたチョコレートを慌てて口に放り込みました(ちなみにリベカのアドベントカレンダーは、お父さん手作りのノアの方舟形のものです。扉の中にお母さんお手製の焼き菓子や市販のお菓子を詰め込みます)。  口の中に溶け出すチョコレートは、とても甘くてリベカのほっぺたをうっとりさせましたが、その後、だんだん後悔の気持ちがわき上がってきたのです。  それはなぜでしょう。  リベカはよく

リベカのアドベント -5日目-

 昨日はガブリエルはやってきませんでしたので、リベカは少しほっとしていました。  学校から帰ってきて、今はおやつの時間です。お母さんがいれてくれたミルクココアを飲みながら、今日は少し冷静になって考えます。(ガブリエルはどうしておしゃべりできるんだろう?)  そんな風に考えている時、目の前にガブリエルが現れました。 「やあ、リベカこんにちは」  びっくりしたリベカは慌てて 「こんにちは。フクロウのガブリエルさん。どうぞ、お菓子」 といってポケットをさぐりはじめます(やっぱり、ガ

リベカのアドベント -6日目-

 今日は日曜日。教会へ行く日です(この年は12月6日が日曜日でした)。  リベカは、イエス様を信じていましたけれども、まだバプテスマ(洗礼)を受けてはいませんでした。イエス様を信じていました、と言いましたが、実のところはそのこともよく分かっていないのです。信じるってどういうこと?  日曜学校の先生がこう教えてくれました。 「リベカ、あなたがあなたの言葉で、イエス様どうぞ私の心に入ってくださいとお祈りすることよ。それは、誰にだってできることなの。政治家や大企業の社長さんのように

リベカのアドベント -7日目-

 リベカは、昨日の日曜学校の先生の言葉をずっと反すうしていました。  めずらしく、学校の授業中もぼんやりとしていました。 「リベカさん。次のページを音読してください」  慌てたリベカは、彼女がいつも着ているコートのように真っ赤になって立ち尽くしています。隣の席のコウジは、嫌みのように笑いましたが、すぐにここだよ、と教えてくれました。  リベカはその日、一日中ぼんやりとしていました。 ***** Rebecca was reflecting on what her Sund

リベカのアドベント -8日目-

 雪がやんだその日、リベカはお母さんと街へ出かけました。学校が午前中で終わる日でしたので、お昼ご飯を食べた後にお母さんと一緒に出かけたのです。  街はクリスマスを迎える飾り付けでにぎわっていました。リベカの住んでいる街は特別大きな街ではありませんでしたが、街並みの建物がカラフルで愛らしいことが有名で、たくさんの観光客が足を運びます。この季節はすっかり冬模様で少し寂しく感じられましたが、それでも品のよいクリスマスデコレーションを見に多くの人が集まってきています。  街の中央に建

リベカのアドベント -9日目-

 今日はリベカのお父さんとお母さんのことをお話ししましょう。  リベカのお父さんは、あまり有名ではないものの、素敵な作品を作る彫刻家です。街のほとんどの人が知らずに毎日眺めているもの、例えば、ひとつ目橋の欄干のドワーフ、郵便局のラッパの看板、パン屋のプレッツェルの形のドアノブも全部お父さんの作品です。  そして、今日は新しい作品の納品の日です。今度の作品はリベカの家族みんなが通う教会の入り口のドアノブでした。しばらく前から片方がとれてしまって、格好が悪かったのです。 「やあ、

リベカのアドベント -10日目-

 今日もお父さんとお母さんのお話です。  ふたりはいつもお祈りをします。  少しその内容を聞いてみましょうか。 「恵み深い天の父なる神様。あなたの御名を賛美いたします。今日もこのように新しい一日を私たちの家族に与えてくださいますことを感謝いたします。今日は吹雪の日となりました。どうぞ、リベカの学校までの道のりが護られますように。聖霊様が働かれて私たちの生活が護られますように。今は不景気の時代です。どうぞその中にあっても私たちの経済をお護りください。また、護られておりますこと

リベカのアドベント -11日目-

「まあ、リベカどうしたの?」  お母さんは学校から帰ってきたリベカを見てびっくりしてしまいました。顔中にひっかき傷があるのです。リベカのお母さんは学校の先生でしたからすぐにピンと来ました。 (きっと女の子とケンカしたんだわ) 「なんでもない!」  リベカは、ただいまも言わずに自分の部屋へ駆け込みました。部屋には天の使いのフクロウもいたのですが、リベカはそのことにも気付かずベッドの中に潜り込みました。そして、ヒックヒックと泣き声をあげました。  リベカのお母さんは、ゆっくりとミ

リベカのアドベント -12日目-

 その日、リベカは一言も口をききませんでした。  とても強情な女の子なんです。 ***** Rebecca didn’t speak a word with Annika that day.  She was a very stubborn girl. ***** 作:石川 葉 絵:石崎 幸恵 訳:Andy Carrico 英訳編集:Rey DeBoer <<アドベント11日目 | アドベント13日目>>