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組織には春夏秋冬があり、季節はめぐる

先日、NPO代表を務める、尊敬する同志の語りをClubhouseで聴く機会があった。
場をつくる、ということにおいてトップランナーでもある二人が、その「つらさ」について赤裸々に語り合う場で、タイトルにした言葉が出てきて、首がもげるほどうなずき、うなってしまった。

これまで、さまざまな「農」の現場につまみ食い参加したり、取材したりするなかで、季節のめぐりがなければ作物は成長せず、季節のありかたによって成長が左右されるのを目の当たりにしてきた。

土から芽を出すまでにエネルギーを蓄える季節、ようやく芽吹いて鳥から身を守って、ようやくぐんぐんと成長をして、受粉によるコラボレーションと結実、そして収穫を迎えるまで、季節はめぐっていく。冬が来なければ春がないように、寒さにも雪にも、水を蓄え大地を潤す意味があることを知る。

あるいは手前味噌もそうで、冬のうちに仕込んで、徐々に気温があがるなかで麹菌の働きが活性化し、発酵が進んで、また落ち着いていく、そのめぐりがあってはじめて味噌になる、のを体感している。


もしかしたら、組織も同じようなものであるかもしれない。

新しい人との出会い、その人が加わって、何かが始まるかもしれないというワクワク感。人と一緒に働くことで広がる世界、可能性、価値観。ともに取り組んで世に送り出したプロジェクト、商品、アイデア。まいてきた種を育て、それが芽吹き、たとえば講座として人に届け、結果を検証し、ブラッシュアップしていく。プロジェクトごとに四季のめぐりとみのりは確かにあるし、組織全体として見た時も、春夏秋冬がある。まさに今、ふたたび春を迎えようとしているのを感じている。

春を感じられるようになるまで、時間がかかったなあ。

コアメンバーとして組織に関わる一人ひとりの主体と参画、理解と納得、自己実現と社会実現、自分と組織……事業を進めるなかで、全てに明快な解があるわけではなく、解釈も理解のスピードも得意不得意も割ける時間もそれぞれに異なるなかで、組織としてまとまっていく難しさがあっあ。課題の一つひとつを解題していく壁の高さに途方に暮れ、心が折れかかることもしばしばだった。個人であれば、自分自身で目標を定めてそこに到達するまでの道筋を決めて、タスクに落とし込んで一人で(自分との戦いで)一つひとつの課題をクリアしていくものだけど、それが組織となった時に、関わる一人ひとりの心身の納得(腑に落ちる)がない限り、本質的に前に進めない。

つまり、時間がかかる。

そのうちに、課題がどんどん複層になっていき、それを解きほぐしていくのに、さらに時間がかかるようになってしまう。雪国で迎える初めての長い冬、どのように雪下ろしをしたらいいのかわからない間に、雪が厚く降り積りどんどん圧雪してしまい、気づいたら古民家を押しつぶしてしかねないほどになり、周囲の助けも得てようやく雪のしまい方を知る。
降ったら下ろす。降ったら下ろす。脇に置いておく、ためておく、大切なところはしっかり守る。その繰り返しをしている間に、張り詰めた空気がゆるみ、空気が少しずつぬるくなり、土の下で水が動き、雪解けを迎えて、やがて春がくる。

一人ひとりの内なる声を聞くこと、なるべく早めに聞くこと、自分が本音で話す時間を持つこと。毎日、雪がふるたびに、雪をかいていくように、聞く、話す、を繰り返していく大切さを、身をもって知った。冬がどのようにやってきて、冬をどのように過ごしていくのかを一つの経験値として、また次にめぐる季節に備えていこう。冬の足音が聞こえてきたら、薪や炭を集め、雪囲いをして、毎日コツコツ雪をおろす気力体力をつけていこう。


一人ではなく、みんなで乗り越えて迎える春は、こんなにも瑞々しく、まばゆいものなのか。厚く積もった雪が解け、大地がしっかり潤っている。冬の間に力を蓄えた種は、芽吹きを待っている。私も一つ殻を破り、種を飛ばす準備ができてきた。


Spring has come!


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