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【蝦夷幽世問わず語り】鴉

北海道では、鴉(カラス)は3種類が確認されている。良く見られるのはハシボソガラス(アイヌ語ではカララク)とハシブトガラス(アイヌ語ではパシクル)の2種類。稀に大陸から大型のワタリガラス(アイヌ語ではオンネパシクル≒年老いたハシブトガラスと呼ばれる)が飛来する。アイヌ伝承では、ハシボソガラスは善なる存在とされる一方で、何故かハシブトガラスはヒトに悪戯をする悪神の側面が強調される事が多い。

〈容姿〉
鴉そのもの。

〈性質〉
ハシボソガラスはウウェペケレ(昔ばなし)では常にヒトを助ける善なるカムイとして描かれるが、対してハシブトガラスはヒトの子を誘拐して我が子として養育したり、宴席を滅茶苦茶にして殺される等常に悪戯好きな存在として描かれる。ワタリガラスに至っては樺太アイヌの伝承ではっきり妖怪視されており、ペンタチコロオヤシ(松明を掲げる化け物、の意。オヤシはアイヌ語で化け物全般を指す)と呼ばれる妖怪の伝承が残されている。

〈備考〉
以下はペンタチコロオヤシについて解説する。
昔、夜になると松明を翳して彷徨く怪しい者が出没し、夜道を急ぐ者に諸々の災いを為した。雪道で出会った時など、掲げた松明の明かりが雪に反射して昼間のように明るくなったと言う。
トユクと言うコタンの村長がこの怪しい者と出くわし、咄嗟に隠し持っていた刀で怪しい者を刺した。怪しい者は不意討ちを喰らいその場で死んだが、村長も同時に気を失った。翌日に改めて現場を確かめると、大きなワタリガラスが死んでいた。

参考資料
全国妖怪事典(千葉幹夫著、小学館)
アイヌと神々の物語(萱野茂著、ヤマケイ文庫)

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