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山の道化に御用心

たまたまInstagramにて、海外の思弁進化クラスタの方の投稿を見ていたら、人間並みの知能を身に着けたオウムが支配する未来の地球を描いた作品に会った。それを見て思い出した事がある。以下、嘗てmixiにて記した文章に加筆を施してお届けする。

ミヤマオウムと言う鳥が居る。
オウム目フクロウオウム科に属するニュージーランドの固有種である。英名ケア(Kea)は特徴的な甲高い鳴き声に由来すると言う。【山の道化】と言う異名もあるそうだ。
外観についてはヘッダー画像を参照されたし。

日本では飼育例が極めて少ない鳥である。

このミヤマオウム、数あるオウムの中でも動物質の餌を積極的に摂取する珍しい部類(オウムの仲間は大半が種子食に特化したベジタリアン)であり、また酷く悪戯好きな鳥として知られる。カラス並みに知能が高く、しかもオウム類の特性としてカラスよりも足の指と嘴が器用と来ている。

彼等の【悪行】(?)の例を以下に記す。

☆畑を荒らす
☆ゴミ箱の蓋をこじ開けて中身を穿り返す
☆機械類のボルトを嘴で器用に外してしまう
☆自転車やバイクのタイヤを噛み裂いてパンクさせる
☆雪に埋もれて身動きが取れないヒツジを集団で突つき殺して肉を貪る(【Kea】でYouTubeで検索すると実際にその模様の映像が見れたりする。但しグロ注意)
☆崖に穴を掘って巣を作る海鳥の雛を襲う(曲がった嘴をピッケルのように用いて穴を掘り広げ、中の雛を引き摺り出すと今度はその嘴がそのまま首刈り鎌に変わり、獲物が絶命するとそのまま嘴が包丁になる、と言った按配)

更に、ミヤマオウムはそこそこ繁殖力が強い…らしい。
ミヤマオウムは、一夫一妻制が多く産卵数が少ないオウム目には珍しく一夫多妻制の繁殖形態を持ち、1羽のオスが複数のメスとつがいになる為、それだけ産卵数が増えるのだとか。メスの個体数もそんな繁殖形態に合わせるかのようにオスより多い傾向があると聞く。
最も、ニュージーランドに人間が入植後、一度だけ絶滅が心配される程個体数が減少した事があるそうだ。前述の通りヒツジを襲う事がある為に牧羊業者の目の敵にされ駆除の対象になったからだ。
然し、その後の保護(保護法が制定されたのは1980年代と比較的最近)により再び個体数が回復したとの事、矢張り只者ではない。
現在のミヤマオウムの個体数については諸説あるが、推定で7000〜15000羽とする統計がある(4000羽とする見積もりもある)。ミヤマオウムは群れを為さず、広大な土地に分散して暮らす為に個体数の把握に困難を伴う…とは英語版Wikipediaの記述である。
現在は保護対象となり駆除が困難な為、人間側がミヤマオウムに悪戯されないよう棲息地では細心の注意を払っているとの事。また牧羊業者は自分が保持するヒツジがミヤマオウムの餌食にならないように【ヒツジを病気に罹らせたり雪の中に置き去りにしないよう注意深く管理する】事を心掛けていると言う。

更にミヤマオウムには困った悪癖がある。
食べる訳でも無いのにヒトが持ち歩くものを種類の如何を問わず掻っ攫ってしまうのだ。
以前、海外からの観光客がパスポートをミヤマオウムに奪われ、帰国に著しい支障を来したと言うニュースが話題になった事があった。恐らくこのパスポートはミヤマオウムによってビリビリに引き裂かれてしまったに違いない。御愁傷様としか言えない。
最近ではスマホを掻っ攫われた例を良く聞く。
スマホで動画を撮影中にミヤマオウムにスマホを掻っ攫われ、運良くそのスマホを取り返せた人がInstagramのリール動画にて一部始終を公開されていたのを見る機会があった。ミヤマオウムと共に空を征くスマホが録画した(それこそミヤマオウム視点の)光景は非常に貴重な映像と言えそうだが、スマホを掻っ攫われた人にとってはとんだ災難であった。

アルフレッド・ヒチコックの映画【鳥】はカモメやカラスが集団でヒトを襲撃する恐怖を描いたモダン・ホラーの傑作だが、もしこの【鳥】の劇中に登場する鳥がミヤマオウムの大群だったら、恐らく事態はより悲惨な内容になっていただろう。

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