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動物園行脚の日々

以前にもカムアウトした事があるのだが、ワタクシは多趣味な人間で、インドアな趣味(クラフト製作、テキスト執筆)の他にもアウトドアな趣味として寺社巡りや動物園巡りを含めたウォーキングを嗜んでいた。

人間は、その一生の内に最低4回は動物園に行く機会がある、と言われる。
幼い頃に親に連れられて1回、若い頃に恋人とのデートに1回、結婚し家族で1回、そして孫を連れて1回。

ワタクシはアセクシュアル故に結婚もしておらず子も孫も居ないが、この【人生で最低4回は動物園に行く】と言う統計を軽くブッ千切る位頻繁に動物園に足を運んでいる。数えた事は無いが、多分100や200では利かないだろう。

高校卒業以前の北海道函館市在住時は、函館市郊外にある【函館公園】のミニ動物園がほぼ唯一の目的地だった。無料で開放されていたこのミニ動物園、当時はヒグマやライオン、アザラシが飼育されていて、檻が前時代的で間近で動物が見られるのを良い事に、ワタクシはそれこそ穴の開く勢いで動物を眺めていたものである。ライオンに吠えかかられたり、ヤギにどつかれたり、檻越しにハクチョウに指を噛まれたり…と言う"事故"は一度や二度では無かった筈だ。

ワタクシが函館市に住んでいた頃、今の北斗市にある大沼国定公園の傍に【スバルパーク】と言う私設の大きな動物園があった。当然ながらワタクシはこの動物園への来訪を強く希望したが、家族からは大反対された。遠方にある事、入場料が割高だった事もあったのだろうが、一番の理由は家族が【動物園如きにリソースを割きたくない】と思って居た事では無いかと思う。
後に社会に出て里帰りした折、ワタクシの頼みを聞き入れた旧友がクルマを出して連れて行ってくれたが、開園当時の賑やかさは既に失せていた。そしてワタクシがスバルパークを訪れてから数年後、スバルパークは経営不振から閉鎖され、飼育されていた動物は日本各地の動物園に引き取られて行った。

ワタクシの記憶が確かならば、スバルパークは日本で2番目にアフリカ産の珍しいウシ科動物"ボンゴ"を導入した動物園では無かったかと思う。開園当初はエリマキトカゲ等の珍しい爬虫類も飼育していたようだ。
然し、ワタクシが旧友の助力を得てスバルパークに出向いた時は既にボンゴもエリマキトカゲも死んでしまっており、剥製にされて展示されていた。開園当初に出向いていたら…と思うと未だに悔しさが込み上げる。

ボンゴ。(ウィキメディア・コモンズより借用)
鯨偶蹄目ウシ科の珍獣。
アフリカ(リベリア、ケニア)に棲む。
現在、日本の動物園では飼育されていない

北海道には大きな動物園は僅かに4つしか無い。円山動物園(札幌市)、釧路市動物園(釧路市)、おびひろ動物園(帯広市)、そして近年人気急上昇中の旭山動物園(旭川市)の4つである。この内円山動物園は札幌に父方の祖母が住まって居た関係で幾度か足を運ぶ機会があった。だが残りの3園については未だに足を運ぶ機会が無いままだ。恐らく今後も機会は訪れないのだろう。

少年だったワタクシは何度函館市と言う町を憎んだか知れない。函館公園のミニ動物園は円山動物園と比べてさえ貧相で、ワタクシには物足りなかったのだ。函館市は観光が主な産業である。恐らくリソースの大半はそちらに向けられて居たのだろう。そんな函館市には、他の市のように大きな動物園を切り盛りするだけのゆとりが無かったのだろうな…と、今は思う。

高校を卒業して北海道を離れてからは、それこそ行ける動物園には可能な限り出向いた。
以下に軽く列挙する。(一部、水族館も含む)

●大宮公園動物園(埼玉県大宮市)
●東武動物公園(埼玉県南埼玉郡)
●日本平動物園(静岡県静岡市)
●楽寿園(静岡県三島市)
●伊豆シャボテン公園(静岡県伊東市)
●アニマルキングダム(静岡県賀茂郡東伊豆町)
●熱川バナナワニ園(静岡県賀茂郡東伊豆町)
●掛川花鳥園(静岡県掛川市)
●浜松市動物園(静岡県浜松市)
●のんほいパーク(愛知県豊橋市)
●東山動植物園(愛知県名古屋市)
●多摩動物公園(東京都日野市)
●井の頭恩賜公園(東京都武蔵野市)
●羽村市動物公園(東京都羽村市)
●葛西臨海公園水族館(東京都江戸川区)
●行船公園(東京都江戸川区)
●サンシャイン水族館(東京都豊島区)
●市川市動植物園(千葉県市川市)
●千葉市動物公園(千葉県千葉市)
●鴨川シーワールド(千葉県鴨川市)
●野毛山動物園(神奈川県横浜市)
●ズーラシア(神奈川県横浜市)
●夢見ヶ崎動物公園(神奈川県川崎市)

そして…中でも一番良く通っていたのが、東京都台東区にある恩賜上野動物園だ。それこそ年間パスを購入し、一時期は週末毎に開園から閉園まで居座る勢いで足繁く通っていた。

然し、新型コロナ禍以来(もしかしたらそれより前)ワタクシの動物園行脚の旅はふっつりと途切れる事となる。

理由は色々あるのだが、主な理由は健康上の問題(松葉杖無しでは歩く事も叶わず、屋外での長時間の行動が困難な事)と、マナーを守れない横暴な観客が多くなり不快な思いをする事が増えた為である。

特に後者は深刻だった。
外国人観光客に写真撮影を妨害されたり、親の腕に抱かれ駄々を捏ねる悪童に思い切り蹴り飛ばされたり、長蛇の列に割り込みをされたり。

この頃はInstagramでもそうしたユーザーを少なからず見かける。動物への愛が歪んだがばかりにクレーマーと化した自称動物好き、撮影の場所取りに勝利した事を写真と共に誇らしげに投稿する自称フォトグラファー、そしてそうした人間に噛みつくチンピラ。
どれだけInstagramでそうしたユーザーをブロックしたか、ワタクシはもう覚えていない。
ワタクシのように感受性が高い人間には、動物への愛が歪んで常軌を逸した輩や、マナーを守らない似非フォトグラファーや、そうした人間を貶め嘲る輩の言動は、目にするだけで猛毒として作用するのである。

近頃はYouTubeに存在する、日本各地にある動物園の公式チャンネルで投稿される映像だけが、密かな楽しみだ。
そしてそれらの映像を観ながら、ワタクシは純粋に動物園行脚を楽しんで居た昔日を思い出しては黄昏れるのである。

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