見出し画像

「なぜ、白蟻防除業者はホームページに価格を載せられないのか」

白蟻業者を探す際に、
多くの人が気になるのが「価格」かと思います。

しかし、残念ながら
会社ホームページに金額提示をしている白蟻業者は少ないのが現状です。

では、なぜ提示していないのかを
今日はお話ししたいと思います。

古いホームページを持つ業者の場合

まず、前提として
「予防」という概念が広まる平成より前の
大正・昭和前半という時代には白蟻の駆除という仕事は
大工と同様に「職人技」でした。

大工の仕事が「決まった金額」を提示できないのと同じで
白蟻の駆除というものも、価格があってないものであり
且つ、今のネット社会のように他社を比較出来ない時代のため
看板などを見て「(地元の)近くにある駆除業者さんにお願いしに行く」という
比較も出来ない、それこそ言い値がそのまま反映されるような
そのような時代だったかと思います。

昭和と言えばまだ、集客の方法と言えば、
タウンページか看板(もしくは店舗)が主流だった時代ですので
被害の大きさ、建物の構造、被害を出した白蟻の種類に加え
薬剤も今のような安全性や効果の高いものは、ほぼなかった時代ですので
白蟻駆除の作業者自身の健康リスクや、技術なども考慮すると
様々な状況に応じた網羅的な金額を、紙面や看板のスペースに載せることは不可能でした。

こういった理由があり特に昔は
(ある程度の基準はあるが)
「実際に一度見てみないと、見積もりを出せません」
だったのです。

その後、インターネットが普及し
白蟻業者の中にも、ホームページを作る業者も出始めますが
「見てみないとわからないので、見積もりは出せません」は業界の常識であり
ホームページ上でも「価格は見てからお伝えします。」と記載されたのです。

このように、平成初期などに作成された
見た目が古い(?)ホームページで更新が止まっている業者は、
この価格ページを、追加・更新することが出来ないだけなのかと私は思っています。
(もしくは、価格のみで他社と比較されるリスクがあるため載せることに抵抗があるのか)

しかし、個人的にはインターネットがこれだけ普及し
情報の民主化の時代でもある今
他社と比べられるのは当たり前のことであり
それを伏せている(載せていない)ことは、それはそれでリスクなのかと考えています。

白蟻駆除から予防の時代へ

平成に入ると、「予防」という概念が生まれます。

そして、阪神淡路大震災時に、白蟻被害を受けた家の多くが倒壊したこともあり
さらに、この予防という概念が広く浸透することになります。

また、建築基準法にシロアリ対策の必要性が明記されたこともあり
ある意味では、ハウスメーカーなどが白蟻予防を普及させたとも言えます。

「家全体を予防する」ということに加えて
駆除においても、発生していない箇所への予防を行うことが一般化します。

加えて、
しろあり対策協会による模範となる白蟻対策工事方法(および防除士能力)の向上や
薬剤メーカーによる薬剤の安全性・性能の向上、
なにより、職人技という技術力に頼る工事ではなくなったということもあり
単純に「大きさ(=有効な処理が可能な1階の床面積)」による価格決めが出来る工事となっていきます。

結果、現在では駆除や予防工事の価格は、
「㎡単価」「坪単価」で計算することが当たり前となっています。

白蟻業者のジレンマ

このころから、家の新築時においても
白蟻予防処理をすることが当たり前になってきたこともあり
業界(の売り上げ比率の大きさ)は、駆除から予防へとシフトしていきます。

同時に、白蟻業者自体もエンドユーザー(顧客)を集客するのではなく
ハウスメーカーや工務店、リフォーム会社、ホームセンター、薬剤メーカーなどの
元請け業者から仕事をもらう下請け(指定業者)として売上が大部分を占めるようになります。

例えば、
家を建てるハウスメーカーの依頼により
白蟻の被害が発生しないように
新築時に予防を処理(ここで1度目の売上が発生)を行い
築5年目・10年目・15年目・・・と継続して再処理(ここでリピート売上が発生)を行う

