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【蝦夷幽世問わず語り】シシャモ

シシャモはキュウリウオ科に属する日本固有の回遊魚で、北海道の限られた水域でしか確認されていない珍しい魚でもある。名前はアイヌ語の【ススハム】(スス→ヤナギ、ハム→葉)に由来し、シシャモ誕生の謂れとヤナギは切っても切れない関係にある。

〈容姿〉
全長20センチ以下の柳葉型の魚。雄は雌より体色が濃い。

〈性質〉
独立したカムイとしての伝承が無いので割愛する。

〈備考〉
シシャモ誕生の謂れには様々な神話があるが、共通するのは【天のカムイの国にシュシュランペッと言う川があり、その河畔に生えていたヤナギが葉を落とした為、位の高いカムイがそれを魚に変えた】とする一節である。シュシュランペッとは口語訳すると【ヤナギが繁茂する川】の意を持つ。
鵡川では地上が飢饉になり人々が困窮したのを見かけたカンナカムイ(龍神)の妹が、危急を報せる掛け声をあげたのでカムイ達が相談の上、ヤナギの葉に魂を与え魚と成して人々を飢えから救ったと言う説話があり、嘗てシシャモが遡った川に多少の差異はあるものの類話が伝わる。他方、地域によってはシュシュランペッの近辺に住むパウチ(過去記事参照の事)が天界で毟り取って撒き散らしたヤナギの葉がシシャモになるとする伝承もあり、そうした地域ではシシャモを来客に振る舞う際には特別な魔除けの作法が存在していた。

参考資料
きたぐにの動物たち(本多勝一著、集英社)
アイヌ文学の生活史(更科源蔵著、NHKブックス)

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