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惑わし神に気をつけろ

※過去にmixiで書いたものに若干の加筆をしたものになります

ワタクシのnoteを御覧の方で、幽霊や妖怪の存在を信じる方はいらっしゃるだろうか。

ワタクシは妖怪の実在を信じて疑わない人間なのだが、運が悪いのか霊感が悪いのか、決定的な「妖怪との出会い」は未だ皆無に等しい。
そんなワタクシが唯一、それも結構な頻度で遭遇している妖怪(?)のお話を今日は記したい。

その妖怪を「惑わし神」(まどわしがみ)と言う。

どんな妖怪かと言うと…。
先ず、この妖怪は決まった姿を持たない不可視の存在…もっと言えば所謂「憑きもの」に近い妖怪である。
どんな悪さをするかと言うと…帰路を急ぐ人間に取り憑き、道に迷わせてしまうと言う悪さを働く。これに取り憑かれると同じ道をぐるぐると何度も廻らされたり、今まで踏み込んだ事も無い未知の区域に迷い込まされたりする。

只の方向音痴じゃないか、とお思いの向きもあろうが、然に非ず。
この「惑わし神」は、出歩くのに用心に次ぐ用心が必要な“初めて降り立つ地”では絶対に現れず、いつも通い慣れた道をいつも通り歩いている時にのみ現れて悪さを働く。出現する時は大抵、取り憑かれる人が「早く帰宅する必要がある」「時間が差し迫っている」等で急いでいる時が多く、余裕を持って行動している人間には決して憑依しない。
更に出現する時間帯は夕刻から夜にかけてと、所謂「逢魔時」の数時間に限られる。
付け加えてワタクシの経験から語らせて貰うと、「惑わし神」が出現する場所は街だろうと山だろうと海だろうと、兎に角近辺に霊的に危険なスポットがあったり、或いは神社や寺があったりする事が多い。
過去、かなりの回数で「惑わし神」に遭遇し、道に迷って酷い目に遭っているワタクシだが、ハッキリと「惑わし神」に遭遇したと知覚出来る経験の内、寺社や霊的スポットの近くで遭遇したと思い当たるケースは全体の8割になる(ワタクシの場合、最も遭遇例が多かったのは本八幡の駅近くにある“藪不知”と呼ばれる平将門公所縁の霊地で、序で近所の寺社からの帰路で遭遇する事が多かった)。

取り憑かれたな、と判断できるポイントは、いつも通りの道を歩いているのに関わらず途中でアタマがぼんやりして夢見心地になり、ふと我に帰ると見当違いの場所に立っている…こんなところだろうか。しかも、「惑わし神」に惑わされた事でその存在を覚えた場所は、後になって自力で行って見ようと試みてもなかなか辿り着けない場所だったりする。

これに遭遇したら対処法はひとつしかない。
丹田に力を込めて精神を落ち着け、煙草の一服でも喫して気持ちを鎮める事である(コーヒーでも良い)。
迷わされた事に気がついて慌てて軌道修正しようとすると却って深みに嵌り、下手すると片道30分程度の場所を数時間かけてやっと帰宅なんて事もある。
どうやら「惑わし神」は急き立てられるココロの隙間を狙ってやって来る妖怪らしい。

今はコンビニなどが増え、見知らぬ場所で迷っても命に関わるケースは少なくなったが、昔のようにモノの少ない時代、何も無い場所でコレに遭遇したらそれこそ命に関わる事もあっただろう。逆に言うと、人間の文明が多くの迷信を滅ぼしてしまった現代において尚、隠然とその存在を誇示する「惑わし神」は妖怪としても非常に稀少な存在なのでは無かろうか。

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