であったり
リフォーム時に白蟻が被害があったので、駆除工事をリフォーム業者から依頼される

と言った構造です。

この元請け(ハウスメーカーなど)の取引が多い会社は
白蟻業者自身が一般顧客を集客する苦労をする必要はありません。

ハウスメーカーという集客力と信用があるため
言い方を悪くすると、ハウスメーカーから餌(売上)をもらえるからです。
こうして、必要なことは「ハウスメーカーとの良好な関係」となっていきました。

そして、ここで考えてほしいことが
ハウスメーカー(の指定白蟻工事店)から
エンドユーザーでもあるお客様へ出される見積もりです。

当たり前ですが、下記の①②が合算されたものとなります。

①実際の工事にかかる薬剤や移動費など原価と白蟻業者の利益

②ハウスメーカー(元請け)の利益

この②があるため、自社で集客しようと白蟻業者が
①の金額を素直にホームページ上で載せてしまうと弊害が出てきてしまいます。

もし、①の金額を載せてしまうと
床下点検時に「指定工事店」としてきた業者(の車や名刺)をネットで調べたお客様が
ホームページ上では①の金額を見るわけですから
①+②の合計金額を提示されたお客様は、ハウスメーカーの分が上乗せされた金額を出した業者(ハウスメーカーと指定業者)へ不信感を抱きます。

たとえば、
業者のホームページを見て計自分で算すると
「14万円(単価7,000円×20坪)」
で済むはずなのに
(同じ業者の同じ工事にも関わらず)
ハウスメーカーを通して頼むと見積もりには
「17万円(単価9,000円×20坪)」と書いてあるなどです。

※この場合は、3万円分がマージンとしてハウスメーカー分として上乗せ

場合によっては、このお客様が
後日、ハウスメーカーを通さない工事を同じ業者に申込むかもしれません。

白蟻業者からすると、1つの工事として考えると嬉しくとも
そのお客様と直接取引をしてしまうことで
大事な元請けの信頼を今後失うかもしれません。

そのため、このようなリスクが生まれないように
ホームページ上では、価格を伏せている(表示していない)ことが多いというのが現状です。

本来、集客をするための元請けなどの取引先が
逆に仇となり
価格表示が出来ない状態に陥っているのです。

最後に

もちろん、気にせず載せている業者もありますし

この状態を回避するため、

・複数のプランを用意して、1ランク上のものだと伝える
「○○工務店のお客様には、実は最上級プランにも関わらず一般プランに近い価格で特別にご提示しているんです」

・元請けの利益も最初から、自社の利益(①)に内包しておき、
ホームページと元請けの見積もりの価格を同じにしておく
(本来は坪7000円で可能だが、8500円としてホームぺージに載せておく)

・自社名を伏せてネット上などで新しいサイトで集客する
「○○ドットコム」的な集客サイトを立ち上げるなど

などの対策をしている業者もあります。

しかし、このような手段をとっていても
通常価格から割引くキャンペーンなど
自社のキャンペーンとして集客を行おうと思っても、
元請けから反発が来る可能性は否めません。
特に取引先が多い会社になればなるほど、自社集客のジレンマに陥ります。

このように、自力で集客を行うというマインドが失われると、
会社として最も大事な「自分たちの集客力」は徐々に低下していきます。
社内にそのような貴重な人材がいない(育たない)からです。

人口減少・着工棟数の減少、
元請けの業績悪化や関係悪化で衰退していく可能性があるなかで
自分たちではどうにもならないところにリスクを抱えてしまうというのは、
とても怖いことだと考えいています。

私たちが、業者(元請け)との取引をお断りしているのは
この点も加味しているのは事実です。
逆に数年後、自力で飛ぶことが出来ない鳥になるような気がしているからです。

集客で苦労はしても、
その苦労は成長の糧になるわけですので
思う存分、自由に集客を楽しんでいこうと考えています。

ではでは。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?