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【蝦夷幽世問わず語り】ニッネカムイ

石狩川流域を中心に各地で伝えられている、本州以南の鬼に相当する邪悪なカムイ。名は【硬いカムイ】を意味する。怪力を持ち、妖術も使いこなし、数多の英雄神を苦戦足らしめた、アイヌ伝承の妖怪の中でも屈指の強者。

〈容姿〉
大きな山の崖崩れのように醜い顔、ヒトひとりが悠々と潜れそうな洞窟を思わしむる大きな鼻の穴、家や穀物倉を立てるのに用いる太い立ち木のような逞しい腕を持つ大柄で屈強な大男と言った姿をしている。クジラを小脇に抱えてすたすた歩ける程の怪力の持ち主。
悪しき存在ではあるがカムイと名がつくだけあり、カムイしか持ち得ないような様々な宝物を所有していると言う伝承もある。

〈性質〉
甚だしく邪悪であり、ヒトを困らせたり滅ぼす事を目論んだりとありと汎ゆる手立てでヒトを苦しめる。時にはヒトを攫って喰う事もある。
石狩川の近辺を根城にしていたニッネカムイはあろう事か石狩川に堰を作って川の流れを変え、近隣のコタンを水没させた上で領土を奪おうと画策した。この企ては英雄神サマイェクルカムイにより阻止され、最終的にニッネカムイは斬首され、岩に変えられた。

〈備考〉
石狩川のニッネカムイとサマイェクルカムイの闘争は、一説には部族の族長同士の闘いを物語風に伝えた結果誕生したとも言われる。ニッネカムイが変えられた岩は近年まで残されていたが、護岸工事等の影響で今は現存していない。

参考資料
炎の馬(萱野茂著、すずさわ書店)
日本の民話 第一巻・北海道(研修出版株式会社)

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